【「甘え」の構造 [増補普及版]】
土居 健郎 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4335651295/
○この本を一言で表すと?
「甘え」を中心に日本人と心理学を考えた本
○この本を読んでよかった点・考えた点
・「甘え」という日本語にしかない言葉を軸にして話を展開しているのは面白いなと思いました。
・ところどころ知っている本(タテ社会の人間関係、日本の思想、など)が参考文献に出ていてニヤリとしました。
・「自由」という言葉は元々仏教用語で福沢諭吉が翻訳するときに現代の意味で使用したと思いますが、「昔から使われていた」と書かれていました。
実際はどうなのか知りたいです。
第一章 「甘え」の着想
・日本の「甘え」という言葉の意味を説明することで海外の専門家が興味深く検討したというのは面白いなと思いました。
第二章 「甘え」の世界
・「甘え」の語彙からの展開の話、対立すると考えられている「義理と人情」や「罪と恥」が同時にあり得る話、なぜ海外では対立構造が成立し、日本では成立しないかを「甘え」という語彙で説明している話などは深く考えたことがなかったので新鮮でした。
第三章 「甘え」の論理
・「甘え」の語源や他の語彙との比較には賛成できませんでしたが、「気」の概念についてたくさん挙げていて、日本語の便利さや、複雑さ、いろいろな意義がこめられていることなどに気付けました。
第四章 「甘え」の病理
・「気がすまない」という言葉が存在することを日本人の自発的な労働や義務感と関連づけているのは興味深いなと思いました。
よく耳にする「被害」が最近つくられた用語で、元の「侵害」よりも日本人の感覚に合った言葉だというのは面白いなと思いました。
第五章 「甘え」と現代社会
・現代社会は「『父』なき社会」で日本だけでなく欧米でも共通してみられるという考え方は、あまり同意はできませんが面白い考え方だなと思いました。
○つっこみどころ
・「甘え」の定義がところどころぶれていて、論理の飛躍が甚だしく、まともな考え方として受け止めることはできませんでした。
・乳児後の「うまうま」が「甘い」につながる、「天(あま)」が「甘い」につながる、などの話は著者が自分で留保しているにしても、無理やりすぎるなと思いました。
・精神科医としての知識について断定的に書かれていて「本当にそう決まっているのかな?」と思える記述が多かったです。
・著者の日本人観が画一的で単純化され過ぎているなと思いました。
・漢字を使いすぎないように書いている努力がみられますが、平仮名で書かれているせいで余計に読みにくくなっているところがいくつもありました。