【BOPビジネス 市場共創の戦略】レポート

【BOPビジネス 市場共創の戦略】
テッド ロンドン (著, 編集), スチュアート・L・ハート (著, 編集), 清川 幸美 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4862761119/

○この本を一言で表すと?

 BOPビジネスにおける現状の把握から参入・展開までを最近の知見も含めて書かれた本

○この本を読んで興味深かった点

・「ネクスト・マーケット」を読んだ時にBOPビジネスの可能性を大いに感じましたが、「ネクスト・マーケット」に書かれていた事例は「市場発見」だが、それに目がくらんで参入した企業のほとんど失敗し、「市場共創」に到達できた企業・団体だけが持続できているという話を知って、「ネクスト・マーケット」を読んで感動していた自分を恥ずかしく思いました。
この本で失敗や成功の事例を踏まえて更にBOPに対するアプローチを磨き上げていくという熱意が感じられ、その熱意と行動の先の事例が楽しみに思えました。

第1章 より良い事業を構築する

・「設計」「パイロット試験」「規模拡大」の三段階と「市場機会を創出」「BOPとともに解決策を創作」「効果的な実験を組織」「失敗に対処」「社会的埋め込みを活用・移転」「複合的な競争優位を創出」「相互の価値を高める」の7つの基本原則はBOPにとって重要なことの全体図が表されていて、この本を読み終えた後に改めてみるとうまくまとまっていると思いました。

・BOP向けのビジネスを展開する、というBOP1.0から、BOPとともにビジネスを築き上げていく、というBOP2.0にシフトしていること、そうでなければ持続的に続けていくことはできないということは、地に足がついた方向に舵を切っているなという印象を受けました。

第2章 4つのイノベーション

・「徹底的にコストを削減する」「BOP志向の経営チームをつくる」「人間中心の設計を用いる」「新しい市場を育てるために、BOPとの間に信頼関係を確立する」の4つのイノベーションについて、実際の事例を当てはめて説明されていて分かりやすかったです。
この4つのイノベーションはBOP以外でも適用できそうな考え方だなと思いました。

第3章 緑の飛躍戦略

・19世紀以降から蓄積的に発展していった先進国に対して、途上国では19世紀の状態に21世紀の技術をいきなり投入できるという意味で、緑の「飛躍」としているのはうまい表現だと思いました。
資源制約的にそうせざるを得ないとはいえ、そのことがむしろ途上国での強みになれば面白いなと思いました。

第4章 どこにでもあるニーズ、どこにもない市場

・ニーズはあっても市場が存在しない、という先進国では考えにくい状態がBOPでは当たり前だということを改めて確かめることができました。
そもそも市場が存在しないところに「参入」することはできず、市場を「創出」するしかないことは、当然導き出されることだと思いますが、そのためのプロセス「種まき」「基盤づくり」「成長と強化」において、成功した事例でも「種まき」と「基盤づくり」にかなりの時間をかけていることは、その難易度からすると当然かもしれないなと思いました。

第5章 ミクロレベルで市場を理解する

・貧困の多面性(低い識字率、蝕まれる自尊心、対処能力を得ることの困難さ、人的な交渉力の必要性、ネットワーク)、強みと弱み、その調査のための現地入りの様子、多様な環境それぞれにおいての解決策とその持続可能性の検討など、実際のBOPの中で自立しようとしていった人の話を通して理解しやすかったように思いました。
特に、文字を理解できないことによる「絵文字的把握」の話は、コミュニケーションとしての識字能力以外の意味での物事の把握能力にも関わってくる識字能力の大切さが伝わってきました。

・先入観を捨て、「誰かのために設計するには、その人から学ぶという姿勢が求められる」ということが大事というのは、本質的な解決には必要なことだろうなと納得できました。

第6章 デザインのリフレーム

・現地の状況に応じたデザインが求められることは何となく想像がつく、と思っていましたが、その現地の状況に応じる、現地のニーズに対応することの前に、その潜在的なニーズを知ることの大切さがよく分かりました。
どこかでうまくいったものが他の場所でもうまくいく、ということは、もちろんないことはないと思いますが、よくよく考えないとそこで思考停止してしまいそうにも思いました。

第7章 拡大可能な組織構成とは

・BOPにおいて、ビジネスを展開する時でも規模拡大を検討したBOP外の既存組織との連携や、現地でそのビジネスを含めたエコシステムを構築するということは、そのビジネスを発展させるうえで必要になってくるのだろうなと思いました。
ローカルな組織であることとグローバルな組織の一部であることを兼ねていい所採りをするのは、持続が困難なBOPにおいて重要な強みになりそうです。

終章 旅は続く

・今後、BOPビジネスにおいても組織自体が強力である必要があること、利害関係者となる政府や寄付団体などを含めたエコシステムを構築し、その中でやっていくことが有効であり、持続的な存在になる上では不可欠であることが書かれていて、地に足のついた意見だなと思いました。

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