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【嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え】レポート

【嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え】
岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478025819/

○この本を一言で表すと?

 かなり尖った「インサイドアウト」を突き詰めた自己啓発の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・「7つの習慣」の「第一の習慣 主体性を発揮する」の元ネタになったのはアドラーの著作だったのだろうなと思えるほど内容が一致しているなと思いました。
掘り下げている分、より強く他者のせいにすることを否定していて、かなり徹底した内容だと思いました。

・「7つの習慣」を何度も読んで、自分なりに発展させて考えたつもりだったことがそのまま載っていることが何度もあり、驚きました。
元ネタに当たる本なので、同じ考え方から出発すると当たり前の話かもしれませんが。
ただ、自分で考えたことであっても実践していないことを強く自覚させられる良い機会になりました。

・かなり徹底した考え方なので、それだけに批判もよく出てきそうだと思いますが、その出てきそうな批判を「青年」の立場からさせてそれについて回答していくことでかなりうまい構成になっているなと思いました。
対話形式が理解しやすく読みやすい文章になることに貢献していて、何かを書く上で参考になるなと思いました。

第一夜 トラウマを否定せよ

・原因ではなく目的として考えるというのは極端で必ずしも妥当するとは思いにくいですが、逆説的で面白いなとも思いました。
「トラウマ」や過去への執着、「不幸」自体も自分が望んで選択したというのは何か引っかかるところがあるものの、突き詰めて考えるとそういった面もあるなと思いました(一面的に考えれば、という前提の下での話なので、そういう面でない場合もあるなとも思いました)。

・人は常に「変わらない」という決心をしていることは自分自身でも思い当たることがあります。
こうすればよいと思っていても行動に移していない場合、こういった面が働いているのだろうなと思いました。

第二夜 すべての悩みは対人関係

・すべての悩みを対人関係に結びつけることは単純化し過ぎである気もしますが、そう考えるとシンプルになるなと思いました。

・劣等感と劣等感を言い訳にする劣等コンプレックスを分けるというのは、確かに混同しがちですし、自分自身両方の意味で劣等感という言葉を使っていることがあったので勉強になりました。

・劣等感から逃れるために自分を偽って肩書き等で優れていると感じようとする優越コンプレックスは、虚栄心、栄光浴などの実例がすぐに思い浮かび、自分自身にも確かに存在するなと思いました。
自慢することが劣等感から来ていること、不幸自慢も自慢と同様の動機・効用があることは確かにそうだなと思いました。

・人生が競争でないという言葉はよく目にし、耳にしますが、この本で言われるほど例外なく無限定でそのことを肯定しているのは初めて見た気がします。

・人間の行動面の目標「自立すること」「社会と調和して暮らせること」、心理面の目標「私には能力があるという意識」「人々はわたしの仲間であるという意識」、3つの人生のタスク「仕事のタスク」「交友のタスク」「愛のタスク」とアドラー心理学全体の指針のようなものが挙げられていて分かりやすいなと思いました。

第三夜 他者の課題を切り捨てる

・承認欲求を否定する、という考え方はかなり大胆だなと思いましたが、他者の承認を気にしないというのは自分自身でも到達した考え方で、実際にある程度実践していました。
個人的には「承認欲求」は満たされなくても他者に承認されることは、他者と一緒に何かをする上で必要だと感じ、欲求を満たす目的でなくても承認そのものは必要とするものだと思いました。

・「課題の分離」という言葉が、「自己の課題と他者の課題の分離」という文脈で使われていることが新鮮に感じました。
この切り分けが難しい「自分たちの課題」のようなものもありそうですが、それも詳細に見て行けば「自己の目的に関係するか・しないか」で分類できそうな気もしました。

・この本のタイトルである「嫌われる勇気」が、承認欲求の否定ということの第一歩として書かれていて、なるほどと思いました。

第四夜 世界の中心はどこにあるか

・他者の承認を必要としないという考え方の個人心理学から、他者自体を必要としないという結論や自己を中心として考える結論に結びつきそうですが、その点を「青年」に反論させて全体論、共同体感覚を持ちだしてきたのはうまい話の流れだなと思いました。

・「インサイドアウト」「自ら始める」という良い意味で自己中心であることを述べているのかと納得しかけていたので、全体論は意外でもありました。

・自己への執着から他者への関心に切り替えるべき、というのは「7つの習慣」の「依存⇒自立⇒相互依存」のプロセスのようだと思いました。

第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる

・「自己肯定」と「自己受容」の違いは、語感からは同じようなものだと感じましたが、その定義づけで違いを出しているのは分かりやすかったです。

・「肯定的なあきらめ」は語感から「積極的にあきらめる」ように感じましたが、現実を受容するという意味でつかわれるなら確かによい考え方だと思いました。

・「信用」と「信頼」の違いは「いいひと。」という漫画で出ていて、良い使い分けだと思って自分でも使っていましたが、原典がアドラーだったのかと初めて知りました。

・「人はいま、この瞬間から幸せになることができる」ということは、この結論にたどり着くまでのプロセスはアドラーの考え方とは全く違いますが、考えたことがありました。
共同体感覚とは全く結びつかずにこの考えに至ったので、ここはあまり理解できませんでしたが、こういった道でこの考えに至ることもあるのかと勉強になりました。

・「いま、ここ」という過去でも未来でもなく今に焦点を当てるという考え方は首相にもなった大平正芳の考え方でもありましたが、アドラーから来ているのかなと思いました。

○つっこみどころ

・うまく「アドラー」の考え方を哲学者と青年の議論に乗せていると思いますが、最後の青年の改心が急過ぎて、最後の展開はうまく思いつかなかったのだなと思いました。
「いま、ここ」が重要であり唯一集中すべきものということを結論として終わっていますが、この記述の所が全体の中で一番薄く感じました。

・言い切り型の極論が多く、例外を考えない考えということに違和感(反感?)を覚えました。
「原因ではなく目的」「すべての悩みは対人関係」「承認欲求否定」「自己への執着否定、他者への関心のみでよい」など、一方向に突き詰めて考えるとそう言えなくもないと理解はできますが、その方向以外をそもそも考えないという前提の話なので、「全てに該当させることができる」ことには同意できても、「全てに例外なく該当する」としていることには同意はできないなと思いました。

・自己を共同体の一員と考えるべきという結論は、その理由があまり述べられておらず腑に落ちませんでした。

・この本のタイトル「嫌われる勇気」は、この本に出てくる文脈として主題に関わる、入り口にあるものだとは思いますが、主題そのものとまでは思えませんでした。出版社的に目を惹くタイトルにしたのでしょうか。