【饗宴】
プラトーン (著), 森 進一 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4102027025/
○この本を一言で表すと?
愛の神エロースに対する賛美の話とソクラテスによるオチの本
○考えたこと
・ギリシャ神話などでちょいちょい出てくるエロースに焦点を当てて話しているのは面白いなと思いました。ギリシャ神話やオウィディウスの「変身物語」の前提知識があったので、それらを読んでもエロースはチョイ役でしか出ていないなと思っていましたが、この饗宴に登場する人物もそう思っていて、創作や他の概念を広げて話をつくり上げているのは面白いなと思いました。
・最初のパイドロスの話で少年愛によるカップルを一緒に戦争に連れて行くなら、お互いに良いところを見せようとそれぞれ勇猛果敢に戦うだろうという例えは、別のケースでも使えそうだと思いました。互いに能力を発揮しようというインセンティブがある、組織する者としてはうまい方法だと思います。国家のために戦争に行く兵士のモチベーションとして家族を守るという大義名分を与えることに似ているようにも思いますが、戦争に参加する動機だけでなく、戦争中も継続的に働き続けるインセンティブとして優れているなと思いました。
・ソクラテスがアガトーンを論破する議論が論理的で面白いなと思いました。「エロースは美しいものを対象に欲している」「何かを欲する者はそれに欠けている」「エロースは美しくない」この三段論法は演繹法の話で「大前提⇒小前提⇒結論」と出てきた流れそのもので、その三段論法の発生段階での用法が知れてよかったです。
・異性愛、同性愛の存在の前提を、人間が元々は顔2つ、手が4つ、足が4つで男型、女型、両性具有型の3種のタイプがいる生き物だったとして、そこから半分に分けられ、女好きの男、男好きの女、そうでない男女、同性愛の存在に絡めているのは面白い考え方だと思いました。
○参考にならなかった所、またはつっこみどころ
・少年愛が至上の愛とされているところは共感しづらいところだなと思いました。
・ソクラテスの話で「愛と呼ばれる行為は、美しいものにおいて、子を産むこと」というように「よき行為」が「分娩」であること、と書かれていてその因果関係がわからず論理が飛躍した印象を受けました。
【プラトン『饗宴』 2013年7月 (100分 de 名著)】
納富 信留 (その他)
https://www.amazon.co.jp/dp/414223028X/
○この本を一言で表すと?
「饗宴」を細かく分析するのではなく意義や背景を説明することで分かりやすく解説した本
○考えたこと
・「饗宴」を読んでも分かりづらかったことが少し腑に落ちる感じがするような、読みやすい本でした。
・ギリシャ語で愛を示す言葉の説明が分かりやすかったです。「エロース(性愛)」「フィリア(友愛)」「アガペー(献身愛)」。通常「ストルゲー(家族愛)」を含めて四つの愛と言われるような気がしますが、この本ではフィリアに含めていました。プラトンはこのフィリアに焦点を当てて考えているとのことでした。
・美を求める段階として、「肉体の美⇒魂の美⇒知識の美⇒美そのもの」と登っていく過程が書かれていたというのは「饗宴」を読んでも読み取れず、そうだったのかと思いました。
・「対話」という形を尊重していたプラトンが自身が設立したアカメデイアでも自分の意見を批判する者を遠ざけずに対話していたというのは、一貫していてすごいなと思いました。