• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【採用基準】レポート

【採用基準】
伊賀 泰代 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478023417/

○この本をひと言でまとめると

 マッキンゼー採用担当の皮肉の利いたリーダーシップ論

○考えた点、興味深かった点

・コンサルティングに必要なスキルは「問題を発見する」だけでなく「相談を受ける」「問題を解決する」も必要という意見は同意できます(そして実際のコンサルタントにそれを理解していない人が多いことも)。
思考力が「思考スキル」だけでなく「思考意欲」「思考体力」を含んだ力というのは新鮮に思えて興味深かったです。(第1章)

・ポジション上のリーダーだけでなくチームのメンバー全員に「リーダーシップ」が必要ということ(第2章)、リーダーがなすべき四つのタスク「目標を掲げる」「先頭を走る」「決める」「伝える」(第4章)、マッキンゼーの基本思想「バリューを出す」「ポジションをとる」「自分の仕事のリーダーは自分」「ホワイトボードの前に立つ」(第5章)など、リーダー像がはっきりと打ち出されていて分かりやすく、興味深かったです。
以前の会社で中途半端にこういったことをかじっていた上司がいて、背後にある考え方を理解せずに実践しようとして部下全員に迷惑がられていましたのを思い出しました。
理解し、自分のなかで咀嚼した上でないとできないことなのだろうと思います。

・「グローバル人材」と「グローバルリーダー」を切り分けて考えているのは面白い考え方だなと思いました。
またカリスマリーダーの質ではなくリーダーシップ・キャパシティ(リーダーシップを持つ人の数)が重要というのもなかなか興味深かったです。(第6章)

○つっこみどころ

・著者は「誰に向けて」この本を書いたのかなと思いました。
読み手が誰かを意識している感覚がないように思え、敢えて言うなら著者と同等以上の高学歴の人向けに書いているように思えました。

・リーダーシップにもいろいろなリーダーシップがあり、「SL理論」のように状況に応じて求められるリーダーシップは異なると思いますが、著者の論じるリーダーシップもあくまで数あるリーダーシップの中の一つに過ぎないように思えました。他の本で「主体性」と呼ばれるものを「リーダーシップ」と言っていて少し分かりづらくもありました。
第3章で比喩として「救命ボートの漕ぎ手」を挙げていますが、極端で的外れな印象を受けました。
同じように第7章の中央集権型意思決定システムと分散型意思決定システムで後者がよいものだと決めつけていますが、これも状況によるだろうと思います。

・著者は5年間コンサルタントとして勤務し、その後12年はマッキンゼーの採用担当だったそうですが、外向けの仕事が5年で「コンサルティング業界以外の知識や経験はあまりないのかな?」と思えるような偏りのある内容でした。
著者が否定して書いている京大を卒業し、マッキンゼーとは別のコンサルティング会社に就職した牧田幸裕氏の「得点力を鍛える」「フレームワークを使いこなすための50問」は様々な業界を見てきたコンサルタントの視野の広さが感じられましたが、この本の著者の視野の狭さが似たような経歴ながら際立っているなと思いました。

・マッキンゼーは実際にコンサルティングを受けた企業からは割と評判が悪く「山のような報告書を作って金をとるだけ」「企業の事業プロセスを理解せず机上の空論を話す」と実際に受けた企業の方から聞いたことがあります。
著者が述べているような人材ばかりならあり得なさそうですが、著者のような意識を持った採用担当がいて社内の育成プロセスが整備されていても現実にはなかなかうまくいかないということでしょうか。

・全体として、面白いと思えるところもありましたが納得できないところも多い本でした。