【現代語訳 論語と算盤】
渋沢 栄一 (著), 守屋 淳 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480065350/
○この本を一言で表すと?
「日本実業界の父」渋沢栄一の言行録
○よかった点
第1章 処世と信条
・得意なときに災いが萌してくるというのは孫子の「智者の慮は利害に雑う」と同じことを言っているなと思いました。(P.41~)
第2章 立志と学問
・孔子の「十五にして学を志す、三十にして立つ・・・」の解釈で、十五で志すものの三十まで大いに迷ってようやくしっかりと志すものができる、という解釈は納得です。
また、「自分が十五の時にこれを志していれば・・・」という発想はいつの時代、いつの立場の人でも考えるのだなと思いました。(P.64)
第3章 常識と習慣
・習慣は根強いが老人になってからでも変えられるということ、努力が重要であること、座学だけでなく日常からも学べることがあることなど、基本ですが大事なことだなと思いました。
第4章 仁義と富貴
・「お金」の価値を見直しているのはこの時代を代表する実業家らしいと思いました。
孔子は経済的な利益を追求すること自体を否定していないというのは納得です。そもそも孔子は士官先を探して旅していたわけですし。
第5章 理想と迷信
・文明的かどうかの話を「軍事だけでなく経済など他の要素とのバランスがとれている文明が本当の文明」としているのは、この時代に生きている人では卓見だったのだなと思いました。
第6章 人格と修養
・「自分磨きが自分らしさをなくす」と言われて反論した話がありましたが、昔のバイト仲間に同じようなことを言って何も学ばずに大言壮語だけ吐く人がいたのを思い出しました。
いつの時代にも同じような人はいるものだ、と悪い意味でもそう思います。
第7章 算盤と権利
・キリスト教と論語を比較していて、渋沢栄一はいろんなことから学んでいた人なのだなと思いました。
第8章 実業と士道
・西洋の倫理の基は宗教だ、という見解は「道は開ける」でも出た話で卓見だなと思いました。
また、この時代の日本の商工業者が信用ならない、経済発展だけが進み商業倫理が追い付いていない、というのは現代の中国が思い浮かびました。
第9章 教育と情誼
・親孝行の話で、「自分の思い通りにならないから親不孝」という親は現代にもいるなと思いました。
また、論語の「今の人間は、名前を売るために学問をする」の話で渋沢栄一の時代にも当てはまるというのは学歴社会の現代にもあてはまるなと思いました。
あと、渋沢栄一が女性の権利についても憂慮しているのはこの時代には珍しかったのでは、と思いました。
第10章 成敗と運命
・ホーソン効果(ホーソン工場の実験結果)が証明されるより前に同じような人事マネジメントの考え方(職務拡大、職務充実がモチベーションを上げ、仕事の効果・効率も向上する)を渋沢栄一が語っていたのはすごいなと思いました。
また、「符読書城南」の話は「7つの習慣」の「第一の習慣 主体性を発揮する」に繋がる話で納得できました。
渋沢栄一小伝
・渋沢栄一の人生の波乱万丈さ加減はすごいなと思いました。お妾さんがいっぱいいて子供が何十人というのは、この人の行動力と妙にマッチしているなと思いました。
○考えたこと・思ったこと
・司馬遼太郎の小説で出てくる渋沢栄一は暴力団の片棒担ぎのように描写されていましたが、このような人物だったのかと見直すことができて良かったです。
・いろんな本で論語が引用されていて、『どれも深いな』と思い、全文を知ろうと一昨年に「論語新釈」を読んで、よく他の本で引用されているところはいいけど他の言葉はいまいちだな、と思いました。(映画の予告編で面白いと思って本編を観てがっかりするカンジ)
改めて渋沢栄一の解釈に触れて、「どのように」読むかということが大事なのだなと思いました。