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【世界史 上】レポート

【世界史 上】
ウィリアム・H. マクニール (著), 増田 義郎 (翻訳), 佐々木 昭夫 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4122049660/

第Ⅰ部 ユーラシア大文明の誕生とその成立 紀元前500年まで

・芸術作品や建築物から技術の伝達を見るという視点はなかなか面白いなと思いました。
ただ、結論ありきで見ると視点が歪みそうなリスクもあると思いました。(P.7~28)

1章 はじまり

・農業や牧畜が文明にとって重要な要素という視点は「銃・病原菌・鉄」と同じ視点だなと思いました。

2章 文明のひろがり 紀元前1700年までの第一次の様相

・家畜や犂を利用した農法の開発が生活を豊かにし、文明の拡大を促したというのは納得できます。

・エジプト文明がメソポタミア文明から技術等が伝達されて興ったというのは地理的にみてもアリだなと思いました。
「銃・病原菌・鉄」でもナイル川流域が文明草創の地域としては疑問符を付してあったのを思い出しました。
インダス文明がメソポタミア文明から引き継いだ部分もあるという記述は、独自の文明同士交流があっただけではないかなと思いました。

・「天水地帯」という名称が解説もなく出てきました。
文脈から河川の流域外を指していると思いましたが、ググってみると、天水は雨水の事で、雨水依存の地域の事だそうです。

3章 中東のコスモポリタニズム 紀元前1700 ― 500年

・戦車や騎馬技術が文明を築いた民族ではなく、侵略する側の蛮族が開発し、圧倒的な優位を築いたのは面白いなと思いました。
文明を築いた民族が戦争に関する技術を構築できなかったのは、他民族を侵略する動機づけをもたなかったのが理由かなと思いました。
「キングダム」というマンガで中国の戦国時代の7国のうち魏の国が戦車を使った戦術で秦を攻めるシーンがあったり、宮城谷昌光氏の「楽毅」という小説で趙の武霊王が胡人を真似て胡服(ズボン)を着て騎乗しながら弓を射る技術を導入して他国に対して優位を占めた話があったりして、戦争技術が伝達されていることが書かれていました。

・表音文字であるアルファベットの発明が文字を一部の人から大衆に開放したというのは画期的なことだったと思います。
表音文字がなかった中国では支配者の権力が盤石であったことは支配者側と大衆側の格差が文字によってももたらされていたからかなと思いました。

・一神教が弱小民族であるユダヤ人から生まれ、そこから広がった宗教が今の世界の信仰の大多数を占めているというのはすごいなと思いました。

4章 インド文明の形成 紀元前500年まで

・インドのカースト制度(この言い方はイギリスで便宜上定められたもので実際は「ヴァルナ」と「ジャーティー」の組み合わせ)が征服者側にとって都合のいい仕組みだったということには納得がいきました。
経済成長期の日本で「いい大学に行けばいい人生」という風潮ができ、画一的にその方向に向かっていたことと少し似ているなと思いました。
また、仏教がごく一部の人の救済にしかならず、インドで主要な宗教となれなかったのも分かるような気がします。
日本でも最初は一部の人しか会得できない密教のみで浄土宗や浄土真宗などが出てやっと民衆のものとなったのも伝達のしやすさからだったと思います。

5章 ギリシャ文明の形成 紀元前500年まで

・ギリシャで葡萄酒やオリーヴ油を生産していれば穀物を輸入できる経済が成り立っていたのはすごいなと思いました。

・密集軍団(ファランクス)が集団心理をうまく使って臆病な者が許されない風潮をつくりあげたのはすごく機能的だなと思いました。

6章 中国文化の形成 紀元前500年まで

・東周が紀元前256年まで続いていたというのは意外でした。
春秋時代が終わって戦国時代になった時(紀元前403年)に周の後継である国とそうでない国があるとはいえ、周自体の存在がなくなったものと考えていました。

7章 蛮族の世界の変化 紀元前1700 ― 500年

・南ロシアのスキタイ人の話は「物語 ウクライナの歴史」でも出てきました。
出土品としてかなり精巧な動物などを写実的に表した金の首飾りなどが出てきているみたいです。

第Ⅱ部 諸文明間の平衡状態 紀元前500 ― 後1500年

8章 ギリシャ文明の開花 紀元前500 ― 336年

・アテナイ(アテネ)やスパルタのような領地で見れば小さな都市国家が強力な海軍や陸軍を持ち、ペルシャに抵抗できたのはすごいなと思いました。

9章 ヘレニズム文明の伸展 紀元前500 ― 後200年

・なぜ「ギリシャ文化」じゃなくて「ヘレニズム文化」と呼ぶのか、今まで自分の中で謎でしたが、「Greek」という言葉はローマ人から来ていて当時のギリシャ人は自分たちのことを「Hellenes」と呼んでいたから、と書かれてあって明確に理解できました。

・「ヒストリエ」というマンガでマケドニアのフィリッポス王が学問の奨励(アリストテレス招聘など)や集団戦法の徹底(武器の長さだけでなく人間の体格や能力まで揃えるなど)を進めている様子が描かれていました。
アレクサンドロスが若くしてあれだけの遠征で成功を収めることができたのも前王が地ならしをしていたことが大きな要因になっていると思います。
他にもマケドニアが各地を征服したからこそローマの興隆が容易であったでしょうし、カエサルが独裁体制を築いたからこそアウグストゥスが支配権を確立することが容易になったのだと思います。

・インペラトール(軍隊をおこして戦争を遂行する法的権利をもった将軍)がエンペラー(皇帝)の語源になっていることは、日本の将軍が皇帝・・・ではないですが大君として君臨したことと似ていて面白いなと思いました。

10章 アジア 紀元前500 ― 後200年

・P.281の「不正と困苦は文明生活と切り離せないから、このような信仰(キリスト教、大乗仏教、ヒンズー教)が現れたおかげで文明は、それなくしては考えられないほど、長い生命を容易に保つことができたのである。」という記述はなかなか深いなと思いました。

11章 インド文明の繁栄と拡大 100 ― 600年

・「アラビア式」と呼ばれる十進法計算がインドで生まれていたというのは面白いなと思いました。
インドとアラビア世界のやりとりが頻繁だった当時を想起できるエピソードでもあるなと思いました。

・インド文化の影響力が東南アジア、東アジア、日本まで大きく影響し、ヘレニズム世界にもインド哲学が伝わっていたことから、ヘレニズム文化よりも影響が大きかったという著者の説は斬新だなと思いました。

12章 蛮族の侵入と文明世界の反応 200 ― 600年

・柔然に追われたフン族がヨーロッパを侵略し、フン族が壊滅したあとはその配下とされたゲルマン民族がヨーロッパに散らばったり、唐によって強力に統一された中国が突厥に対する力を強めたために突厥が西に勢力を伸ばしたり、いろいろな因果関係があって面白いなと思いました。
また侵略に適性のある草原民族が維持することが苦手というのも分かる気がします。

13章 イスラムの勃興

・イスラムによるアラブの興隆がすさまじいなと思いました。
ただ、勢いがあっただけに支配体制をゆっくりと構築できなかったのか、マホメット、アブー・バクル、ウマルに続くカリフのリーダーシップが弱くなって非アラブ主体のアッバース朝に取って代わられたのも早かったなと思いました。

14章 中国、インド、ヨーロッパ 600 ― 1000年

・唐の時代から始まった科挙制度についてかなり大きく評価している点が面白いなと思いました。
ただ、実態としては富裕な家の者が優先されることが多いなど、ここまで評価されるような制度ではなかったと聞いたことがあります。

・ヨーロッパでゲルマン人、スラブ人、マジャール人、ブルガル人、アヴァール人などが侵入してきて一定の領地を確保した後にキリスト教をそれに付随する技術や文化の導入を見越して導入しているのは面白いなと思いました。

15章 トルコとモンゴルの征服による衝撃 100 ― 500年

・モンゴルとトルコが同じように遊牧民族の侵略主体だったにもかかわらず、モンゴルの方は侵略した土地に文化的なものをほとんど残さず、トルコは残しているこの対比は面白いなと思いました。
モンゴルの方がトルコより侵略に特化しすぎて維持する力に著しく欠けていたのかなと思いました。

・オスマン帝国の前にセルジューク朝に関する記述がないところを不思議に思いました。
十字軍と戦ったりモンゴルに支配されたりしている記述がセルジューク朝であることはわかるのですが、固有名詞も出ない扱いはかわいそうだなと思いました。

・スーフィーというとひたすら道場で回っているイメージしかなかったのですが、ヒンズー教の神秘主義的なところを導入して神との合一を目指す修行をすることでイスラム教を再興隆させるような、イスラム教にとって重要な運動だったというのは意外でした。

16章 中世ヨーロッパと日本 1000 ― 500年

・1000―1500年の北西ヨーロッパを「新文明」としているところが面白いなと思いました。
確かにそれまで開発の中心から外れていたので新しい文明として活気があったのも理解できる気がします。
沿岸の海上輸送を利用できる点で日本と共通点がある、というのも面白い視点だなと思いました。

・日本の神道を「女神信仰」と捉えているのはなかなか面白いなと思いました。
古事記や日本書紀の神話の構成を一神教の視点で見るとトップを取り上げてそうなるのかなと、西洋から見た視点を知ることができたような気がしました。
日本の都市生活の基盤を海賊行為とする意見はなかなか無理やり感があるなと思いました。

17章 文明社会の外縁部 1500年まで

・東南アジア、アフリカ、大航海時代前のアメリカの記述がごく少ないのは世界史の通史としては仕方がないのかなと思いました。

<その他思ったこと>

・文明や技術、農耕や家畜などの取り扱いについて「銃・病原菌・鉄」に似ているなと思いましたが、「銃・病原菌・鉄」に比べて検証内容が浅いなと思いました。
ただ、文明や技術等について書くことが主目的の本ではないので仕方がないのかなと思いました。

・日本の世界史の教科書より文明について取り扱う箇所が長いこと、取り扱う箇所のメリハリがハッキリしていることなどが違うなと思いました。

・本の帯に「東大・早稲田・慶応で1位」と大きく書かれている横に小さく「歴史部門 2011年4月~9月 大学生協調べ」と書かれているのは宣伝としてうまいと思いますが、あざといなとも思いました。