【もういちど読む山川倫理】
小寺 聡 (編さん)
https://www.amazon.co.jp/dp/4634590719/
○この本を一言で表すと?
世界のいろいろな「倫理」に関することを集めたダイジェスト本
○この本を読んでよかった点
・倫理や哲学に関することをすべて網羅しているわけではないと思いますが、主要なところは網羅されているようで、自分の知らなかった考え方をいろいろ知ることができて良かったです。
・今までに読んできた本がそのまま載っているケースはそれほどなかったですが、読んだ本の中でも内容に触れていたことがいろいろでてきてその繋がりが面白いなと思いました。(サンデルの「これから正義の話をしよう」で書かれていたカントやロールズ、ショウペンハウエルの「読書について」でしょっちゅう批判されていたヘーゲルなど)
・有名だけど自分のなかでは曖昧だった「ソクラテス⇒プラトン⇒アリストテレス」の流れがスッキリしたように思います。(P.22~37)
・「ストイック」の語源のストア派が何かをなんとなく理解できたような気がします。(P.38,39)
・孟子が「性善説」、荀子が「性悪説」を唱えているせいか全く逆の方向だと誤解されることのある二人が実は同じ流れを汲んでいることが整理されていてよかったなと思います。(P.45~49)
・仏教の流れがよく整理されていて分かりやすいなと思いました。(P.72~81)
・ルターもカルヴァンと同じように職業について神から与えられたものと伝えていたのは初めて知りました。(カルヴァン派の特徴だと思っていました。)(P.89)
・よく聞くけれどもあまり理解していない「弁証法」について分かりやすく書かれていました。
「正⇒反⇒合」のプロセスは「7つの習慣」のコヴィー氏の言う第3案の考え方に近いなと思いました。(コヴィー氏が参考にしたのかもしれませんが)(P.121~124)
・16歳で亡くなったアンネ=フランクの考え方や信念はすごいなと思いました。(P.165,166)
・聖徳太子の十七条憲法で「和をもって貴しとなす」はよく聞きますが、「ともに凡夫のみ」やその不完全性ゆえに対話しろという意味などは初めて知りました。(P.193,194)
・鎌倉六仏教がそれぞれ詳しく説明されていてよかったです。(P.199~207)
・いろいろな本で出てくる荻生徂徠の実績の概要を知れたのは良かったなと思いました。
赤穂浪士を罰し、親不孝者を許す、その基準としての為政者の考え方は良い悪いはともかくなるほどと思いました。(P.215~217)
・司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」で出てきた正岡子規の知り合いの徳富蘇峰や親戚の陸羯南の話が出てきて面白いなと思いました。(P.233)
・南方熊楠が環境保護活動をしていたとは初めて知りました。
この人物は、海外でサーカス団に入って金を稼いだりしたかなり破天荒な人物だったそうです。(P.249)
・「きけわだつみのこえ」の死を前にした若者の人間愛の考え方はすごいなと思いました。(P.253)
・科学技術と生命倫理の関係は難しい話だと思いました。
高校でこの授業をしたときにどういった内容を話すのか、高校生同士がどのように考え、発言するのか聞いてみたいなと思いました。(P.257~263)
○つっこみどころ、その他考えたこと
・デカルトについて、「方法序説」で「動物は精神を持たず考える事も苦痛を感じる事もないため、動物に対してどんなにひどい扱いをしようが間違いであることはあり得ない」と主張して実際に数万体は殺したという話も聞いたことがありますが、そういった倫理や哲学を述べた人の負の側面(またはそうとらえられそうな側面)には触れないところが教科書的だなと思いました。
・P.67のアウグスティヌスの眼力がすごいなと思いました。
○わからなかったこと
・実存主義がいまいちどういうことなのか掴みづらかったです。(P.146~159)