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【田中角栄 – 戦後日本の悲しき自画像】レポート

【田中角栄 – 戦後日本の悲しき自画像】
早野 透 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/412102186X/

○この本を一言で表すと?

 田中角栄ファンの元政治記者が書いた伝記の本

○面白かったこと・考えたこと

・政治関係の本や戦後の日本を書いた本などでよく出てくる「田中角栄」という人物について、その生い立ちから亡くなるまでをその周囲の動きとともに追っていて初めて詳しく知ることができたように思いました。

・著者自身が政治記者としてインタビューしたときの印象や、政治家自身が書いた手記を元にした記述が多かったので、客観的な事実の把握はしづらかったものの、当時の人物の心情や印象などが良く出ていて当時の雰囲気を味わえる本だと思いました。

第Ⅰ章 青少年期の思い

・それほど裕福な家庭で育ったわけではなく、まず新潟の地元で勤め、新潟出身の大河内正敏に声をかけられたと思って上京してその時は縁がなく、記者などに転職しながら、大河内正敏と縁ができて19歳で起業し、大河内正敏が三代目所長を務める理研から仕事をもらって事業を拡大したというのは、それだけでもそれなりの成功譚だなと思いました。

・軍隊に入って真珠湾攻撃前に病気で除隊となり、さらに事業を拡げたこと、朝鮮にまで広げていた事業を敗戦前に見切って帰国したことなど、この時の才覚も凄いなと思いました。

第Ⅱ章 政治の世界へ

・事業家として政治家から金の無心を受け、自らも政治家になるべく選挙に出たものの落選し、それから一年後に当選したこと、「不当財産取引調査特別委員会」の理事になって不正を追及する側に立っていたこと、炭鉱国管汚職事件で拘置所に収監されたこと、拘置所で立候補して当選したことなど、いろいろドラマのある人生を送っているなと思いました。

・政治家人生の前半から道路、住宅などの重視を主張していたこと、議員立法を進める推進者であったことなども興味深いなと思いました。

第Ⅲ章 新潟三区

・田中角栄を支える政治団体「越山会」の成立経緯やその動きなど、今の政治家の持つ同じような政治団体の資金授受がメインの団体という印象とは大きく異なっていて興味深かったです。

・越後交通という交通機関も押さえて新潟に密着した政策や経済活動も行って「城下町」としていった流れはすごいなと思いました。

・「選挙」ではなく「統治」と言ってもいいくらいの支配力をどのように積み上げていったのかの経緯がわかって面白かったです。

第Ⅳ章 閣僚としての手腕

・郵政大臣としてテレビ局に大量に許可を出したり、地主等が土地を提供して設立する形式の特定郵便局を多量に増やしたりしたこと、最年少で蔵相になったことなど、政治家としての活動も派手で今の日本の姿に影響しそうな施策も実施していたのだなと初めて知りました。

・愛人関係でもその愛人同士が雑誌で掲載されるまでお互いの事を知らなかったり、そのマネジメント力はすごいなと思いました。

第Ⅴ章 権力トップへの道程

・党幹事長としてその執務室をオープンにして交流していたというのは懐が広いところがあるなと思いました。

・福田赳夫とのトップ争いやダブルのニクソンショックなど、様々なトラブルがある中でトップまで歩んでいったというのは運と実力を両方持っていた人物だったのだなと思いました。

第Ⅵ章 首相時代

・有名な「日本列島改造論」が、田中角栄のブレーンたちがかなりの労力をかけて作り上げた資料が土台となっていたこと、オイルショックと重なり、政策自体がまずかったと判断され、撤回せざるを得なかったことなど、派手な政策が裏目を見た時のダメージの大きさも顕著だなと思いました。

・「文藝春秋」の「田中角栄研究」という記事が田中角栄の首相退陣にまで繋がったというのは、説得力のある場合のマスコミの影響力を感じました。

第Ⅶ章 ロッキード事件の衝撃

・「ロッキード事件」という名称自体や田中角栄が関わっていたことは知っていましたが、その具体的な内容や背景について初めて詳しく知ることができてよかったです。
通常同様のケースでもそれほど大きく取り上げられないようなことを三木武夫が追求したことで話が大きくなったこと、それが他の政治家の反感を買って「三木おろし」に繋がったことなど、政府としての政策の失敗等ではなく、政治外の問題から政治家声明を縮めるというのは今でも昔でも同じような流れで、政治というものの常なのかなと思いました。

終章 「今太閤」の栄光と死

・ロッキード事件後の田中角栄やその周りの動きは、田中角栄の全盛期と姿が大きく異なり、落ち目になった者の凋落や周りの反応が顕著に出ていて印象的でした。

○つっこみどころ

・客観的な情報と主観的な描写が混じっていて、事実と推測が判別しにくい内容になっていました。文脈に関係のない情景描写はくどいとも感じました。
また原典も手記のようなものがほとんどで、客観的事実が少ない本だなと思いました。

・著者が「田中角栄ファン」過ぎて、記述や内容があからさまに偏っていました。