【砂糖の世界史】
川北 稔 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4005002765/
○この本を一言で表すと?
砂糖と砂糖を取り巻くモノを軸に描かれた世界史の本
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・砂糖が世界中のどの地、どの文化にあっても受け入れられる「世界商品」であり、「近代世界システム」に乗って世界単位の商品になったことが、砂糖を使用される茶・コーヒー・チョコレートなどの歴史とともに描かれていました。
第1章 ヨーロッパの砂糖はどこからきたのか
・ヨーロッパ人の砂糖との出会いは紀元前4世紀にまで遡れること、十字軍遠征を通して蜂蜜以外の甘味として取り入られ始めたこと、大航海時代に砂糖きびを栽培できる環境を求めてアメリカ大陸等に植えられていったこと、砂糖きびを植えるとすぐに地力が弱くなるのですぐに新たな栽培地が必要になることなどが書かれていました。
第2章 カリブ海と砂糖
・カリブ海に浮かぶ島々では砂糖きび生産がかなりさかんになり、砂糖の生産には重労働が必要なために黒人奴隷などの労働力が投入されていたことが書かれていました。
・生産性を上げるために当時の「聖なる月曜日」という週末に飲んだくれて月曜日はサボる習慣も変える必要が出たり、ものごとが変わるきっかけとなる社会的な要請という観点から見ても興味深いなと思いました。
・三角貿易でアフリカから連れ出された黒人奴隷の内3,4割が売却先に到着するまでに亡くなっていたことなど、扱いの酷さは人間ではなく商品としてのコストパフォーマンスしか見られなかったためかなと思いました。
第3章 砂糖と茶の遭遇
・砂糖は当初は薬として扱われ、富の象徴として大量に使用することが行われ、イギリスへの茶の導入とともに茶を甘くするための必需品となっていったことが書かれていました。
・世界が一つに繋がれ、労働力や商品が海を渡って生産国、消費国に移動してイギリスに集約される「近代世界システム」のスケールはすごいなと思いました。
第4章 コーヒー・ハウスが育んだ近代文化
・章の扉絵になっている「コーヒー・ハウスのばか騒ぎ」はよく見る絵ですが、コーヒーをぶっかけられている男のリアクションが何度見ても面白いなと思いました。
・あっという間に数千件ものコーヒー・ハウスができながら、コーヒーの供給が弱かったイギリスでは大体として茶が流行したことは、イギリスの「近代世界システム」にコーヒーが入らなかっただけでその後の文化も変わるということに繋がっていて、何かの要素の時期が少しずれていただけでも現在に何が流行していたかが変わっていたのかなと思えました。
第5章 茶・コーヒー・チョコレート
・茶・コーヒー・チョコレートが砂糖と結びついて流行したこと、イギリスで流行した茶はアメリカでも流行したものの国家間の関係からアメリカではコーヒーが流行することになったこと、チョコレートも茶やコーヒーと同様に砂糖と一緒に広まることで流行したことが書かれていました。
砂糖を中心軸として、砂糖単体ではなく茶・コーヒー・チョコレートと結びついて広まるというのは興味深いあり方だなと思いました。
第6章 「砂糖のあるところに、奴隷あり」
・砂糖の生産が重労働をさせられる奴隷がなければなりたたないものであり、砂糖の生産地にはまず奴隷がいた、という当時の状況が書かれていました。
第7章 イギリス風の朝食と「お茶の休み」
・イギリスでは産業革命以降、それまでの労働者の「聖月曜日」のような気質を改善する必要があり、酒よりも砂糖と茶で朝から目を覚ますという習慣に置き換わったこと、その茶も砂糖もイギリス本国では生産されていないのに低賃金の労働者にまで行き渡る「近代世界システム」のすごみが書かれていました。
第8章 奴隷と砂糖をめぐる政治
・イギリスで奴隷廃止が決定されてからも植民地ではしばらく奴隷制度が残り、かなり遅れて奴隷が廃止されたことが砂糖の生産に絡めて書かれていました。
第9章 砂糖きびの旅の終わり
・熱帯、亜熱帯でしか生産できない砂糖きびに対して、温帯地方でも生産できる砂糖大根(ビート)が19世紀に生産され始め、一時期は砂糖きびの生産量を抜いたこと、コストパフォーマンス面からみると結局砂糖きびの方が優位にあり、砂糖きびが巻き返したことが書かれていました。