【中東民衆革命の真実】レポート

【中東民衆革命の真実】
田原 牧 (著)
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○第一章 静かな興奮

○第二章 予測を超えた展開

⇒エジプトの2011年1月25日から18日間の革命⇒これまでの革命と異なることが多く、当事者でさえ予測しない結果

・デモの中心は上流層、中流の上の左翼やイスラム主義団体とは違う青年

・軍がムバラク大統領抜きで軍最高評議会を開き、事実上ムバラク体制は崩壊

・中東において大衆運動が大勢を揺るがした例は一つもない

・革命の原因が経済的苦境、警察国家、独裁政治等では説明できない(これらの要素はこれまでと大きな違いはなかった)

○第三章 旧世代の憂鬱

・三十五歳くらいでくっきり分かれる新・旧世代

・旧世代からみればムバラク大統領の評価はそれほど悪くない(過去の実績を評価)。また、「年寄りを敬う」「有終の美」感覚で、穏やかに終わらせたいという思いがある。⇔新世代では即時退陣を促した。
⇒ムバラク大統領の30年の統治の前半20年はそれなりに評価できる内容。
  第四次中東戦争で空軍司令官として陣頭指揮。「シナイの星」という軍人最高栄誉の勲章を贈られる。
  サダト大統領の副大統領として黙々と尽くす。サダト暗殺後に大統領就任
  就任前25年間は4回の戦争に巻き込まれているが、ムバラク統治の30年は戦争に巻き込まれていない。

・旧世代は対イスラエルやアラブ民族の正義を考慮するが、新世代は身近な問題に注力(自分が生まれていない時代に起こったことへの実感があまりない)

・旧世代はエジプトの「ぬるい独裁」に対してそれほど不満を持っていなかった。新世代は独裁であること自体に反発。

・エジプトの革命は世代間の断絶がもたらした奇跡?

○第四章 タハリール共和国

・デモの中心地となったタハリール広場ではカイロの人が集まるところ特有の痴漢、スリ、横入りがなかった。

・集めたごみを窓から階下に捨てるような意識から公衆道徳が守られる状態に。

・宗教、宗派、地域等で通常交流することがあり得ないような人がこの場では交流していた。

・アラブ世界特有の「民主主義より優れた英雄」という性向が見られず、英雄も指導者もいなかった。

・内部のゆるやかな交流に対して、対政府交渉は頑なで、妥協しなかった。

・ネット環境が貧困層にも開かれ、識字率の高い若者のほとんどがITやSNSに触れることができた。

・旧世代のアラブ標準(アラブだからOK)と新世代の世界標準(独裁自体が×)の違いが明確に表れた。

・楽しげな雰囲気により子供が集まることでその親も集まってきた。(エジプト人は子供好きで、子供の前で荒事を起こせないという弾圧に対するメリットも)

○第五章 下支えした既成勢力

・メインとなった若者を支える既成の勢力があった。
 ムスリム同胞団・・・お抱えの医師団や襲撃への対応等
 共産主義者・・・最初は独立系の小規模な労働組合等がデモに参加、後半は巨大労組がストに突入

・勝ち馬に乗れなかった野党・・・デモを支持せず、革命後の影響力縮小

・「結果として」加勢したエジプト軍・・・腹を固めたのは最後の時点
 軍人出身のムバラクを裏切った理由は、権益の防衛、権威の維持、米国の圧力
 ⇒ムバラクの後継者ガマルは軍出身でなく、経済界主導になりかねなかった

○第六章 五十四年体制の崩壊

・革命の最大の要因は「アウラマ」=グローバリゼーション
 ⇒政府や民間だけでなく、宗教界もグローバリゼーションの波に呑まれている

・ネット以上に普及している衛星テレビから世界の情報⇒米国主導でもイスラム中心主義でもない革命へ

○第七章 新しい革命

・エジプト革命は過去の基準を持たない革命で青写真を持たない自由を持つ

・エジプト革命の原動力は思想や大義ではなく、倫理?

・ネオコンとアルカイダは大衆を信じない前衛、一握りのエリート主導。
 ⇒エジプト革命は現状を否定する「だけ」。次の政権がダメならまた否定すればいいという考え方?

○第八章 青ざめる米国

・ムバラクは親米で子飼いの独裁者だったがその体制が崩壊。

・米国は内部の事情によりイスラエルに不利益な行動ができない⇒政策に制限
 ⇒米国を外して国連とEUで中東の紛争問題を解決する動きも

○第九章 不可視の船出

・政権が倒れただけでは経済状況等の現状は何も改善されておらず、これからが問題。

・革命に無縁な人の数も膨大(一部の人による革命)

・軍が実権を握っていることには変わりがない

・宗派等の主義主張にかかわらず目的のため団結したが、その違いによる対立は今後の話。

・但し、投票率の向上などのよい方向の結果もみえてきている。

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