【日本インテリジェンス史】レポート

【日本インテリジェンス史 旧日本軍から公安、内調、NSCまで】
小谷 賢 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121027108/

○この本を一言で表すと?

 日本のインテリジェンス・コミュニティの変遷の本

○よかったところ、気になったところ

・インテリジェンスを情報の収集・分析・活用と定義し、インテリジェンス・コミュニティをインテリジェンスを取り扱う組織として定義していて明確でわかりやすいなと思いました。

・日本のインテリジェンス・コミュニティの戦後以降の変遷について各段階の仕組みや事情が説明されていました。
日本は戦前から官僚形組織とその弊害の縦割り構造が統括的な情報共有を阻んでいたようですが、戦後もステークホルダーは異なるもののその弊害が継続し、特に情報共有については高い壁があり続けていたのが印象的でした。

・組織自体の成立過程が、その組織の下部組織である情報機関にも影響を与えていたのが印象的でした。
警察から自衛隊が分離したからか、自衛隊内の情報組織は警察が統括していたり、組織の力学のようなものが強く働いているのだなと思いました。

・冷戦時とその後でインテリジェンス・コミュニティのあり方が大きく変わっていったのが印象的でした。
冷戦時はアメリカ主体で日本のインテリジェンス・コミュニティはアメリカに従うことがメインだったのが、冷戦後は独立した体制と運用が必要になり、その実現にかなり苦労していたのだなと思いました。

・情報統合のための組織を設立しても最初から形骸化してしまうことが続く中で、NSC/NSSが設立されてからようやく形になったのは印象的でした。
別の本でもNSCの設立が画期的でそれ以後は情報の管理・活用に大きな違いがあったと書かれていたので納得でした。

・全体として、日本のインテリジェンス能力、インテリジェンス・コミュニティのレベルの低さがよく伝わってきました。
セキュリティ能力の低さから他国に情報共有を憚られていることも、厳しい状況だと思いました。

○つっこみどころ

・防衛大学校に勤めていた経歴や立場などからか、近年から現在に至るところでは全体的に肯定的な観点で語られていて、批判的な観点が明らかに減少したように思いました。
通史としては現在を取り扱うときに批判をしづらいのかもしれませんが。

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