【ゼミナール マーケティング入門】
石井 淳蔵 (著), 嶋口 充輝 (著), 余田 拓郎 (著), 栗木 契 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/453213272X/
第8章<競争構造の理解>
○競争の場の枠組み
産業をとらえる重層的な視点(P.239)
一般的な消費 > 需要の同一性 > 技術の共通性 > 事業構造の類似性
○競争が規定する産業の収益性
競争を規定する構造要因
①競争者の数と規模の分布:完全競争との距離、規模の経済性
②新規参入の容易さ:売り手・買い手・補完財・代替財からの参入、参入障壁(初期投資の大きさ、特許や独自の技術、流通チャネルの閉鎖性、政府の規制)
③差別化の程度:明確に他社との差別化を築ける業界か(ドメインの定義等により)
○戦略グループ
事業構造の類似性に基づく区分
垂直統合の程度(事業の深さ)、製品ラインの広がり(事業の広がり)で定義
○業績の違いを生み出す移動障壁
戦略グループから別のグループに移動する際の障壁
⇒ある企業だけ高い収益を上げる理由、異なる戦略を採用できる理由となる
垂直統合のもたらす強み・弱み、製品ラインの拡大がもたらす強み・弱みはそれぞれトレードオフの関係にある。(P.264)
<演習問題>
1. 興味のある産業を取り上げ、さまざまな製品やサービスがどのような要因によって差別化されているかを検討しなさい。
⇒
薬局業界:
・チェーン店で大量購買により安価な商品(日用品、OTC薬品)を提供する。(大手ドラッグストア)
・病院の近くに店舗を設置し、処方箋をメインとした商品構成をとる。
・小規模店舗(品揃え少)で接客メインの商売をする
2.いくつかの産業を取り上げ、競争を規定する3つの構造要因の状態を調べて比較しなさい。
⇒
飲料業界:大手数社による寡占市場。ヒット商品出現の確率が低く研究開発コストが大きいため、新規参入は困難。ブランドイメージによるある程度の差別化は可能だが、商品自体での差別化は困難。
ラーメン業界:競合は非常に多い。大きい規模の企業もあるが、マーケティングマスをしめているとはいえない。味・ボリューム・値段等で差別化。差別化の結果は認識されやすいが、効果と連動するとは限らない。
出版業界:大手、中堅が棲み分けている。競争関係があまりない業界。大手、中堅への新規参入は困難だが、今後電子書籍等の技術が競合になる可能性有り。差別化は出版社のカラーだが、それほど効果はない。
3.具体的な産業を一つ取り上げ、戦略グループによってマーケティング・ミックスにどのような違いが見られるかを検討しなさい。
⇒
○一般小売業
百貨店:高級品を広範囲で品揃え。販売でなく売り場を提供する形態。マス広告中心
専門店:高級品~大衆品の中で一定範囲を品揃え。大衆品ではカテゴリーキラー。
スーパー:安く大量がベース(一部例外)。広告はチラシ等の地域戦略
コンビニ:安売りしない狭い範囲の品揃え。店舗設置間隔が狭い。マス広告中心。
個人店:地元密着型。配達等のサービスで生き延びるケース有り
4.「フィルム写真→デジタル写真」「ビデオテープ→DVD」「回線電話→携帯電話」といった技術シフトは、産業の構造要因、産業内の戦略グループにどのような影響を及ぼすかを検討しなさい。
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「フィルム写真→デジタル写真」:写真を撮る技術が根本的に異なるため、フィルム写真において優位を築いていた企業の優位性はそれほどなく、参入障壁が下がる。差別化の源泉も異なる。
「ビデオテープ→DVD」:新たにCD事業を営んでいた企業が競合となる。再生可能な機器が専用のプレイヤー以外でも再生可能となり、代替産業との競争も発生する。
「回線電話→携帯電話」:ほぼ一社独占業務だった業界から、他企業の参入可能性が上がる。端末の製造はこれまでと根本が異なり、コンテンツ等の新たな競争要因が増える。