• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【逝きし世の面影】レポート

【逝きし世の面影】
渡辺 京二 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4582765521/

○この本を一言で表すと?

 幕末・明治初期の日本の姿を見た外国人の記録から当時の日本を描き出した本

○面白かったこと・考えたこと

・外国人が見た日本、というとつい偏見で見たものという偏見を持ってしまいそうですが、当時の日本を見た彼らの背景ごと受け止めるという姿勢で書くというその発想が面白いなと思いました。

・タイトルが絶妙で、既に無くなってしまった文明「逝きし世」を、日本人が描けない当時の日本を当時の外国人の印象から「面影」を知ろうという内容にマッチしていて、これ以上のタイトルは思いつかないなと思いました。

・当時の日本人のあり方が、あまりにも今の日本人と違っていて、また明治以降の日本人がそのあり方を認めたがらないということもなるほどと思わされ、こういった形でしかこの頃の日本を知ることができず、この本でしか味わえないのだろうなと思い、読み終わった後もしばらくその世界に浸っていました。

・司馬遼太郎の小説などを読んで知った当時の文化と、この本を読んで知った当時の文化のギャップに驚きました。
日本の歴史小説家や歴史家はこの本のような視点を持つことができなかったのだろうなと思いました。
いろいろな文献を読み込んだ司馬遼太郎はこの本の参考文献も読んだのでしょうが、取るに足らぬものとして退けたのでしょうか。

・当時の外国人が感じた思いを追体験できるような描写で、彼らの感じた微笑ましい思いや感動も伝わってくるようで、この本を読みながら口元が緩んでいる自分に気付きました。

・ペリー艦隊に向かって面白がって春画や春本を投げ込んだ当時の民衆とそれに慌てるペリーの当時の姿が思い浮かんで笑えました。

・日本と交渉しようとした外交官が日本の交渉担当者の暢気さやテンポにイライラしている様子は、文化の違いが大きく出ているところだなと思いました。

・いろいろな国を見てきた外国人が驚いた日本の下層の人たちの礼儀正しさや気持ちのいい陽気さ、気前の良さはある程度文化の進んだ島国だからという要因で成立した稀少なものだったのかなと思いました。

・現代とはかけ離れた仕事の進め方、何かにつけ歌を歌いながら進めるやり方、急いで進めたりしないペース、など、生活コストがかなり低いことからこういった生活が生まれるというのは、まさにアルビン・トフラーの言う「引き返せない楔」の前の世界なのだろうなとしみじみ思いました。
また、生活コストの低さから障害者も十分に暮らしていけたこと、かなり細かい業種の分岐(帯紐だけを商う者など)が存在できたというのは興味深いです。

・ところどころ外国人が日本の庶民の生活に入っていくところが書かれ、そこで驚いた感想なども書かれていますが、著者の「そんな自分たち(外国人)の図々しさには気付いていない」という第三者としてのツッコミが所々入っていて面白かったです。

・見知らぬ姿かたちも違う外国人も平気で受け入れ、好奇心のままに触ったりする庶民の姿は今まで想像したことがありませんでした。
この寛容さは今の日本では田舎ですらもう見られないものだろうなとしみじみ思います。

・江戸時代の庶民が専制君主制による自由の制限どころかどの国よりも自由を享受しているという外国人の感想がなかなか興味深かったです。
何が「自由」なのか、「自由」というものに対する見方の違いがこういう形でも出るのだなと新鮮に思いました。

・日本人が裸であることを恥じていないということを、聖書の創世記で善悪の知識の実を食べる前のアダムとイブに例えている人が複数人いたというのは面白いなと思いました。
よく坂本龍馬の妻のおりょうが風呂に入っている時に敵に気付いて裸のままで坂本龍馬に伝えたというエピソードが小説や漫画で取り上げられますが、こういった裸に対する文化の背景からすると捉え方が大きく変わるなと思いました。

・日本が子どもの楽園だという点ではほとんどの外国人が一致していたということはなかなか興味深いなと思いました。当時の子育てのあり方と現代のギャップがすごいなと思いました。

・当時のヒューマニズムが成立していない日本、人間が特別なものだと思っていない日本人の考え方が面白いなと思いました。
そこからくる人間と他の動物を同等視する視点は、グリーンピースなどの過激な環境保護団体でも持ち得ていないのだろうなと思いました。
馬や牛を労わる様子は、どこか当時から1,000年以上前に書かれた日本霊異記とリンクするなと思いました。