【新書で名著をモノにする 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』】レポート

【新書で名著をモノにする 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』】
牧野 雅彦 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334036201/

○この本を一言で表すと?

 「プロ倫」だけでなく、マックス・ウェーバーの考え方やそれにまつわることについて解説した本

○考えたこと

・「プロ倫」をわかりやすく説明するだけでなく、「プロ倫」に対する当時の解釈や批判と、現代の解釈や批判なども掲載されていてかなり多面的に解説されていました。

・「プロ倫」以外のマックス・ウェーバーの著作についても適宜関連するところは取り上げられていて全体像がつかみやすくなりました。
それでもつかめたかというと自信はないですが。

・注釈がその見開きのページ内に書かれてあったので順に読んでいけて楽でした。
また注釈がかなり詳しかったのでそれ自体読み応えがありました。

・マックス・ウェーバーの考え方に対して様々な意見があり、その妥当性の問題があり、邦訳においても翻訳者の考え方や背景によって記述が違ってくるというのは、かなり複雑な話になるなと思いました。

第一章 資本主義という問題

・アダム・スミスの「労働価値説」からマルクスの「剰余価値は労働の産物であるから資本家は労働者を搾取する」という話に繋がるというのは、分かりやすい「資本主義の問題」だなと思いました。

第二章 近代資本主義の起源

・資本主義の起源について、貨幣の蓄積と考え、それが大資本からと見たり中小資本からと見たりする視点があること、シェークスピア等の戯曲や小説に書かれる資本家の姿から資本主義の起源を類推することなど、なかなか興味深いなと思いました。
後者は金至上主義やそうではない人々がともに描かれたりしていて、複雑な存在になっていて、それがマックス・ウェーバーの考える資本主義に近いというのも興味深かったです。

第三章 「資本主義の精神」という問題

・フッガー家のヤーコブ・フッガーとベンジャミン・フランクリンが同じように金銭を追求しつつも、前者は金の亡者、後者は求道者として語られることが多いというのは面白いなと思いました。

・ベンジャミン・フランクリンの教えで勤勉・節制・正直という徳目があり、当然に自己啓発的な原則でありながら、それが金銭の追求にも繋がるというのは面白い視点だと思いました。

第四章 「資本主義の精神」と禁欲的プロテスタンティズム

・カルヴィニズムの「予定説」が労働や資本蓄積を認める考え方で、経済行為については同じ宗教改革のルター派と正反対の方向に進んだというのは面白いなと思いました。
禁欲と「資本主義精神」が問題なく一個人に並立するというのは、ただ金もうけに走るよりも資本主義世界において強固な人間になりそうだと思いました。

第五章 「資本主義の精神」と「鉄の檻」

・精神なき専門人、心情なき享楽人である「末人」が自惚れる中で、貶められ辱められている「ルサンチマン」の精神が「資本主義の精神」に繋がるというニーチェの考え方とマックス・ウェーバーの考え方を結びつけているのは面白いなと思いました。

第六章 ユダヤ教とプロテスタンティズム

・プロテスタントがカトリックからユダヤ教への回帰である、というのは旧約聖書も重視するという姿勢と矛盾がなく、そういった視点もあるのかと感心しました。

第七章 原始キリスト教と「再洗礼派」

・「再洗礼派」などのカルヴァン派以外のプロテスタントの思想の背景などが詳しく説明されていて面白かったです。

第八章 プロテスタンティズムとイギリス革命

・資本主義だけでなく、イギリス革命も同じ論理でプロテスタンティズムとしての行動原理が働いていたというのは、後者は歴史の教科書などでも当然のこととして繋げて書いていますが、資本主義がプロテスタンティズムと繋がるなら当然これらも繋がってくるなと思いました。

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