【プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く】レポート

【プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く】
アンソニー プラトカニス (著), エリオット アロンソン (著), 社会行動研究会 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4414302854/

○この本を一言で表すと?

 説得・プロパガンダに関わるテクニックやその作用を、具体例を挙げて述べた本

○考えたこと

・周りに溢れている説得・宣伝・プロパガンダ等がどのような意図や目的を持って行われているか、どのような効果があるか等が書かれ、ある程度その抵抗手段も書かれていて、興味深く、役に立つ本だと思いました。

・「影響力の武器」と書かれていることが似ていたり、影響力の武器の初版より後に出版されたからか、いくつも引用されていましたが、「影響力の武器」が6つの大きな項目をそれぞれ掘り下げている内容だったのに対して、小さな項目をその具体例を挙げて説明している内容だったので相互補完的になっているように思えました。
最後の訳者あとがきで、影響力の武器と併せて読むことを勧めていましたが、納得できました。

・西洋哲学だけでなく、韓非子や孟子のような東洋哲学の話も引用されていて著者たちの知識の範囲がすごいなと思いました。

第1章 日常生活のなかの説得

・思考の中心ルートと周辺ルートについて書かれていました。ダニエル・カーネマンが提唱しているシステム1・システム2の話に似ている話だと思いましたが、元は同じものかもしれません。

・認知的不協和の話は最近出てきた話だと思っていましたが、この本が書かれた1992年には既に最近書かれた本と同じレベルで述べられていて、ただ自分が知らなかっただけだと思いました。

第2章 説得のお膳立て

・同じ内容でも言葉の使い方で伝わる印象が真逆にさえなること、繰り返し伝えられたイメージが伝えられなかったことを除外してそれが全てだと考えさせること、質問の仕方で答えを誘導できること、おとりを入れることで相手の頭の中で比較させることなどは、ある程度知られていることですが、具体例と実験結果を知ると思っていたよりかなり大きな影響力があるなと思いました。

・「事実もどき」のように推定しやすさから関係のないことを関係があると思い込むことは、社会全体に関わる大きなレベルでも身近な周辺だけの小さなレベルでも大いにあり得るなと思いました。

第3章 伝達者の信憑性

・説得の方法やその内容だけでなく「だれが」説得するかも大きく影響力に関係しているということが、その説得者の信頼性によるというのは当たり前だとは思いますが、改めて考えてみると根拠がないままに信じていることもあり、意識していなければ自然に説得されてしまいそうだとも思いました。

・意図して説得する場合だけでなく、プロボクサーと殺人事件の関係のように、意図しない説得・影響力もあるということは世の中の関係性の複雑さを感じました。

第4章 メッセージ

・パッケージの効果は、知識として知ってはいても、それほど意識していないときにはパッケージで判断して商品を購入することがあり、その威力を改めて思い起こしました。説得者として「自己」が強力であり、自分で自分を説得させるプロセスを作ることで目的を達成するというのはかなり強力な手段だと思いました。

・宣伝のイメージが相手に対する印象の強さを左右すること、回数が宣伝の効果にある程度があり、繰り返し過ぎることで「擦り切れ効果」が発生することなどは、感覚的には理解しやすいですが、実験結果として示されると改めてその効果を知った気がしました。

・CMソングなどが説得される者の意識を逸らし、受け入れさせる効果があるというのは初めて知りました。確かについ頭の中をめぐることがありますし、子供であればなおさら受け入れやすいものだと思いました。

・比較対象を出して宣伝することは、一定程度の知識や考えを有する者に有効で、それ以外の者には単純に繰り返す方がよいこと、相手次第によってどちらが有利になるかということはなるほどと思いました。
その事実とヒトラーの「わが闘争」の内容を関連づけて書かれていて興味深かったです。

第5章 感情にアピールする説得

・恐怖アピールは恐怖モチベーションという言い方で知っていましたが、単純であるもののかなり強力な説得手段だなと改めて思いました。

・仲間として考えられるカテゴリーを作って仲間意識を持たせるグランファルーン・テクニックはこの本全体の中でも一、二を争うほど強力な手段だと思います。
意識していなくてもこの仲間意識で誰もがある程度縛られているとも言えそうです。
その時の状況で、孤独感を感じている時などは特に大きく効果を発揮しそうです。

・返報性、譲歩、希少性の話は「影響力の武器」に載っていた内容とほとんど同じでしたが、やはり強力な手段だと思いました。

第6章 説得の戦略を打ち破るために

・サブリミナル効果について否定したこと、その証拠等を裁判に提供したことなどは興味深かったです。
最近読んだ本でサブリミナル効果を証明したような記述を見て、あるのかないのか、あったとしたらどの程度なのかがまだよく分からないなと思いました。

・宣伝・プロパガンダに抵抗できる力をつけるために、その対象を予め学ぶというのは、確かに重要だと思いました。
キリスト教国などで他の宗教について教える教科書があったりすることがありますが、先に公平な視点の知識を持っておくというのは偏見に対抗できる有効な手段だと思いました。

第7章 情報戦略が失敗するとき

・誰もが常に正しいことを知りたいと思っているわけではなく、娯楽を求める傾向が強いゆえにニュースですら娯楽性が求められるというのは、アメリカだけでなく日本もそうだと思いました。
スポンサーを得るための視聴率を高くしたいインセンティブと費用を抑えたいインセンティブが存在する以上、倫理等の曖昧なものに頼る以外にそこから逃れることは難しそうです。
コストが安い犯罪のニュースが取り上げやすいためにテレビに採用されやすく、実際以上に犯罪が世の中に溢れているというイメージを作っていることは、この本で書かれていたいろいろな要素を含んでいるなと思いました。

○参考にならなかった所、またはつっこみどころ

・この本で取り扱われている金額が円単位にされていることに違和感がありました。せめてドル・円を併記していたらまだ分かりやすかったと思います。
日本人に馴染みやすいようにしたのかもしれないですが、その割にはアメリカの修正一条などがそのまま説明なしに書かれていたり、中途半端だと思いました。

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