【インド人の「力」】レポート

【インド人の「力」】
山下 博司 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062883546/

○この本を一言で表すと?

 インド思想の専門家によるインド人論の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・著者の直接知っているインド人との付き合いや、インド滞在の経験を交えて、著者の専門のインド思想を絡めてインド人について論じられていました。

第一章 インド式教育とインド人の数学力

・徹底した暗記を求められる教育で、ある意味日本と似ていますが、その暗記で得た知識で教師とインタラクティブなやり取りを重ねることで知識を有効活用できるところが違うというは、日本と全く異なるなと思いました。
ビジネスマンになってもメモを取らず、記憶して仕事できるというのはかなり有利な能力だと思いました。

・昔インド人から片手で20数えると聞いてすごいなと思ったことがありましたが、一種のネタだったというのは初めて知りました。

第二章 インド人の言語力と英語能力―インド英語で世界へ

・世界で最も英語を使える人口が多い国はインドであることは知っていましたが、どのようにして英語を使っているか、その様子が詳しく述べられていました。
かなりの数の言語が存在し、国内ながら共通語として英語が使われているというのは面白いなと思いました。

・英語が当たり前の環境であること自体が、欧米圏で仕事をするにあたって有利で、また欧米圏のニュースや書籍にオンタイムで接することができるというのは、確かに強みだなと思いました。

・以前インド人にヒンドゥー語の日常会話を少しだけ教えてもらった時、所々に英語が混じっていて、この本で書かれているコード・ミキシングという言葉はまさにそうだったなと腑に落ちました。

第三章 自己を貫き通す力―インド人の発信力と交渉力

・インド人がとことん議論好き、過ちを認めないなどの資質は別の本でも読んだことがあります。

・私が知っているインド人は全員占いで相手を選んで結婚していて、文化が違うなと感じたことがありましたが、話し合いでの決定が困難で、親族が何かと口を挟んで収拾がつかなくなるというのはなるほどと思いました。
占いで選んだ後、結局親族が口を挟むという話も聞きましたが。

・疑うことが基本の文化で、オレオレ詐欺などが成功する余地がないというのは面白いなと思いました。

・図示する習慣がなく、全て文章で説明する文化だというのはあまり知りませんでしたが、図示・ポンチ絵での説明はあるていど背景が共通していないと理解できないため、一から説明するのが普通というのは多様な人々が入り乱れている国で背景が異なる人同士だとそうなるのかと気付かされました。

・インド人が数十人集まって数人のインド人を糾弾するためにやってきた現場に居合わせたことがありますが、この本に書いている通り、どれだけ険悪になっても手を出さず、口論で留まっていて驚いた記憶があります。

第四章 多様性大国の光と影―「個の力」がせめぎ合う国の人間模様

・インド人が強調することが苦手でチームプレイに弱いことはあまり知りませんでした。
オリンピックのメダルの数などにはっきり出ていますが、スポーツをする余裕がないこと、体を動かすことに価値を置かないことを考慮しても人口が世界2番目の国としては少なすぎるなと思いました。

第五章 混沌を力に―グローバル企業とインド人経営者たち

・インド人経営者のなかでもトップ企業で働いている人たちについて簡単な説明が書かれていました。

○つっこみどころ

・忍耐や持論の主張などの特質はともかく、この本で挙げられている「力」と言えるほどの教育を受け、能力を有しているインド人がどれほどの割合で存在しているかというと、ごく一部であるように思えました。
一部だけを切り取って「インド人はこうだ」と一般論のように展開していることには違和感がありました。
インドから日本に来るには、技術者とコックとしてしかビザが取れないらしく、技術者のインド人の知り合いはおらず、コックのインド人を知っているだけですが、この本で述べられている長所の特徴で思い当たるのは一部のみでした。

・第五章でインド人経営者とその特質について触れられていますが、第四章までに述べられているインド人の姿と異なり過ぎていて、「インド人だから」と説明されてもあまり説得力を感じませんでした。
「イエスと言えない持論を貫く、協力して物事を達成することが苦手なインド人・・・を束ねることができる」というのは、かなり苦しい繋ぎ方だと思えました。
シャーリン・リーのオープン・リーダーシップの5要素をインド人経営者が持っていると書かれていましたが、その通りだとしてもあくまで各人の資質であり、「インド人だから」とは言えない要素だと思いました。

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