【ミャンマーを知るための60章】
田村 克己 (著, 編集), 松田 正彦 (著, 編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4750339148/
○この本を一言で表すと?
ミャンマーについてバランスよくいろいろな分野のコラムを集めた本
○この本を読んで面白かった点・考えた点
・複数の著者が各自の得意分野について書いた文章を集めているので、章が多い割にそれぞれの内容が濃くてミャンマーを理解する上でよい本だと思いました。
Ⅰ 歴史
・ミャンマーの歴史にさらっと触れられていました。ミャンマーに行くことになったら実際に触れることができる、今も観光地となっている場所を中心に書かれているので、写真等で雰囲気が掴みやすかったです。
Ⅱ 自然
・地域的に熱帯で常時雨が降っているイメージを持っていましたが、地域別の月別降水量の表を見るとどの地域でも雨季と乾季がかなりくっきりと分かれていました。
・現代でもゾウや水牛やイルカを使って農林水産業に活かしているというのはすごいなと思いました。
・ミャンマーの国土の62%がエーヤワディー河の流域というのは、雨季と乾季の差の大きさと併せて考えるとかなり暮らすのが大変な地域だなと思いました。
・2008年5月のサイクロン「ナルギス」によって13万人以上が犠牲となり、240万人以上が被災者となったというのはすごい規模だなと思いました。
その「ナルギス」以降に国際的な援助が加速して軍政が終わった現在に繋がったというのは「禍福は糾える縄のごとし」という言葉を思わせます。
Ⅲ 社会
・ヤンゴンからネーピードーへ首都を移転することで発展していない地域を発展させるというのはブラジル等でもありましたが、それなりに有効な手段なのだろうなと思いました。
・農村と都市の間の格差が大きいというのは発展途上の国家ではありがちですが、その中でNGOがマイクロファイナンス等で支援してそれなりに成果を出しているというのは、外部の力の重要性を感じました。
・孤児や貧困層の子供が寺で僧侶に教わるというのは仏教国らしいなと思いました。
・全体的な教育レベルがかなり低く、高等教育も暗記中心というのは管理のしやすさからかもしれませんが、それだけにそこから脱却することは大変だろうなと思いました。
Ⅳ 文化
・僧侶の数と、その僧侶が守る戒律の厳格さが他の仏教国よりもすごいなと思いました。
それだけ仏教が浸透している中で精霊信仰等も存在して同時に振興されているのは、フィリピンがキリスト教国ながら独自の伝説を作っていることや、インドネシアがイスラム教国ながら民間信仰を取り入れていることと共通するところがあるなと思いました。
・ミャンマーの民族衣装ロンヂーとエンヂーが若者にも浸透してファッション化もされるというのはなかなか柔軟だなと思いました。
・コラムに書かれている仏教国の制度や慣習的な厳格さとそれをすり抜けるような不倫の文化が当たり前のようにあるという話は意外で面白かったです。
Ⅴ 政治
・何となく英連邦に所属していた国家は法制度面では厳格に英国化されているイメージがありましたが、ミャンマーでは慣習法がかなり大きい割合を占めているというので意外でした。
・国内避難民と難民の問題は、軍政時代や民族紛争等の経緯から当然ある話だろうなと思いましたが、国内避難民だけでも2012年10月時点で40万人もいるなど、かなり大規模だなと思いました。
・タイとの国境でタイ側に難民キャンプがかなりの密度で張り巡らされているのは、人権国家としてのレベルがタイとミャンマーでは大きな格差があることの証拠かなと思いました。
Ⅵ 経済
・植民地化や軍事独裁等を経てきたミャンマーで経済が安定しないというは当然のことでしょうが、今なお厳しそうだなと思いました。
・農産物と資源等がメインになっている経済で、格差も大きく中間層が少ない状況ではなかなか発展が進まないだろうなと思いました。