【ハーバード流 企画実現力】レポート

【ハーバード流 企画実現力】
ジョン.P・コッター (著), ローン.A・ホワイトヘッド (著), 庭田 よう子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062167824/

  1. <この本を一言で表すと?>
  2. <概要>
    1. ○優れたアイデアを葬り去る四つの基本戦略
      1. 1.不安をあおる
      2. 2.遅延による消滅を狙う
      3. 3.混乱に陥れる
      4. 4.嘲り(および誹謗中傷)
    2. ○優れたアイデアを守る、通説とは一見相反する五つの原則
      1. 1.妨害者を恐れないこと
      2. 2.つねにわかりやすさを心がけ、率直に、誠実に対応すること
      3. 3.誰に対しても敬意を示すこと
      4. 4.聴衆に目を配ること
      5. 5.攻撃を予測して、事前に準備すること
    3. ○四つの戦略を利用した二十四の攻撃
      1. 1.これまでうまくやってきたのに、どうして変える必要があるのか?
      2. 2.資金(あるいは提案では触れていない問題)が、実は唯一の問題である。
      3. 3.問題を誇張している。
      4. 4.これまでは失敗だったと暗に指摘している!
      5. 5.この提案には、何か隠された意図があるのではないか?
      6. 6.これについてはどうか、あれについては? これは、あれは・・・?
      7. 7.その提案は度を越している。この提案は、とても十分とは言えない。
      8. 8.矛盾する問題を抱えているので先に進めない。
      9. 9.「ほとんどの人が受け入れられないこと」のようにわたしには思える!
      10. 10.わたしたちの核となる価値観を捨て去ろうとしている。
      11. 11.単純すぎてうまくいくはずがない。
      12. 12.ほかに誰もやったことがない。
      13. 13.両立は不可能だ。
      14. 14.どうだ!“これ”は否定できまい!(“これ”とは、提案者が知らない厄介ごとで、攻撃者は絶好のタイミングが来るまで伏せている)
      15. 15.こんなに多くの疑問や懸念が出てくるのだから、このアイデアには欠陥があるに違いない。
      16. 16.かつてそのアイデアを試したことがあったが、うまくいかなかった。
      17. 17.難しすぎて理解できない。
      18. 18.アイデアはよくてもタイミングがよくない。
      19. 19.実現には、甚大な労力が必要だ。
      20. 20.ここではうまくいかない。わたしたちはほかとは異なるのだから!
      21. 21.それを採用すれば、歯止めがきかない。滑りやすい坂道へと追いやられる。
      22. 22.必要な資金がない。
      23. 23.十分な人数を納得させられない。
      24. 24.自分たちには、それを遂行する能力がない。

<この本を一言で表すと?>

「なぜ優れたアイデアがつぶされるのか」の原因を分析し、それらに対応するための原則と処方箋を記した本

<概要>

○優れたアイデアを葬り去る四つの基本戦略

1.不安をあおる

 この攻撃は人の心に不安を生み出すことを目的にしている。不安が生まれると、提案を注意深く検討することが、不可能ではないまでもきわめて難しくなる。

2.遅延による消滅を狙う

 致命的な遅延を引き起こすだけで、優れた提案をつぶすほどの威力を発揮する。容易に実践できるので非常に強力な戦略となる。

3.混乱に陥れる

 無関係の事実や複雑な論理、多くの代替案を示して会話を混乱させ、積極的な支持を得るために必要な、明確で知的な対話ができなくなるように仕向ける。

4.嘲り(および誹謗中傷)

 提案者が愚かに見えるように仕向ける。他の戦略と比べて利用頻度は少ないが、この戦略が功を奏した場合には優れたアイデアが損なわれ、提案者が別の妥当性のあるアイデアを示してもその件が人々の記憶から薄れるまで周囲からの信頼を得ることが難しくなる。

○優れたアイデアを守る、通説とは一見相反する五つの原則

1.妨害者を恐れないこと

 どんなに卑劣な攻撃を加えるものでさえも、反対する可能性のある人たちを話し合いから締め出さない。彼らを議論に参加させる。攻撃の矛先をこちらに向けさせる。攻撃するように促してもよい。
攻撃を仕かけてくる人を除外せず、彼らに攻撃をさせることによって、聴衆の注意をひきつける。

2.つねにわかりやすさを心がけ、率直に、誠実に対応すること

 膨大なデータを駆使したり、論理を次々と展開したり、不当で無知で卑劣な攻撃に対して、そちらが絶対に間違っているといくつもの理由をあげつらったりして、攻撃をやり込めようとしてはいけない。それとはまったく逆に思えることをする。
簡潔明瞭で良識にあふれた対応で、話に熱心に耳を傾ける聴衆の思考を納得させる。

3.誰に対しても敬意を示すこと

 攻撃をしてくる人に対して、嘲りや逆襲、軽蔑した態度を取って打ち負かそうとしてはいけない。たとえ相手がそれに値するようなときでも、心のどこかでそうしたくてたまらないときでも、相手を打ち負かすスキルがあるときでも、決してそうしてはいけない。
 真の賛同を得るためには、感情も理性も納得させる必要がある。敬意を示した反応は、人の心をつかむうえで大きな役割を果たす。

4.聴衆に目を配ること

 攻撃を仕かけてくる相手と、その不当で非論理的な、意地の悪い首長にフォーカスしてはいけない(そうしたい気持ちは山々であっても)。
 大多数の賛成を得たいなら、混乱を生み出している少数の論客にフォーカスする議論に引き込まれてはいけない。アイデアが実行に移されるためには51パーセントの賛成ではだめで、80パーセントの賛成と25パーセントの熱心な支持が必要となる。聴衆をつねに観察し、聴衆の大多数に理性で納得してもらい、感情で共感してもらう。

5.攻撃を予測して、事前に準備すること

 事実を十分に把握していたとしても、アイデアは完璧だと思われても、聴衆が友好的だろうと思われても、やっつけ仕事で行ってはいけない。
 準備は自信を養い、不安を鎮める大きな役割を果たす。また、攻撃を受けた場合に自ずととりがちになる防衛的な姿勢を避けられる。

○四つの戦略を利用した二十四の攻撃

1.これまでうまくやってきたのに、どうして変える必要があるのか?

(攻撃)かつてそんなことをしたことはない。だがどんな場合もうまくいっていた。

(対応)たしかにそうかもしれない。だが、変化に適応しなかったものがやがて滅びた例を誰もが知っているはずだ。

2.資金(あるいは提案では触れていない問題)が、実は唯一の問題である。

(攻撃)資金が問題であって、○○が問題ではない。

(対応)資金があるからと言って、真に優れたベンチャーや組織が築かれることはめったにない。

3.問題を誇張している。

(攻撃)大げさに主張している。たとえそれが問題であったとしても、わたしたちにとっては小さな問題にすぎない。

(対応)この問題で苦しんでいる善良な人たちにとっては、決して小さな問題ではないはずだ。

4.これまでは失敗だったと暗に指摘している!

(攻撃)これが問題だと言うのなら、わたしたちがこれまでお粗末な仕事しかしてこなかったと言っているようなものだ。わたしたちを侮辱している!

(対応)それは違う。あなたがたは、必要なツール(システム、メソッド、法律など)もない状態で、本当に“素晴らしい”仕事をしていると言っているのだ。

5.この提案には、何か隠された意図があるのではないか?

(攻撃)隠された意図があるのは明白だ。それはどこか別のところでやってくれ。

(対応)それは不当な発言だろう!この提案を支援してくれる善良な人々がいることは、記録を追ってみればわかるはずだ!

6.これについてはどうか、あれについては? これは、あれは・・・?

(攻撃)その提案には、多くの疑問が残る。この問題はどうなのか、あの問題は、これは、あれは・・・?

(対応)よいアイデアでも、それが新しいアイデアであれば、確実には答えられない多くの疑問が提起されるものだ。

7.その提案は度を越している。この提案は、とても十分とは言えない。

(攻撃)その提案は、度を越している。とても十分とは言えない。

(対応)そうかもしれないが、このアイデアにより正しい方向へ踏み出せるし、これ以上遅れることなく進めるはずだ。

8.矛盾する問題を抱えているので先に進めない。

(攻撃)最初にAをやらなくてはBができない。でも、Aに手を付けずにBをやることはできない。だから、このプランはうまくいかない。

(対応)実際には、ほんの少しAに手をつければ、ほんの少しBを実行できるようになる。するともっとAを手がけることができ、それによってもっとBを実行できるようになる。こうして進められる。

9.「ほとんどの人が受け入れられないこと」のようにわたしには思える!

(攻撃)そのプランは何か良くないこと(全体主義、組織犯罪、不衛生、病気、内部腐敗など)を思い出させる。

(対応)いや、それは違う。現実的に比べるなら・・・

10.わたしたちの核となる価値観を捨て去ろうとしている。

(攻撃)わたしたちの伝統的価値観を捨て去ろうとしている。

(対応)このプランは、わたしたちの伝統的価値観を“守る”ために絶対に必要なものだ。

11.単純すぎてうまくいくはずがない。

(攻撃)何点かの単純な方策だけですべてが解決すると思っていやしないだろうね?

(対応)もちろんそんなつもりはない。大きな進歩を遂げるためには、あなたの協力と新しい試みを結びつけることが必要だ。

12.ほかに誰もやったことがない。

(攻撃)そんなに素晴らしいアイデアなら、どうしてこれまで誰も試していないのか?

(対応)何もかもが本当に初めてづくしの状況なのだ。だからこそ、わたしたちは特別な機会を与えられている。

13.両立は不可能だ。

(攻撃)あなたのプランはXとYについて述べているが、それは両立できない。一度に両方は無理だ!

(対応)そう聞こえたのかもしれないけれども、実際にはXとYとは言っていない。AとBと言ったのであり、それは両立可能だ。

14.どうだ!“これ”は否定できまい!(“これ”とは、提案者が知らない厄介ごとで、攻撃者は絶好のタイミングが来るまで伏せている)

(攻撃)よかれと思ってやっているのかもしれないが、お気の毒さま。あなたはこの問題をまったく見逃している。この問題の重要性を否定することはできないだろう!

(対応)あなたが提示した問題の重要性はだれも否定できない。それに、確かにわたしたちはその問題を詳しく調べてはいない。だが、これまで見つけた潜在的な問題は、容易に解決できた。それを踏まえると、その新たな問題も、これまでの問題と同様に対処が可能だという自信を抱いている。

15.こんなに多くの疑問や懸念が出てくるのだから、このアイデアには欠陥があるに違いない。

(攻撃)こんなにいろいろ懸念事項が噴出するなんて!アイデアがよくないにちがいない!

(対応)実のところ、多くの疑問が出るのは好ましい。みんなが積極的に関与しているということだ。積極的に関与しているグループは、優れた決断を下し、首尾よく実行できるものだ。

16.かつてそのアイデアを試したことがあったが、うまくいかなかった。

(攻撃)以前試したが、うまくいかなかった。

(対応)それは過去の話だ。状況は必然的に変化するものだ(それに、わたしたちの提案はその内容とまったく同じものではないかもしれない)。

17.難しすぎて理解できない。

(攻撃)大半の人はそのアイデアを理解できないだろうし、そうなれば当然実現させることもできない。

(対応)問題ない。納得してもらえるように必要な努力をするつもりだし、努力する価値はある。

18.アイデアはよくてもタイミングがよくない。

(攻撃)よいアイデアだが、今はタイミングが悪い。別件が終わるまで待つ必要がある。

(対応)絶好のタイミングというのは、気分が盛り上がり、何かを実現するために全力を注ぎたいと大勢の人が思うときだ。まさに今がそのときだ。

19.実現には、甚大な労力が必要だ。

(攻撃)本当に大変そうだ!わたしたちにできるかどうかわからない。

(対応)大変な仕事にはよい面もある。新しいアイデアが本当に素晴らしいものなら、時間を食う障害に直面したとき、わたしたちの活動能力は高められ、無駄な時間をなくそうという気が起こるものだ。

20.ここではうまくいかない。わたしたちはほかとは異なるのだから!

(攻撃)わたしたちはほかとはまったくちがうので、ここではうまくいかない。

(対応)確かにその通りだ。わたしたちはみんなちがうが、一方でまったく同じところもある。

21.それを採用すれば、歯止めがきかない。滑りやすい坂道へと追いやられる。

(攻撃)あなたは、断崖に続く滑りやすい坂道に立っている。今日少しでも動けば、明日は大きな災難に見舞われるかもしれない。

(対応)優れた人たちはいかなるときでも、災いを防ぐガードレールとして良識を用いるものだ。

22.必要な資金がない。

(攻撃)このプランは素晴らしいかもしれないが、新たな資金源がなければ実行に移せない。

(対応)実は重大な変革のほとんどは、新たな資金源がなくても達成されている。

23.十分な人数を納得させられない。

(攻撃)このプランに全員賛成するなんて不可能だ。

(対応)もちろんその通りだ。それはありえない話だし、それでかまわないのだ。

24.自分たちには、それを遂行する能力がない。

(攻撃)自分たちには、これをやり遂げるだけのスキルや資質がないのだ!

(対応)必要なことの大半は備えている。それ以外については手に入れることができるし、そうするつもりだ。

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