【100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図】
ジョージ フリードマン (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/415209074X/
○この本を一言で表すと?
各国の人口や地形と位置関係、軍事力にフォーカスした地政学により今後を予測した本(但し後半はSF)
○よかった点
・20年刻みでそれぞれ想定もできなかったような状況変化が起きていること、またそれが予測されていたにもかかわらず回避されなかったことが書かれていて面白かったです。(序章)
・マッキンダーのユーラシア地政学、マハンの「海上権力史論」の対比が面白かったです。特に、日露戦争で活躍した秋山真之はこんな視野の広いマハンに師事していたのかと思いました。(第1章)
・アメリカが国外としては5つの地政戦略(①アメリカ陸軍の北米支配、②西半球に強国を存在させない、③アメリカの海上接近路の完全支配、④全海洋支配、⑤アメリカの海軍力の絶対優位)に成功していて、国内としては資源や地理的な要因などでまだまだ余裕があって、かなり安泰であるというのがよく聞く世論と違って面白かったです。(第2章)
・19世紀前半はメキシコがアメリカより強国で、米墨戦争で負けた結果国境線が今の状態に引かれたというのは初めて知りました。(山川の世界史でも戦争については触れられていませんでした)(第4章)
・中国の状況についてはこれまでの歴史とも整合していてなかなか説得力があるなと思いました。(第5章)
・ロシアの状況については他の本に書かれてあった内容とも一致していてよく分析できているなと思いました。(第6章)
・アメリカの50年周期説は初めて知りましたが、言われてみればなるほどと思いました。(第7章)
・日本が第二次世界大戦時に、トルコが強国であった頃に近づくという発想が面白かったです。(第8章)
・現在既にある技術や状況から未来を描くその試みは面白いと思いました。その詳細はともかく、戦闘による死者が少なくなるところなどは納得感がありました。(第9章以降)
・メキシコとの地理的関係、人口推移、移民状況などの考察はなるほどと思いました。(第13章)
・地理的状況と人口動態からどのように地域が勃興し、また凋落していくと推測できるのはとにかくすごいと思いました。
○参考にならなかった所、または突っ込みどころ
・日本やトルコの話は一理あるなと思いましたが、ポーランドが地域覇権国になる理由が「ロシアとの地理的関係上危ない場所」と「人口がそれなりに多い」というのはイマイチ納得しづらかったです。
・第9章以降は技術的要因が推測しづらいのは分かりますが、今あって未来に発展しそうな技術の一部(宇宙発電・送電、機構兵)だけをピックアップして一点突破で考えているような印象で、前半の緻密さに較べて稚拙だと思いました。
○実践してみようとおもうこと
・この本の内容と、今後の国際情勢の推移を比較していこうと思います。
・この本の考察のように、少ない情報から取り得る手段を識別して予測を立てる手法は技術革新の方向性判断や経営戦略策定等の他分野にも活かせると思いました。