【韓国 内なる分断 葛藤する政治、疲弊する国民】レポート

【韓国 内なる分断 葛藤する政治、疲弊する国民】
池畑 修平 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4582859178/

○この本を一言で表すと?

 韓国の国内の分断とその影響について解説した本

○よかったところ、気になったところ

・NHKの元ソウル支局長の著者が、現場で経験した内容や、現地の人の意見なども踏まえて考察され、客観的に韓国の状況が描かれ、実態をよく知ることができる本だと思いました。

序章 文在寅は「反日」なのか

・親日残滓の清算、親日派既得権益層の清算、というキャッチフレーズに併せて未来志向というキャッチフレーズも使用して大統領選挙で当選した文在寅が本当に「反日」なのかという疑問の提示がされていました。
親日派既得権益層の清算という内容がなぜ日本を刺激するのか理解できないという文在寅陣営の幹部の言葉が印象的でした。

第一章 韓国の内なる闘い

・韓国の大統領の権限が強く、帝王的大統領と呼ばれていること、1万人近い政府ポストを決めることができるため、大統領の派閥が変わるたびに総入れ替えされ、直接決められるポストに留まらない影響があること、一方で再選を許されていないことによる儚さがあること、その権限を定めた第六共和国憲法の改正が保守派・進歩派のどちらでも意識されていること、その強さと儚さによって果てしなき権力闘争が生まれていることを「南南葛藤」と読んでいることなどが述べられていました。

・韓国の南南葛藤はアメリカの保守対リベラルに似ているものの、北朝鮮に対する姿勢において大きく異なること、保守派の敵対と進歩派の同胞意識の違いが大きく、最大の葛藤になっているそうです。

・対立が激しい為に国会での審議も滞りがちになり、李明博政権時に成立した「国会先進化法」で法案を本会議に上程する場合在籍議員の五分の三以上が賛成しなければならないことになってより困難になったそうです。

・2017年の大統領選挙に向けて、保守派のセヌリ党が有利で進歩派への攻撃もある程度成功していて大統領選も優位に進められそうだったこと、「崔順実ゲート」で一気に進歩派に傾いた流れが書かれていました。

第二章 朝鮮半島分断の現在

・2016年にポケモンGOが韓国で遅れた理由として、「空間情報の構築及び管理などに関する法律」に基づいて韓国の国防上の観点から位置情報を渡さなかったことが挙げられていました。
日本海沿いの東海岸では一部ポケモンGOで遊ぶことができ、ポケモンGO特需に沸いたこともあり、全土で遊べるようにするべきか議論になり、他の国々に遅れて半年遅れで韓国全土で遊べるようになったそうです。
なお、地図情報の制限という問題が同クリアされたのかは明らかにされていないそうです。

・南北分断時に済州島四・三事件で三万人が犠牲になったとされていること、分断から1970年代まで韓国は北朝鮮に経済的に劣る時期が続いたこと、経済発展のために民主化が犠牲にされる開発独裁で「漢江の奇跡」により逆転したことなど、朴正煕政権までの流れが述べられていました。

・朴正煕暗殺後、民主化の動きがあったものの、1980年の光州事件が起きたそうです。
公称の死傷者数はかなり抑えられた数字になっているそうですが、特殊部隊が光州に入って地元警察とともに民主化を求める学生たちに牙をむき、実際の被害は大きかったそうです。
その後の全斗煥政権は北朝鮮や金大中による内乱陰謀事件と位置づけたそうです。
光州事件の犠牲者を追悼する「君のための行進曲」を歌うかどうかで進歩派か保守派かがわかるそうです。

第三章 保守派のジャンヌ・ダルク

・朴槿恵が親北派から韓国を守った保守派のジャンヌ・ダルクとされているのは興味深いなと思いました。

・朴槿恵は「非正常の正常化」を打ち出して民主総労と戦い、朴正煕を日本名「タカギ・マサオ」で呼んだ極左政党の統合進歩党を離党に追い込み、北朝鮮への敵対的な対応を取り、慰安婦問題合意とGSOMIA締結など日韓の歩み寄り、デモ参加者をISと同一視するなど、一貫して進歩派とは逆の道を行ったそうです。

第四章 「秘線」と「ロウソク革命」

・韓国では影の実力者を「秘線」といい、秘線の存在自体は当然のものとして考えられているものの、その秘線が新興宗教団体「大韓救国宣教団」の創設者で「韓国のラスプーチン」と呼ばれる崔太敏の娘の崔順実だったことが大きな問題とされ、大統領罷免にまで繋がったそうです。

・崔順実の国政壟断で最も金額の大きかった案件は文化体育観光部の事業に関することであるものの、政府全体の1%にも満たないこの活動の不正で民衆が大きく動いた理由は、デモで動かしてきた成功体験や、教育格差が大きい中での不正入学等の感情的に許せないことであったそうです。

・韓国の広場民主主義は、BSE疑惑などのフェイクニュースでも動くことがあり、良いものとも言い切れないそうです。
朴槿恵追及のデモがあった時は北朝鮮は挑発活動をピタッと止め、北朝鮮に都合の良い状況になることを待っていたそうです。

第五章 文在寅政権が起こした地殻変動

・文在寅が大統領に当選してから、光州事件の再調査、大統領経験者2名の収監、積弊清算の名のもとにそれまでの政策の逆を行く活動、韓国の建国時期を1948年から1919年の大韓民国臨時政府成立の時期とする運動、抗議デモで病死とされていた人を外因死とするまでの細部に渡る「交代」など、保守派を徹底的に否定する「保守派打倒の永続化」の動きが見られるそうです。

第六章 変調、そして日韓激震

・労働者寄りの経済政策、平昌五輪での南北合同チームや太陽政策、訪朝などの北朝鮮への歩み寄り、日韓関係の強硬化などの動きが概説されていました。

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