【評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている】
岡田 斗司夫 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478015880/
○この本を一言で表すと?
右脳系の人が今後の社会について書いた本
○よかった点
・ところどころでそれまでの意見をまとめてあって親切だなと思いました。
第1章 貨幣経済社会の終焉
・技術の進歩が社会常識を変えること、そしてそのことについてなかなか気付けないために未来予測が大きく外れるという話はなるほどと思いました。
・堺屋太一氏の「やさしい情知の法則」はクリス・アンダーソン氏の「FREE」で述べられている法則と同じだなと思いました。
「FREE」が出版される20年以上前に提唱していたというその知見はすごいなと思いました。
第2章 パラダイムシフトの時代
・農業以前、古代、中世、近代、ネット中世のそれぞれの時代の移り変わりごとにパラダイムがシフトし、しかも「引き返せない楔(アルビン・トフラーがいったん変わってしまうと元に戻れない社会変化を指して言った言葉)」が発生するという話は面白いなと思いました。
・自分を豊かにしたい人たちが顧客になる「生涯教育産業」のアマチュア活動やカルチャースクールが流行っている理由として、それらの人は「唯一無二の自分」と「一生、勉強」の二つのニーズからこれらを求めているという意見は鋭い洞察だなと思いました。
第3章 評価経済社会とは何か?
・「影響」を「多くの人々の価値観を、ある一定方向へ向かわせようとすること」と広く定義してメディアや産業をこの尺度で考えているのは面白いなと思いました。
・ネット社会になってこの「影響」がマスメディア以外にも開放されたこと、「評価資本」が高い企業・個人の影響力が高くなるという話と、この本で伝えたい評価経済社会を繋げているのは少し強引だと思いますがなるほどと思いました。
また評価経済社会の話を政治の世界にまで展開しているのは面白いなと思いました。
・映画において「意図の強制」が計算されて導入されていることに対する意見はさすがこの分野の専門家だなと思いました。
第4章 幸福の新しいかたち
・評価経済社会での「個人のふるまい」の三つの特徴「他人をその価値観で判断」「価値観を共有する者同士がグループ形成」「個人は複数の価値観をもつ」の話、「近代的自我」から「キャラ(自分で設定可能であると同時に、人から貼られるもの)」に移行しているという話は分かりやすく、自分も含めた現代の人々をうまく表しているなと思いました。
第5章 新世界への勇気
・第1章~第4章のまとめと、変化した前の人と後の人の世代ギャップの例が分かりやすかったです。
○つっこみどころ
・右脳系の人が突っ走って書いたせいか、事実と異なることや論理的に間違っていることが散見されます。
参考文献が書かれていないので何を参考にして書いたのかはわかりませんが歴史認識については異様に偏っていますし、論理的にあり得る選択肢をいきなりカットして一択にしていたりします。
またSONYとAppleでSONYは評価資本によって稼いだ金融資金を金融資本の獲得に使ったからダメでAppleは評価資本に使ったからOK、ディズニーランドはイメージ戦略がうまくいったからOK、といろいろな要素を無視して結論付けられています。
著者が自分の言いたいことに合わせて創造した著者の脳内世界についての話だという風に考えて読めば(事実誤認や知識の誤りや論理の誤りはスルーすれば)いいのかなと思いました。
・ほとんど日本のことしか述べていない状態で社会全体について語っていることに違和感がありました。(歴史などでちょこちょこ日本以外にも触れていますが、現代以降の話ではほとんど日本だけ)
・ところどころ「評価経済社会」と書かれるべきところが「洗脳社会」になっているのは16年前の著作を修正し忘れたのかなと思いました。