【大統領でたどるアメリカの歴史】レポート

【大統領でたどるアメリカの歴史】
明石 和康 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4005007236/

○この本を一言で表すと?

 歴代大統領について網羅的に紹介した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・アメリカの著名な大統領からかなりマイナーな大統領まで網羅的に書かれていて、初めて名前を知った大統領についてもその来歴等を知ることができてよかったです。

・三十六年周期の政治変動、という規則的な流れに沿って章を区分しているのは面白いなと思いました。
その区分でうまくトピックが分かれていること自体がこの周期変動が規則的であることをある程度証明できているように思いました。

・購入した時点で栞が真ん中のページに挟まれていて、そこがちょうど「最重量の大統領―タフト」という小見出しのあるページだったので、この大統領についてはしっかり記憶できました。

第1章 独立からフロンティア拡大の時代

・初代大統領のワシントンが二期で大統領の職を退く前例を作ったことで、強い慣例としてその習慣が守られていったのは、ある意味で歴史を方向付けた偉業だったのかなと思いました。

・第三代のトーマス・ジェファーソンでフェデラリスツ(連邦党)からリパブリカン(共和党)への政権交代が平和裏に行われたことが、同時代の流血を強いたフランス革命等と比較されていて興味深かったです。
それ以降の再度のイギリスとの戦争や領地拡大など、様々なできことが歴代大統領の記録とともに説明されていて、あまり知らなかったことについても概要を知ることができてよかったです。

・大統領にならなかったベンジャミン・フランクリンについてコラムで書かれていたのも同時代の重要人物を網羅出来て良い構成だったと思いました。

第2章 分裂の危機と南北戦争

・リンカーンについては、何度も挫折したことやスピーチの旨さなどは自己啓発書でよく事例として出ますが、その行いや決心が揺るがなかった点などについては、あまり知らなかったのでいろいろ参考になりました。
リンカーン以外の大統領がさらっと流すように概要だけ述べられるに留まっていましたが、それだけ南北戦争が大きなトピックだったのだろうなと思いました。

第3章 欧州列強に並ぶ大国への道

・セオドア・ルーズベルトが金子堅太郎と大学の同窓生で、その縁で日露戦争の調停を依頼した話などは司馬遼太郎の「坂の上の雲」で知っていましたが、武士道等も勧めて日本人びいきにしていた話は初めて知りました。
日本視点だからか小説では割と人格者として描かれていましたが、ラテンアメリカでは棍棒外交で強引な外交をしていたことなど、実務面でもいろいろやっていたのだなと思いました。

・テディ・ベアが、セオドア・ルーズベルトが熊猟で小熊を逃がしてやったエピソードで生まれたことを初めて知りました。

・ウッドロー・ウィルソンが平和のために国際連盟を提唱した一方で、日本の人種平等条項を蹴ったことは知っていましたが、南部出身の人種差別主義者だったというのは興味深いなと思いました。

第4章 ルーズベルト連合と民主党の時代

・フランクリン・ルーズベルトが大恐慌の対策として行ったニュー・ディール政策は、歴史の教科書だとその規模や効果などについてそれほど触れられていませんでしたが、かなり大規模な公共投資で、それ以外にも様々な政策を打ち出していたことは初めて知りました。
小説や戦争史などでは、戦争をしない公約で選挙に当選して、日本から戦争を仕掛けさせた悪玉として書かれることも多いように思いますが、ラジオで国民に直接語りかける手法など、別の視点で見ると興味深い人物だなと思いました。

・第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争など、アメリカが主要な利害関係者となる戦争が続き、その中で大統領が交代して前任者の処理をさせられるなど、大変な時代だったのだなと思いました。

第5章 アメリカの復活とレーガンの時代

・リチャード・ニクソン以降、大統領の流れで見ると、メディアの影響が強くなったのか、スキャンダルが取り上げられ、それで政権交代に繋がるケースが続く時代だったのだなと思いました。

・大きな出来事、不況などがあり、それ以前と変わらずリーダーシップを取って動いている大統領もいるものの、それ以前の時代のリーダーシップより弱く見えるのは、時代背景が異なるからかなとも思いました。

第6章 変わるアメリカ、オバマの登場

・2012年に出版された本なので、オバマと、2期目を争ったロムニーについて書かれていました。2017年時点から見ると、肯定的な面をクローズアップして書いている印象を受けました。

○つっこみどころ

・著名な大統領については肯定的にしか書かれていないところに物足りなさを感じました。
それなりに他の大統領よりページが割かれているものの、ネガティブな情報を避けて書いているのは岩波“ジュニア”新書であることの配慮でしょうか。

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