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【歴史入門】レポート

【歴史入門】
フェルナン・ブローデル (著), 金塚 貞文 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4122052319/

○この本を一言で表すと?

 中世・近代の西欧経済の歴史の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・歴史的事象の時間性に注目して「長期持続(ほとんど動かない構造)」「中期持続(一定の周期を示す複合状況)」「短期持続(一回限りの歴史的事実)」の三つの段階に区分し、通常の歴史では「短期持続」を注目するのに対し、「短期持続」にほとんど触れず「中期持続」「長期持続」に注目するアプローチは面白いなと思いました。

第一章 物質生活と経済生活の再考

・「物質生活」で14~19世紀の人口動態や病気等に着目しているのは調査が大変な割にリターンが少なそうなイメージですが、面白いなと思いました。
当時の解剖結果の寄生虫の状況などまで調べているのはすごいなと思いました。

・「経済生活」で市(いち)と大市の開催状況に着目して、各土地の民衆が使用価値だけに価値を置いているか、交換価値にも価値を置いているかを探ったりしているのは面白いなと思いました。

第二章 市場経済と資本主義

・「資本主義」と「市場経済」を分けて考えたい、相互補完関係にはあるがイコールではない、社会主義でも市場経済はあり得る、と言ったことが書いていました。
鄧小平の開放政策で「社会主義市場経済を目指す!」と宣言するより前に書かれているので、予見したのか、それとも鄧小平もこの本を読んでいたのかなと思いました。

・市場経済で社会が階層化されていったこと、資本主義は階層を必要とするが、階層は非資本主義でも存在することなどが述べられていました。

第三章 世界時間

・「世界経済」と「世界=経済」は全く違うもので、前者は世界全体の市場を指し、後者はある一部の区分された経済を指していて、ブローデル氏としては後者が重要であるとのことでした。

・各「世界=経済」は中心地帯、中間地帯、周辺地帯にわかれ、中心地帯がその時間・空間で中核をなし、中間地帯は中心地帯の周縁部となり、周辺地帯は中心地帯に従属する搾取される地域、という区分はなかなか面白いなと思いました。

・西欧の「世界=経済」が、1380年代にヴェネチアで成立し、ベルギーのアントワープに移り、またヴェネチアに戻り、ジェノヴァに移り、1550年代にオランダのアムステルダムに移り、1780年から1815年にかけてロンドンに移り、1929年頃にニューヨークに移った、というのはなるほどなと思いました。
最後のニューヨークは大恐慌の時期に移ったというのが不思議に思いましたが、その辺りの説明は書かれていませんでした。

・産業革命は「革命」とついているが原義どおり急激に変化したのではなく、徐々に発展していった、というのは納得です。
さらに技術革命だけでは発展に繋がらず、需要の受け皿があってようやく発展につながるという考察が書かれていてなるほどなと思いました。
紀元前のエジプトで蒸気の力について知られていたが遊びにしか使われなかったこと、古代ローマの技術(風車や水車など)が一度廃れ、12、3世紀になって再び使われるようになったこと、14世紀の中国でコークス炉の技術が存在したことなども、需要の受け皿を作れなかったために廃れたと考えるといろいろ納得がいきました。

○つっこみどころ

・訳者が「歴史入門」と名付けたらしいですが、原題の「資本主義の活力」の方がイメージ通りだと思います。
大著の「物質文明・経済・資本主義」を要約した本ですし、内容も14~19世紀の西欧の経済の話がメインですし、歴史の入門とはとても思い難いです。
裏表紙に「アナール派歴史学の入門書」と書いていたので、そういう意味だとは思いますが。

・分からない用語(地名・人名等)がかなり多く、全部で160ある訳注を都度確認しないといけないのが大変でした。