【サイエンス入門Ⅰ】
リチャード・A. ムラー (著), 二階堂 行彦 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4903063518/
【サイエンス入門Ⅱ】
リチャード・A. ムラー (著), 二階堂 行彦 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4903063550/
○この本を一言で表すと?
文系向け科学の本
○よかった点、興味深かった点
・数学に弱い自分でもある程度は理解できる内容になっていてよかったです。細かい数字は必要なときに見ればよいので、重要な理論に集中するという考え方はすごくいいなと思いました。
自分が「これはどうなっているんだろう?」と気になって理系の人に聞いたことや、まだ聞けていないことがいろいろ載っていて、疑問から先に進めなかったことに考えを進めることができそうでワクワクしました。
高校生くらいのときにこの本を読んでいればもっと科学好きになっていたと思います。
・自分が高校生の頃に椅子に躓いた時に同時に椅子と接触していたテーブルがドンと鳴った時に思い付いた「すでに人類は光の速さを超えている」理論が間違っていることがはっきりと分かって良かったです。
第1講 エネルギーと仕事率と爆発の物理
・爆薬のTNTよりもチョコチップクッキーの方がエネルギーが大きい(しかし、爆発するときの時間がとても短く、消化するための時間が長いので、時間当たりの仕事率ではTNTが上)という話で、いろいろな場面で使われる「エネルギー」という言葉が一つの意味に結びついたように思いました。
第2講 原子と熱
・ガスコンロやロウソクの火もプラズマだという話で、「この火はどういう状態なのかな?」という疑問が解けました。
第3講 重力と力と宇宙
・「無重力状態」という言葉に違和感を感じていましたが、「無重量」であって、「永久落下状態」だという説明で何となく納得がいきました。
・ブラックホールについて今までいろいろな本で出てきていてもイマイチ分かっていませんでしたが、重力と距離で考える説明でようやく理解できたように思います。
・渦の向きがコリオリの力のせいとは違うとキッパリ否定されていてようやく自説をはっきりさせることができそうです(これまで「コリオリのせい」「コリオリのせいじゃない」の両説どちらが正しいのか自分の中ではっきりしていませんでした)。
・地表では地球の中心から地球の半径分の距離があるから今の重力しか感じていないと書いてありましたが、物体の中心からしか重力が発生していないのではなく、いろいろな力の総計が中心らの重力と合致するという話で分かりやすく説明しているのかなと思いました。
第4講 原子核と放射能
・放射能とガンの関係など、よく聞くもののどういう理屈でどれだけ関係があるのかよく分かっていませんでしたが、ある程度理解できたように思います。
核分裂と核融合など、言葉自体は聞いたことがあるけれど具体的にはよく知らないことが理解できてよかったです。
第5講 連鎖反応と原子炉と原子爆弾
・「連鎖反応」とか「連鎖的に」など、言葉としては馴染み深いような言葉がいろいろな具体例(核分裂、細胞分裂、コンピュータウィルス、雪崩など)で示されていて改めて理解できたように思いました。
・原子炉や原子爆弾や水素爆弾の仕組みが分かりやすく説明されていてよかったです。イランのウラン濃縮の話をなぜアメリカが問題視しているのかなどについても一歩深く理解できたように思います。
・「ウランが自然にとれるものなら自然に核分裂とかしないのかな?」と考えたことがありましたが、17億年前のアフリカの天然の原子炉の話が書かれていて、「やっぱりあるんだ!」と分かって嬉しかったです。
第6講 電気と磁気
・「磁気って結局何なんだろう?」「何で磁石で電気が作れるんだろう?」と疑問に思っていましたが、一気に解消されてよかったです。
「永久磁石」というもの自体が名称から「エネルギー保存則」に反しているような気がしていたのですが、電子の回転の向きが揃っているということで磁気を発生させているということで何となく理解できたように思います。
・エジソンが自分が直流電流を主流にしたいために交流電流をいろいろな手段でネガティブキャンペーンを張っていた話は初めて知りました。
第7講 波
・UFOなどが好きな人でなくても知っている「ロズウェル事件」の内幕が原爆実験探知のための装置「フライング・ディスク」の墜落事故だったという話が、その内幕と併せて載せられていて面白かったです。
・「波」って結局何なのか、水の波と音の波と光の波は「波」と言っても別物なのか、よく分かっていませんでしたが、ロープを揺らした時の波から光の波まで一つの「波」の考えで説明されていてある程度理解できたように思います。
・朝と夕方で音の聞こえ方が違うこと、その理由は音が伝わりにくい方向に音の波が曲がることが説明されていて、日常感じていたことが思わぬ方向から裏付けられて驚きました。
・最近のイヤホンがマイクで音を収集して逆位相の音を発生させて相殺という高度な仕組みで成り立っているということを初めて知りました。
第8講 光
・「光」は「波長」があるから「波」なのか、「光子」という言葉があるけど何なのか、と疑問に思ったことがありますが、ある程度整理されていて、「光」が電場と磁場からなる波だということについては初めて知りました。
・「蜃気楼」は遠くのオアシスが近くに見えるような現象だと思っていましたが、空からの光が曲がって地面に移った空が水溜まりに見える現象のことだとは初めて知りました。
砂漠で迷っていて蜃気楼を見たときに、例え遠くにだったとしてもオアシスがあるという意味ならまだ希望が持てますが、そもそも錯覚となれば希望が持てないなと思いました。
第9講 不可視光
・電波、光、マイクロ波などは波長が違うだけのものだと昔習いましたが、イマイチ理解できていませんでした。
それがようやく自分の中で納得できてよかったです。
赤外線カメラがどういった仕組みなのか不思議に思っていましたが、その仕組みが載っていてようやく理解できました。
第10講 気候変動
・「図解 気象学入門」で学んだおかげか、気候変動についてはある程度元知識がありましたが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では実際にはどのような報告がなされているかなどを初めて具体的に知ることができてよかったです。
今まで気候変動についてニュースなどで聞いたことがかなり誇張・捏造されていたことがよく理解できました。
・化石燃料資源の埋蔵量が石油の価格で「可採」か「不可採」かという基準が決められ、それによって変動しているという話で、ようやくいろいろな本やニュースで言っていることのブレの原因を理解できました。
第11講 量子物理学
・「量子」という言葉自体は聞いたことがあるものの、意味は全く知らない状態でしたが、少しは理解できたように思います。
・アインシュタインが量子と言う考え方を嫌っていたという話は面白いなと思いました。
・レーザーや太陽電池、半導体などの仕組みを今まであまり知ろうともしていませんでしたが、少しでも触れてみると面白いものだなと思いました。
・物理学の「不確定性の原理」が哲学者にも影響を与えたというのは、何となくわかるような気がしました。
第12講 相対性理論
・「相対性理論」はいつか簡単な本でいいから読んでみようと考えていてずっと先延ばしにしていましたが、ようやくこの機会に触れることができました。
時間、場所が「相対的」だということと、それを数値化していることなど、これを考えたアインシュタインはやはり天才だなと思いました。
・「光速に近づくと時間の進みが遅くなる」と言う話はSFなどでよくありますが、その意味や原理についてようやく理解できました。
・P.281で「多くの人たちが、アインシュタインが発見した方程式E=mc^2によって原子爆弾が発明されたと思っています」と書かれていましたが、まさに私もその一人でしたが、ようやく誤解が解けました。
第13講 宇宙
・宇宙が今も広がり続けていることがなぜわかったのかなど、表面的にだけ知っていることの背景がいろいろ分かって面白かったです。
・天の川の中で太陽系は時速約160万キロで動いていると書かれていましたが、その速度も広い意味でいえば相対性理論的に自分の時間にも影響しているのかなと思うと面白いなと思いました(地球にいる以上みんな相対的に同じ速度に乗っているので関係ないのでしょうが)。
○つっこみどころ
・「サイエンス(科学)入門」という題名なのに物理学にしか触れていないなと思ったら原題は「PHYSICS AND TECHNOLOGY FOR FUTURE PRESIDENTS(未来の大統領のための物理学と技術)」でした。売るためとはいえ、内容と合致しない題名は紛らわしいなと思いました。
・誤字がかなり多いなと思いました。
「(誤)予知⇒(正)余地」くらいならいいですが、数字、特に乗数が普通の数字になっているケースが何度も見られましたが、あまりチェックされていないのでしょうか?文脈で間違っているのはわかるのですが、都度戸惑ってしまいました。