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【ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ】レポート

【ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ】
ラリー・ダウンズ (著), ポール・F・ヌーネス (著), 江口 泰子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478026629/

○この本を一言で表すと?

 デジタル化に基づくイノベーションについて述べた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・デジタル化に基づいた、デジタルの特徴を加味したイノベーション理論の内容が書かれていて、今後適用される範囲が広がっていきそうだと思いました。
複製が容易で距離も関係がなく、イニシャルコストの低いデジタルの世界だとどのようにアイデアが事業化されていくのか、どのようにヒットするのか、どのように衰退するのかが、機械などの従来の製品と比較して書かれていてイメージしやすかったです。

・つっこみどころが多く、本としての完成度は微妙かもしれませんが、伝えたい本筋であるデジタル化に基づくイノベーションについての一つの考え方として有用な内容だったと思います。

第1章 ビッグバン・イノベーションとは何か

・グーグルマップの出現やスマートフォンの普及によって地図やナビの機械があっという間に衰退していったことでデジタルによるビッグバン・イノベーションの説明がされていました。

・ビッグバン・イノベーションの3つの特徴として、「枠にとらわれない戦略」「とめどない成長」「自由奔放な開発」が挙げられていました。
特に「枠にとらわれない戦略」では、プレミアムな製品・低コスト・カスタマイゼーションなどの従来並立させることが困難であった戦略を同時に進めることができ、ポジショニング・ターゲッティング・セグメンティングなどをしなくても最初から総当たりでアプローチできることなどが挙げられ、従来との差が強調されていました。

第2章 ビッグバン・イノベーションの経済学

・前章で挙げられた3つの特徴「枠にとらわれない戦略」「とめどない成長」「自由奔放な開発」を3つの経済学的な側面「製造コストの削減」「情報コストの削減」「実験コストの削減」に関連づけていました。
利用できるプラットフォームの存在、クラウドファンディングなどによるスタートのサポート、インターネット経由の情報取得の容易さなどが、これらのコスト削減に繋がっているそうです。

第3章 シャークフィン

・ビッグバン・イノベーションの4つのステージ「特異点」「ビッグバン」「ビッグクランチ」「エントロピー」について説明されていました。

第4章 特異点

・ビッグバン・イノベーションの最初のステージである特異点では、ビッグバン・イノベーションの第3の特徴である「自由奔放な開発」が活発に行われるそうです。
何かが世に出そうでまだこれというヒット商品が出ていないような潜伏期のような時期をさしているのかなと思いました。
このステージの3つのルールとして「『真実の語り手』の声に耳を傾ける」「市場に参入するタイミングをピンポイントで選ぶ」「一見ランダムな市場実験に着手する」が挙げられていました。

・「一見ランダムな市場実験に着手する」では、使える部品の組み合わせによる開発コスト・実験コストの低下で、予め様々なことを試すことができると書かれていて、確かにそうであればイニシャルコストの低下し、ベンチャー企業の参入が容易になりそうだなと思いました。

第5章 ビッグバン

・ビッグバン・イノベーションの第2のステージである「ビッグバン」では、成功した企業がひとり勝ちして、その業界の既存企業を含めて大いに巻き込んで業界を変革するそうです。
このステージの3つのルールとして「『破滅的な成功のシグナル』を見逃さない」「『ひとり勝ち市場』で勝者になる」「『ブレットタイム』をつくる」が挙げられていました。

・「『破滅的な成功のシグナル』を見逃さない」で、想定以上の成功を収めてしまって体制が整わずに破綻する可能性、破綻しないまでも準備が整っていない性であっという間に通り過ぎてしまう可能性について触れられていました。

第6章 ビッグクランチ

・ビッグバン・イノベーションの第3のステージである「ビッグクランチ」では、爆発的な成長の後で突然死に至るおそれがあるそうです。
このステージの3つのルールとして「市場の飽和に先んじる」「負債化する前に資産を処分する」「リードしているあいだに撤退する」が挙げられていました。

・以前では市場が飽和するまでに数年から数十年かかっていたのが、数ヶ月で飽和することがあり、次のイノベーションを起こす手を打つか、撤退の準備をしておくことが重要だそうです。
そのタイミングを見極めるのがシビアそうだなと思いました。

第7章 エントロピー

・ビッグバン・イノベーションの最後のステージである「エントロピー」では、製品ライフサイクルの衰退期のように、市場規模が推測し、かつビッグクランチのステージで脱出しなかったために容易に脱出することすらできないそうです。
このステージの3つのルールとして「『ブラックホール』を逃れる」「他の企業の部品サプライヤーになる」「次の特異点を探す」が挙げられていました。

・「他の企業の部品サプライヤーになる」で、これまで最終顧客に製品を提供していた立場から、製品を市場に供給する企業に部品を供給する立場にシフトチェンジする策が挙げられていましたが、組み合わせによるイノベーションが、過去の技術に依存することを考えると、ビッグバン・イノベーションの流れでかなり有効な立ち位置であるようにも思えました。
技術的なことはともかくとして、組織的な面でかなり難しそうだとは思いますが。

○つっこみどころ

・副題が長すぎるなと思いました。内容には即していますが、もう少しコンパクトにできたのではと思います。

・「はじめに」で、イノベーションのジレンマが第2の波、ブルー・オーシャンが第3の波で、ビッグバン・イノベーションが第4の波だと書かれていましたが、イノベーションのジレンマとブルー・オーシャンを同列で考えているところ、イノベーションのジレンマが今では通用しないとしていることなど、かなり無理のある結論が出されているように感じました。
この本で書かれているビッグバン・イノベーションは完全にデジタルに置き換えられるかデジタルに置き換えられた範囲が大部分を占めるようなものしか適用できない限定的なもので、製造の要素が大きい業界にはほとんど適用できない概念であるように思えました。
デジタルに置き換えられる範囲が徐々に広がっていくというのは考えられますが、現在においてはまだ特定の業界の話だと思いました。

・3つの特徴、3つの側面など、並列に挙げられている要素で、大きく偏っているように思えるケース、例えば最初の1つに比べて残りの2つが同レベルとは思えないほど小さい扱いがされるようなケースが見られました。
並列に要素を挙げる本を書く時のお作法に無理やり合わせたようなおざなり感があるように思えました。
また、要素間の関連でもそれほど関連づけに意味を見いだせないパターンもありました。(例えば第2章の3つの特徴と3つの経済学的側面など)

・第3章のシャークフィンの事例として、ピンボールと家庭用ゲーム機の関係が事例として書かれていましたが、これはビッグバン・イノベーションよりもイノベーションのジレンマの事例ではないかと思いました。

・話のまとまりが弱く、様々なトピックを寄せ集めた本であるように思えました。