【人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!】
ダニエル・ピンク (著), 神田 昌典 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062171457/
○この本をひと言でまとめると
セールスの定義を「物を売り込む」から「売らない売込み」まで広げて考え直す本
○考えたこと
第1章 現代人はみなセールスに関わっている
・アメリカやEUではセールスに関わる者が10人に1人以上の割合で、今後発展してくる中進国や新興国ではさらに増えていくであろう事実と、「売らない売込み」はセールス以外の業種でも必要だと考えられていることで、売り込むセールスに直接関わらない者も定義を広げればセールスに関わっているということが書かれていました。
第2章 アントレプレナーシップ、弾力性、教育・医療
・起業すること、環境に適応すること、教育・医療に関わることもセールスであると関連づけていました。
第3章 “買主は気をつけよ”から“売主は気をつけよ”へ
・売り主側の信用や顧客の受け入れ方がそのまま業績の大きな差に繋がることが書かれていました。
第4章 同調
・NLP(神経言語プログラミング)の本に出てきたようなミラーリングの重要性について書かれていました。内向的でも外交的でも極端はダメで両向的がいいということを統計データで示しているのは新鮮だなと思いました。
第5章 浮揚力
・自分のモチベーションを向上させる「浮揚力」を「疑問文のセルフトーク」「ポジティビティ比」「説明スタイル」で人を動かそうとする前・最中・後に対応させているのは面白いなと思いました。
・ポジティブ過ぎても逆効果(最適比率はポジティブ:ネガティブ=3:1)というのも興味深かったですが、終わった後に自分にどう説明するかによって浮揚力が大きく異なるということが一番よく納得できました。
第6章 明確性
・相手がイメージをより強くできる「明確性」を考慮するというのは確かに重要だなと思いました。それが相手を動かす力になるというのも納得です。
・フレームの事例はある意味で、相手の考えの基点を打ち込む意味でセールスっぽいなと思いました。
事例の娘に対する質問で「1が『これっぽっちも勉強するつもりはない』で、10が『勉強する気満々』だとしたら、1から10の間の数字で表すと、どのくらい勉強つもりがある?」と聞いて、娘が答えたら「どうしてもっと低い数字を選ばなかったの?」と質問することで勉強する理由を考えさせるというのは面白いなと思いました。
第7章 ピッチ
・短い時間でアピールするために内容を省略するだけでなく、韻を踏んだり流れを考えたりすること、フレーズにしてまず興味を持たせることの重要だというのは確かにそうだなと思いました。
第8章 即興
・「即興において、相手に対しての反論を含める余裕はない」というのは含蓄に富んでいるなと思いました。
まず相手の話を受け入れてから自分の話を加える「はい、それで」は、例外はありそうですが有用だと思いました。
第9章 奉仕
・人間味を持たせること、目的を持たせることが、それがちょっとしたものでも大きな効果を出すことが放射線技師や衛生習慣定着などで検証されていうというのは人間の感情やモチベーションと行動の関わりは無意識レベルでも大きいのだなと思いました。
○つっこみどころ
・著者が主張したいことに偏って事例が取り上げられ、極端な世界観で書かれているなと思いました。
特にその傾向が強い第1部(第1章~第3章)はあまり得られることがありませんでした。
・いかにも「テキスト翻訳を使って翻訳した」と見受けられる雑な翻訳が散見されました。句点が多すぎるのも読み辛い気がしました。
翻訳者が翻訳を本業としていない人なので仕方がないのかもしれませんが、翻訳者だけでなく編集者も含めて文章チェックをしていないのではないかと思いました。
・内容は良かったですが、邦題がいかがわし過ぎてビミョーな本という先入観を持って読み始めました。
売れそうな題名をつけないと売れないというマーケティングの努力はわかりますが、やり過ぎな気もします。
・邦題はデール・カーネギーの「人を動かす」を検索したときに併せて表示させて、クロスセリングを狙っているのかなと思いました。
・最後の訳者解説は必要ないのではと思いました。