【ロスチャイルド家】レポート

【ロスチャイルド家】
横山 三四郎 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4061492527/

○この本を一言で表すと?

 ロスチャイルド家の初代から現代に至るまでの伝記の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・漠然と知っていたロスチャイルド家について、どのような来歴で、どのように分家してどのように盛衰を迎えていったのかということを一通り知ることができてよかったです。
ロスチャイルド家が世界に与えた影響が過大に書かれているので若干割り引いて考える必要があると思いますが、これだけの家系がフランス革命以前から様々な危機を乗り越えて現代まで栄えているというのはすごい話だなと思いました。
日本でもロスチャイルド家以前から現代まで残っている名家はあると思いますが、桁が違うなと思いました。

第一章 歴史を彩る

・豪邸建築、第一級ワインのシャトー保有、スエズ運河買収、ツタンカーメン発掘、名馬育成等のロスチャイルド家の成し遂げてきたトピックがざっと書かれていました。
一族の変わり者も含めて、資産を有するだけでなく趣味の世界でも成功するのは粋な生き方だなと思いました。
初代のマイヤーが分家間の協力体制を半ば強制する仕組みを家訓として組み込んだのは、その後の展開を読んでいたかどうかはともかくとして先を見据えていたのだなと思いました。

第二章 金融王国への階段

・ロスチャイルド家初代のマイヤーが、ユダヤ人がまともな姓を許されないような時代に古銭収集からフランクフルトのヴィルヘルム公の信頼を得て確固たる立場を築いたというのはすごいなと思いました。
そのヴィルヘルム公が領内の若者を集めてドイツ人傭兵としてイギリスに貸し、独立戦争時も貸していたというのは興味深いなと思いました。

・イギリスに三男のネイサンを送り込み、二国間の手形の割引を行い、手堅く儲かる国際貿易も行っていたというのはすごい手腕だなと思いました。

・ウィーン会議をまとめたメッテルニヒに大金を貸し付け、貴族としての地位を得たこと、五人の息子がフランクフルト、ロンドン、パリ、ウィーン、ナポリに散らばって各地で地位を築いたことなど、築いた足場を元にさらに飛躍していくのは手堅いなと思いました。

第三章 不死鳥の世界財閥

・国家概念が曖昧な中で多国間貿易を繰り広げて成功していたところから、国民国家として国家同士が対立する時代になり、それまでのやり方が通用しなくなってから、金融から産業にシフトしてさらに飛躍していったのはすごいなと思いました。

・五本の矢の中で保守的な家が潰れてしまっていますが、その後も残ったロンドン・パリでまた分かれて旧いやり方と新しいやり方をする家があり、どちらかは成功して残っていくといのは、どちらが残っても「家」が続いていくという日本の武家のようなやり方でもある気がしました。

・デビアスやロイヤル・ダッチ・シェル等に古くからロスチャイルド家が関わり、現代に至るまで成功しているというのはすごいなと思いました。

・フランスでミッテラン政権に傘下企業を国有化されてもまた返り咲いたり、この本では強運の下にあると書かれていますが、その強運を掴む力も一族のどの時代でも有しているというのはずば抜けているなと思いました。

第四章 受難のパワー

・ユダヤ人が弾圧されていたナチス・ドイツの時代でもフランスの資産をナチスが手を出せないような状況に置いたりと最善の手を打ちながら一度手を引いて、また潮目が変わってから返り咲いているのはすさまじいなと思いました。
ユダヤ人全体の受難に対してもある程度距離を置いたりする、その距離感覚も優れているなと思いました。

第五章 日本とロスチャイルド家

・日露戦争前のイギリスでも国債の売り出しでロスチャイルド家が日本に協力していたこと、ロシアがユダヤ人を弾圧していたことにその要因があることなど、歴史的な因果が面白いなと思いました。

○つっこみどころ

・著者がロスチャイルド家のことを好き過ぎるのか、かなり偏った見方で書かれているように思いました。事実と著者の想像が入り混じっていて、事実を読み取りづらい文章でした。

・最後に家系図が付いていましたが、それよりも年表を付ける方が親切だなと思いました。

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