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【現代日本外交史 – 冷戦後の模索、首相たちの決断】レポート

【現代日本外交史 – 冷戦後の模索、首相たちの決断】
宮城 大蔵 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121024028/

○この本を一言で表すと?

 冷戦後の日本の外交を軸として考えた政治の本

○面白かったこと・考えたこと

・本のタイトルから、冷戦後の日本と外国の関係について述べた本だと思っていましたが、それよりも国内政治寄りで、どういった外交課題があって、その時の政権はどのような状況で、政治的にどのように対処していったかという内容だったのが意外でした。
外交政策もそれ以外の国の政策と同列で考えるというのは当たり前のようで、意外と自分の中では別物と考えていたのかなと気付かされました。
自国と外国との関係がどうなっているかだけではなく、国内の関係調整等が必要になってくるというのは、外交政策の難しさがさらに際立ってくるなと思いました。

・冷戦終了までの外交については歴史の教科書でも取り上げられますが、冷戦後の外交を取り上げるという視点は面白いなと思いました。
冷戦後も様々な外交課題があったのだなと改めて気付けて良かったです。

・冷戦後の政治の本、政策の本を何冊か読んだことがありますが、外交政策という軸で評価するとまた違って見えてくるのだなと新鮮に思えました。

第1章 湾岸戦争からカンボジアPKOへ

・冷戦が終わった時、「冷戦の本当の勝者は日本だ」と言われるほどアメリカの経済が落ち込み、日本の経済が強かったことは、今から思えば隔世の感があるなと思いました。

・湾岸戦争での日本の130億ドルもの支援が評価されなかったり、ロシアとの外交、特に北方領土問題が躓いたりしたのは、この辺りで日本を叩いておかないと、という陰謀論にも繋がってきそうな気がしました。

・PKO参加や東アジア共同体構想など、今においても繋がっているような話があり、最近でも同じ理由でアメリカ等に否定されて頓挫しているのは、利害関係者の多い外交というものの難しさを感じさせられました。

第2章 非自民連立政権と朝鮮半島危機

・安保を含めた軍事的規模について、日本で「樋口レポート」が作成され、アメリカで「ナイ・レポート」が作成され、有名なジョセフ・ナイが樋口レポートを同意見で心強いと考えていたというのは興味深いなと思いました。
そのナイ・レポートの10万人規模までの軍縮というのに当時の沖縄県知事が反応して当時沖縄県が持っていた県内の軍用地の承認を拒否するなど、これもいろいろな立ち位置にいる利害関係者の調整の難しさを感じさせました。

・消費税の創設と北朝鮮問題など、国内と国外の事情が重なって首相が変わっていくのも興味深いなと思いました。
また、外務省の人が相談しやすいという理由で安全保障問題について後に首相になる橋本龍太郎氏に相談していたというのは、政治においても人間関係・信頼関係というのが非公式なコミュニケーションに繋がって動いているという実例のようで面白いなと思いました。

第3章 「自社さ」政権の模索

・自社さ連立政権になって社会党の村山首相になった時に、海外での会議について自民党の宮沢元首相に相談している話は面白いなと思いました。

・これまで党として述べていたことを転換して発言、行動していった村山首相の立場はなかなか辛そうだと思いました。

・阪神大震災や地下鉄サリン事件などの事件などにも翻弄されながらも、歴史問題に区切りをつける村山談話を打ち出したのはすごいなと改めて思いました。

・村山首相の後を引き継いだ橋本首相については、経済面で失敗した話などが他の本でクローズアップされていましたが、政策通であり、アメリカやロシアの大統領ともしっかりコミュニケーションをとっていて、いろいろうまくいきかけていたような話が書かれていて興味深かったです。わざとニュースをリークするなどの手法も面白いなと思いました。

第4章 「自自公」と安保体制の強化

・自自公連立になって首相になった小渕首相がクローズアップされていました。
小渕首相は割と他のどの本でも評価されていた印象ですが、北朝鮮のテポドン・ショックなどがありながらも韓国との関係正常化や人間の安全保障、発展途上国への支援など、様々な活動を行い、その集大成としての沖縄サミットの前に倒れて亡くなったのは、惜しかったなと思えました。

・今でもあまり良い印象のない森首相が、小渕首相の後を引き継いでアフリカの国家を沖縄サミットに招いたり、支援に動いていたというのは初めて知りました。外交という軸で見るとまた見方が変わるなと改めて思いました。

第5章 「風雲児」の外交

・賛否両論の小泉政権について、この本ではどちらかといえば否定気味に書かれていました。
靖国問題で中国とこじれたり、アメリカとの関係強化でイラク戦争賛成の方針を通したり、北朝鮮に電撃訪問したりと動きは派手ですが、少なくとも外交については国内政治向けのアピールがメインであまり実を結んでいない印象を受けました。

第6章 迷走する自公政権

・安倍首相、福田首相、麻生首相の迷走していた時期の外交について書かれていました。
強気な外交の安倍首相と落ち着いた外交の福田首相とその間をとるような麻生首相が対比されていましたが、外交自体よりも国内政治が不安定過ぎて何も手を出せない様子が印象的でした。
外交課題が明確であってもそれを共有して解決できる状態でなければ、多数派にならなければ何もできないという、政党政治の辛さが出ているなと思いました。

第7章 民主党政権の挑戦と挫折

・民主党になって、自民党が与党の状態が続く中ではできなかった密約の公開などができたことなどが評価されていました。

・アジア中心の外交を進めようとしてアメリカに牽制されているのは、政権与党になったことがない立ち位置だと新機軸で動きやすいものの、バランスに欠いてしまうのかなと思いました。

・鳩山首相が党内でも孤立していて、それを継いだ菅首相、野田首相も立て直せなかったことが端的に書かれていました。

終章 日本外交のこれから

・安倍首相になってからの韓国や中国とのトラブルについて述べられていました。
日本の方針についてどうこうより、各国においてトップが変わることで政策がガラッと変わったりするので、その対応などが大変そうだなと思いました。

・今後の課題として、アジア各国の隆盛などによる地域主義と米中などの大国への対応、テロなどの非対称戦争への対応、近隣国家との外交などが挙げられていました。
この本で述べられていた四半世紀と比べても負けないくらいに難しい課題が山積されているなという印象です。

○つっこみどころ

・森首相や鳩山首相など、世間的にもあまり評判のよくない過去の首相について無理矢理良い点をピックアップしようという判官びいき的な印象を少しだけ受けました。