【Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法】レポート

【Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法】
ロルフ・ドベリ (著), 安原実津 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4763137247/

○この本を一言で表すと?

 著者の考え方とその根拠に関するトピック集の本

○全体を通して

・1トピック7ページ前後で、古典的な内容から最新の研究結果など、様々な知見から著者が導き出した考え方が身近な事例や分かりやすい事例とともに提示されていて、読みやすく、為になる考え方が学べる本だと思いました。

・大部分のトピックの末尾に結論として要約が述べられていて、内容を振り返りやすい本だと思いました。

○自分でも気付いて実践していた内容の章

5 簡単に頼みごとに応じるのはやめよう

・「頼みごと」にあまり考えずに応じて後悔することが今までに何度もあり、経験としても学びました。
「7つの習慣」という本では「ノーと言える喜び」「最良の敵は良」という表現で、強いイエスを持っていれば一見良いことであっても断ることができるという話が載っていて、その通りだなと思いました。

6 戦略的に「頑固」になろう

・誓約を100%守り通すこと、柔軟性を持たせないことの利点はよくわかる気がします。
例外を作らないことで持ちうる強さは大事だと思いました。
「決断疲れ」を避けるという意味での利点はなるほどなと思いました。

8 必要なテクノロジー以外は持たない

・最新のテクノロジーを追いかけ続けても身にならないことがある、ということは自身の経験からも納得できるなと思いました。
追い続けるコスト、むしろ生産性が落ちる「反生産性」の話はなるほどと思いました。
ただ、生産性の観点ではなく、テクノロジーについていくことで知ること・身につくこともあるので、全面賛成とも言えないと思いました。

19 SNSの評価から離れよう

・「外のスコアカード」と「内なるスコアカード」では後者を優先すべきだというのは、他人の評価が気になる、ということから完全に免れることは難しいとしても、他人の評価や承認を求め続けるような生活から離れることはできるかなと思いますし、自分のやりたいことに集中できると思えるので賛成できます。

○この本で気付かされて有益だなと思った内容の章

3 大事な決断をするときは、十分な選択肢を検討しよう

・1を自然数で割った割合(100人であれば37人まで)をサンプルとして、全体の水準が見極められるということは初めて知りました。
十分な選択肢を検討する、というその十分さの指標を学ぶことができてよかったです。

12 本音を出しすぎないようにしよう

・発言と自分の内面を一致させることが誠実さ・正直さとして重要だと考えていましたが、一方で、本音をさらけ出す人の迷惑さも感じることがあり、自分の中でも混乱がありましたが、自分のことを自分がわかっているとは限らないこと、「自分の外交官」の重要性の話はとても納得できる結論であるように思えました。

21 目標を立てよう

・目標を立ててそれを目指すことは、目標の前提となる目的を満たすために有用だというのは当たり前なように思えますが、目標を立てることそのものが大事であること、幸福度が目標を達成できたかどうかで決まること、非現実的な目標を立てると幸せになれないことは、いろいろ考えさせられるなと思いました。

24 本当の自分を知ろう

・「自分像」が間違っていることが多いこと、脳の記憶領域に限りがあることからストーリーとして記憶をつくるために、人生を実際より計画可能なものに思えたり、特別な意味付けをしたり、実際より良い「自分像」をつくり上げたりしてしまう、ということが述べられていました。
自分自身を客観的に見ているつもりでも、大いに主観的に見てしまっているのだろうなと思いました。

27 自分のポリシーをつらぬこう、28 自分を守ろう、29 そそられるオファーが来たときの判断を誤らない

・決して妥協しない「尊厳の輪」を持つこと、それは矛盾のないものであり守れる範囲とするために小さくすべきであること、「尊厳の輪」を守ることで信念を貫き、自分の基準を守り切ることができることが述べられていました。
妥協しない範囲だからこそ大きくしないというのは健全な話だと思いますし、譲れない一線というのは自分自身で持つべきだと思いますし、納得できる話だなと思いました。

31 性急に意見を述べるのはやめよう

・質問が複雑な場合に即座に直感で答えを出す傾向を「感情ヒューリスティック」と呼ぶそうですが、これは大いに思い当たるなと思いました。
他の答えを発信する場合に犯しがちな間違いとして自分が興味のないテーマにも意見を述べてしまうこと、答えられない質問にまで発言してしまうことが挙げられていましたが、これも思い当たるなと思いました。
軽率に意見を述べる頻度を少なくするべきという意見にも賛成できるなと思いました。
この本で一番考えさせられた章だったと思います。

○いまいちだなと思った内容の章

16 自分の向き不向きの境目をはっきりさせよう、17 静かな生活を大事にしよう、18 天職を追い求めるのはやめよう、44 専門分野を持とう

・「能力の輪」の内側に集中すべき、自分の得意なものに集中すべきというのは、その「能力の輪」の内側が社会に必要とされなかった場合のリスクを軽く見過ぎではないかと思いました。
20世紀までであればそれでよかったように思いますが、社会に必要とされるスキル・必要とされなくなるスキルの移り変わりが激しくなり続ける時代には、何かしらの軸は持ちつつ、「能力の輪」の内側にない異なる分野のスキルも一から身につける必要があるように思います。

37 読書の仕方を変えてみよう

・読んだ本の内容を活かすために良い本を続けて二度読むこと、乱読しないことが勧められていました。
30歳までに良い本のサンプリングが終わっているはずなので、30歳を過ぎたら読書の冊数を限定すべきと述べられていました。
何かに活かすつもりでしか読書をしないならそれでいいかもしれませんが、自分の興味の範囲を広げること、好奇心を満たすことを目的として読書する自分としては全く賛成できないなと思いました。

50 世界を変えるという幻想を捨てよう、51 自分の人生に集中しよう

・特定の個人がいなかったとしても世界は変わらない、歴史をつくった「人物」などいない、ということが述べられていました。
ある時期に、特定の立場になった人の意思決定の違いは大きく、世界が変わらないというのは極端すぎ、また例外が多すぎて賛成できない考え方だなと思いました。

○つっこみどころ

・副題の「最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法」は、最新の学術研究から導かれた考え方がいくつかあるものの、古典的な考え方の方が全体としては多く、かなり誤っているように思いました。

・考え方を提示するということで言い切り型になるのは仕方がないと思いますが、同意できない考え方については反感を覚えてしまい、しばらく以降の話が頭に入らならなくなってしまうように感じました。

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