
【飛ぶ教室】
ケストナー (著), 丘沢 静也 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334751059/
○この本を一言で表すと?
戦前ドイツのギムナジウムの少年たちの青春群像劇の本
○よかったところ、気になったところ
・時代も場所も異なりますが、自分の田舎での少年時代を思い起こさせるなと思える本でした。この本を読んでいるうちに思い出したことも結構ありました。
・出版年が1933年だったので、この時代のドイツだとナチスの影響などが入っているのかなと思いましたが、そういった傾向がなかったのが意外でした。
訳者の解説や年譜でナチスに反抗しつつドイツから逃げなかった著者だったというのも興味深かったです。
・著者自身がまえがきとあとがきに登場して物語の出だしと終わりを語り、本文中でも括弧書きで注釈を入れる形式は面白いなと思いました。
・まえがき その2の、子ども向けの本に対する批判の話はなるほどなと思いました。
子ども向けの本だからといって陽気で幸せいっぱいの一辺倒の内容はおかしいということ、子ども時代でもつらいことはあるということ、打たれ強くなり勇気と賢さを身につけるべきであることは同意できるなと思いました。
・ギムナジウムに10歳で入学して5年生ということは、主人公たちは14~15歳でしょうか。
それにしては幼いように思えたりしましたし、それくらいの年頃かなとも思えました。
・全体として、女性の登場人物がほとんどいなかったなと思いました。
ギムナジウムの少年たちから見た世界はこんなものかなとも思えましたが。
・禁煙さんや正義さんのような子ども時代の思い出を大切にしながら大人になった人の器の大きさが印象的でした。
年譜で正義さんの子ども時代の脱走が著者の子ども時代の実際の行動と重ねていたことがわかりましたが、こういったことはいつまでも記憶に残るのだろうなと思いました。
・日本では教育勅語が出るまでは少年犯罪がかなり多く、教育勅語以降ましになった、みたいな話を聞いたことがありますが、今回の課題本の舞台のように子供を集めて教育する近代教育だと少年同士の暴力はありがちなのかなと思いました。
・実業学校の生徒との抗争、ウーリへのいじめやウーリの飛び降り事件など、時代は異なっても同じようなことがあるものだなと感慨深かったです。
○つっこみどころ
・子ども向けの本でタイトルが「飛ぶ教室」なので、SF的な内容なのかなと思っていましたが、劇中劇の内容で本筋にはそれほど関わってこなくて驚きました。
ドイツ語の原題もそのままのようなので、ミスリード狙いだったのでしょうか。
・訳者あとがきで、「わかりやすさ」に必要以上に配慮しないノン・ビブラートで翻訳したと書かれていました。
確かに読みにくさはあまり感じませんでしたし、それで概ね良かったのだろうと思いますが、過激な描写がさらっとひらがなの多い文章に紛れ込んでいて、気のせいかなと思って読み返すくらいに目立たなくなっていたりしました。
第1章の「そのとき突然、ものすごいなぐり合いがはじまった。」など。
・交通費が他の費用に比べて高いことなど、現代感覚でわかりにくいところなどは注釈があってもよかったのではと思いました。
