• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【無縁社会】レポート

【無縁社会】
NHKスペシャル取材班 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4167838052/

○この本を一言で表すと?

 今の日本でよく聞く「無縁社会」の実態を追ったドキュメントの本

○考えた点

・この本を購入したのは、「無縁社会」というよく聞くけれどあまり興味をもってこなかった言葉で、「こういった方向の本も読んでみようか」という気軽な動機でしたが、自分に思い切り関係がある内容で、例え家族がいてもこの「無縁社会」からは無縁ではいられないという内容でした。

第一章 追跡「行旅死亡人」

・年間三万二千人の無縁死という数字に驚きました。
年間の自殺者数と同じかそれ以上の無縁死があるということはよく取り上げられる自殺者数と比べて一般にあまり知られていないような気がします。
「行旅死亡人」という用語を初めて知りました。
警察でも自治体でも身元が掴めなかった無縁死のことをいうそうですが、この行旅死亡人も年間千人近くになるそうです。

・NHKの取材班が行旅死亡人の一人を徹底的に追跡し、身元を探り当てたところ、20年間無遅刻無欠勤で給食センターに勤め続けたことや、その前は秋田で建具職人をやっていたこと、秋田で他人の連帯保証人になって家族と離縁することになったことなど、無縁死したような一人の人の歴史を辿っただけでも深い歴史があり、真っ当にやってきた時期があり何か人生の歯車が狂えばこのような終わり方もあるのだと考えさせられました。

・コラムの「直葬」の話は今の時代らしい話だなと思いました。
通夜も告別式もせずに火葬だけで済ませることを直葬というそうですが、費用が十万円台からで、葬儀屋の仕事の三割ほどが直葬になっているそうです。

第二章 薄れる家族の絆

・家族が遺体の引き取り拒否をするケースが増えているという話で、特に十年以上ほとんど会っていないような家族の遺骨は引き取り拒否されてゴミ扱いになるそうです。
それを可哀そうに思って引き取っている富山県の高岡大法寺の住職の話は特に仏教徒でなくても情け深い話だなと思いました。

・「特殊清掃業」という自治体の依頼で家族に代わって遺品を整理する専門業者が増えているそうです。
小さな業者でも全国対応して繁盛しているとか。対応を淡々とせざるを得ない業者の描写が印象的でした。

・家族から遺体の引き取りを拒否され、さらに大学病院で学生が実習で使う「献体」として引き渡される様子もなかなか印象的でした。

第三章 単身化の時代

・高齢になっても独り身で団地で周りとの交流も少なく暮らしている人が多く住む、東京都葛飾区の高砂団地の話は自分も人ごとではなく、そのあり方が印象的でした。
高額商品のセールスに押し売りされた話や、自分ではない周りの住人の孤独死に怯える話も生々しい話だなと思いました。

・50歳になっても一度も結婚したことのない人の割合を「生涯未婚率」というそうですが、2005年で16%、2030年には30%になる見込みだそうです。

・コラムの「呼び寄せ高齢者」の話もある意味で身近な話だと思いました。
家族に呼ばれて都会に移り住んだ高齢者の孤独感も印象的でしたが、都会の高齢者率が20%を超えて「呼び寄せ高齢者」という言葉自体も陳腐化したということも印象的でした。

第四章 社縁が切れた後に

・家族がわりのNPOとして、身元保証・怪我や病気の面倒・亡くなった時の遺品整理や葬儀の手配を行っている話は現代でかなり必要とされているのだろうなと思いました。
そのNPOに登録した定年退職した人物を取材した内容が、高度成長期を過ごしてきた団塊の世代の姿を現していてなかなか印象的でした。
三十代で仕事に集中して妻子が家を出て行き、40代になって鬱になり、子会社出向になって定年退職し、社会との縁が切れる、思い出は会社時代に行ったところだけというありがちですが悲しい人生だなと思いました。

第五章 “おひとりさま”の女性たち

・「NPO法人 きずなの会」という身寄りのない人が生前に契約して葬儀などを担当してもらう団体の会員に、未婚の女性の登録が多いという話、その理由として女性の方が人生設計をしっかりしているからという話はなるほどなと思いました。

・取材された女性の人生で、一家の大黒柱として家族の分も働き続け、自分へのご褒美として大きな指輪を買い、動けなくなった時のために自分で何とかするための食糧や薬の備蓄をして一人で生き続けている話はその苦労が思われるなと思いました。

・コラムの結縁のない人同士が入る「共同墓」のニーズがどんどん高まっている話、その理由として家族には迷惑をかけたくないという思いがあることなども印象的でした。

第六章 若い世代に広がる“無縁死”の恐怖

・NHKスペシャルで「無縁社会」が放映された後、ツイッターで三十代、四十代の人が数多く「人ごとではない」とつぶやいていたそうです。
その年代に無縁感が広がっているという話はいろいろ考えさせられました。

・取材を受けた三十代独身の女性の話で、非正規雇用で収入が不安定だから未婚でいざるをえない話や、人生の折り返し地点にいることを思い返している話なども印象的でした。

・三十代の男性の「現実を直視しすぎて眠れない」という話、ネット上につながりを求めている話、ほとんどひとりで食事、人と会わない生活などもなかなか印象的でした。

・コラムで働き盛りのひきこもりが増えているという話が書かれていて、まさか自分がそうなるとは思っていなかった人たち、なかなか社会復帰ができない状況などは現代の状況が描写されているなと思いました。

第七章 絆を取り戻すために

・副題が「二度の人生を生きた男」で、自分の本名を名乗らずに住んでいた近所の保育園と関わりを持ち、その園長一家の家族のような存在として生きたこと、しかし身元が不明であることから「行旅死亡人」として無縁仏扱いになったこと、NHK取材班が追跡したその男性の過去は、妻と離縁して「自分じゃない人間になりたい」と思って京都から東京に移ったというものだったことなど、一度無縁になってからまた新しい家族ができ、そして最後は無縁仏として共同墓地に眠るというその人生にはいろいろ考えさせられました。

第八章 消えた老人たち

・高齢者がふらっとどこかへ一人でいなくなってしまう話、年金をもらうために父親の遺体と暮らし続けた息子の話など、現代にありそうな状況が印象的でした。
特に、父親の遺体と暮らし続けた息子は、住宅ローンが残っているという生活保護が受けられない条件があって、そうせざるを得なかったという理由があり、国の福祉制度の隙間にいる人たちの大変さが出ている例だなと思いました。

・親の年金に頼らざるを得ない他の人たちの話も、その抜け出せない状況や、親が亡くなって年金がもらえなくなることへの恐怖などはなかなか生々しい話だと思いました。

第九章 無縁社会から結縁社会へ

・社会とのつながりを失って死を選ぶ人が多いこと、その中で新しいつながりを作ろうとする「NPO白浜レスキューネットワーク」の話はなかなか印象的でした。
自殺の名所の近くでパトロールをし、思いとどまらせる活動や、つながりを作る活動を精力的に行っている人たちの志の高さはすごいなと思いました。
こういったことを実践に移そうとすることは大きなエネルギーが必要で、つながりを必要とする人たちの多さに対してそれを繋げることができるひとは少ないのだろうなという意味で、悲観的な感想も持ちました。