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【サラダ記念日】レポート

【サラダ記念日】
俵 万智 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4309402496/

○この本を一言で表すと?

 当時の流行や恋情を表現した現代短歌集

○面白かったこと・考えたこと

・優雅さ、典雅さなどより、率直に表現されている短歌が面白いなと思いました。

・「五・七・五・七・七」で切るルールで、会話・文節・単語の途中でも切っている短歌は初めて見ました。
いろいろ流派がありそうですが、短歌のルールは自由だなと思いました。
また一首で完結していない、続けて読んで意味のある短歌もあり、表現方法も多彩だなと思いました。

・解説で架空の設定で詠まれている短歌が多いようなことが書かれていました。
情感を三十一語に込める短歌を架空の設定で詠むのは、言葉を尽くせる小説などよりも難易度が高そうに思いました。

○面白かった短歌・気になった短歌

向きあいて無言の我ら砂浜にせんこう花火ぽとりと落ちぬ(八月の朝 P.13)

向き合う立ち位置で線香花火をしている絵になんとなく違和感がありました。
カップルなら横に並んで同じ向きでやっていそうなイメージがあります。
深読みすると、向き合う配置は心理的には対立・対決する配置ですが、心が離れてしまったなどの含意があるのでしょうか。

「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛をいう君(八月の朝 P.18)

怒っている時・完全に上下関係ができている時以外で、完全な命令形で伝えるのは今の時代だと難易度が高いのではないかと思いました。
対等な関係で命令形は男らしいようにも思えました。(自分には無理そうだなとも思いますが)

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ(八月の朝 P.20)

この感覚は今の時代でも理解できる、人と人との繋がりに温かみを感じる感覚だなと思いました。

電話から少し離れてお茶を飲む聞いてないよというように飲む(朝のネクタイ P.48)

父親の娘との距離感、気遣いなどが伝わってくるような情景が浮かんできました。

コップ酒浜の屋台のおばちゃんの人生訓が胃に沁みてくる(モーニングコール P.89)

前後と並べて詠むとまた意味が変わってきそうですが、単体で詠むと男女問わず分かる感覚だなと思いました。
若い女性にしてはヤサグレ感が漂っているなと思いますが。

青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になる(橋本高校 P.95)

青春の当事者から離れた立場・心持ちになっている感覚が伝わってくるように思いました。
また、回顧するほど離れてもいないような年齢の感覚かなとも思いました。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日(サラダ記念日 P.127)

この一首だけは特に有名で、爽やかな印象を感じる一首だと思っていましたが、歌集全体、章全体の流れからすると、強い恋情・執着のある前提の内容だったのかなと感想を改めました。

我が髪を三度切りたる美容師に「初めてですか」と聞かれて座る(左右対称の我 P.137)

三度会っている美容師が自分を憶えていなかったことから、故郷と比べて東京の人の多さ、接触する人の多さ、関わる人の縁の薄さを実感した、故郷から離れた地であることを実感したことが表現されているのかなと思いました。

頼もしく仕事の話する君の頼もしさだけ吾は理解する(元気でね P.154)

男の話す仕事の話自体は理解できなくても、しっかりやっていることだけは理解してあげるという、承認されたい、できる人間と思われたいという男の欲求を満たす、見事な受容だなと思いました。
自分がそうされたいかは別として、こういった欲求は今でも多いのではないかと思いました。

7・2・3から7・2・4に変わるデジタルの時計見ながら快速を待つ(元気でね P.157)

このセンスはすごいなと思いました。
いつだったかは忘れましたが、誰かに聞いたことがあり、この本が原点かと初めて知りました。

○つっこみどころ

・現代短歌、特に当時の流行をネタにした短歌は、当時の時代背景がわからないと理解できないものになっているのかなと思いました。
2020年時点で33年前に出された歌集ですが、既に結構わからない内容も多く、更に年月が経つと理解できなくなっていきそうに思いました。