• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【ゼミナール 経済政策入門】後半レポート

【ゼミナール 経済政策入門】
岩田 規久男 (著), 飯田 泰之 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532133106/

○この本の後半を一言で表すと?

 前半に比べて数式が増えて難しくなったものの、数式を経た結論を知るだけで何とかついていける、経済学初学者向けの内容

○興味深かった点

・「第Ⅱ部 マクロ経済政策」は長期の成長政策、短期の安定化政策、中期のインフレ・デフレ対策という区分がわかりやすいなと思いました。

・ところどころでミルトン・フリードマンの理論(恒常所得仮説、政府の金融政策実施自体の批判、負の所得税、教育バウチャー制度)が出てきていたのが面白かったです。
恒常所得仮説に対しては成立しない状況が批判的に書かれていますが、それ以外には特に批判がなく、著者はフリードマンが結構好きなのかなと思いました。

第6章 成長政策の理論と課題

・長期定常状態に陥った時に技術革新が打開策になること、技術革新の主要因の一つに教育が入っていることはなるほどと思いました。

・「貧乏人の経済学」で出てきた「貧困の罠」とその打開策のための「ビッグ・プッシュ」、それに対する反論の「援助の失敗」にも触れられていていろいろな視点が盛り込まれているなと思いました。

第7章 安定化政策の基礎と財政・金融政策

・マクロ経済学の本でよく最初に出てくるIS-LMモデルが丁寧に説明されていて分かりやすかったです。

・安定化政策が必要な理由として先の予測ができないことの非効率性が挙げられていて、この本で書かれている全般的(どちらかといえば先進国向け)な話だけでなく、発展途上国が金額的な貧困以上に先の予測ができない確実リスクに悩まされていることとも整合的だなと思いました。

第8章 インフレ・デフレと失業

・予想物価水準や予想実質利子率など、現在だけでなく未来の予測がインフレ・デフレに絡んでいるという話が面白いなと思いました。

・インフレが債務者利得、デフレが債権者利得になる話は、ファイナンシャル・プランニングの本などでも出ていてその根拠がこの本で理解できてよかったです。

・非自発的失業、自発的失業、摩擦的失業の区分とP.298,299の「NEET問題と経済政策」が今の自分の立ち位置が分かって面白かったです。

・よく聞く「最近の若者はだらしない」が急にそうなったのか、状況でそう見えるだけなのかいう問いには考えさせられました。

第9章 安定化政策の現代的課題

・政策ラグを内部ラグと外部ラグに分けて、さらに内部ラグを認知・決定・実行にわける考え方はなるほどなと思いました。
各ラグによってそれぞれ関係する要因が異なるので、分けて考える方がよさそうです。

・インフレ・ターゲッティングを先進国では日本とアメリカだけが導入していないという記述でしたが、2012年時点では日本は不完全ながら今は導入しているそうです。

・財政の維持可能性と財政再建の基準の考え方は何となく知っていたものの、具体的な話には初めて触れました。
日本のドーマー条件からの外れっぷりはすごいなと思いました。

第10章 所得再分配政策の基礎理論

・結果の平等と機会の平等の切り分けがありますが、日本は思い切り結果の平等を求めている国だなと改めて思いました。

・機会の平等と相続税の関係はミルトン・フリードマンの「資本主義と自由」では「相続税はナンセンスだ」とぶった切っていましたが、この本では肯定しているようです。
相続の動機の「利他的遺産動機(自分の子孫の効用も考慮)」「戦略的遺産動機(自分の面倒を見てもらうことを期待)」という区分が面白いなと思いました。

第11章 税制の効率性と公平性

・税制そのものの性質に経済学的に触れた議論は面白いなと思いました。
課税額の捕捉がネックになるというのは税制で達成したいことと税制の実行可能性のバランスが求められる税制の難しいところだなと思います。

第12章 年金と医療政策

・医療保険のモラル・ハザードは他でもよく見る話ですが、日本・アメリカ・イギリスを比較としてほぼ公共で無料のイギリスとほぼ民営のアメリカとその間の日本という立ち位置が面白かったです。

・年金制度改革の話はいろんなところで聞きますが、賦課方式から積立方式への移行で2150年で完全解決という気の長い案は初めて見ました。
超長期国債で財源を確保するイギリスのボーア戦争国債方式の方が現実味があるなと思いました。

○つっこみどころ

・「第Ⅲ部 所得再分配政策」では低所得者視点の考え方中心で高所得者側の視点に立った議論がないなと思いました。
この本では累進課税を強く推奨していますが、日本から高所得者が流出する可能性は少しだけ触れられていただけでほとんど書かれていませんでした。
行き過ぎるとお金の効用の普遍性を無視して、金持ちの持つ1万円と貧乏人の持つ1万円は価値が異なるという話になってしまいそうに思いました。