• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【忘れられた日本人】レポート

【忘れられた日本人】
宮本 常一 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/400331641X/

○この本を一言で表すと?

 辺境に生きる人たちのありのままの姿を描いた本

○面白かったこと・考えたこと

・明治から昭和初期までの発展しつつある街ではなく、辺境の人たちが感じていた日常とその変化を書いた本で、歴史の表に出てきやすい街の日常とその変化を合わせてようやく日本全体が浮かび上がってくるような気がしました。

・辺境における高齢者の役割(智恵者、労働者等)がわかり、ジャレド・ダイヤモンド氏の「昨日までの世界」で書かれていた伝統的な民族の話と似ているところがあるなと思いました。

対馬にて、村の寄りあい

・寄合での相談の模様が時には何日もかけ、議題をころころと変え、気長ながら真剣で興味深いなと思いました。
現代の日本において、ここまで真剣に語り合う機会、相手はなかなかいないのではと思いました。

・著者が対馬で自分の足で調査をしていくところは街にある文献だけではわからないことを研究することの大変さと調査対象に対する執念のようなものを感じました。

名倉談義

・狭い世界でずっと生きてきた名倉の古老たちの、村にいた人のこと、起こった出来事を記憶していることはすごいなと思いました。
日本以外の伝統社会と同様に、古老たちが口伝えでこういったことを伝えていくことと、現代の文字で伝えていくことの違いが思い返されました。

・日清戦争、日露戦争などで、辺境の人たちがどう関わったのか、どういう思いを持っていたのかが万歳峠のエピソードで少し分かったような気がしました。

子供をさがす

・短い話でしたが、村において子供が大切なものと考えられていて、総出で探し回る様子が共同体の良さを感じさせました。

女の世間

・明治の農村の女性が家出などで一度は外の世界に出て見聞を広めて戻ってくるという話は初めて知り、興味深いなと思いました。

・田植えでエロ話をしながら作業をしている女性たちの様子からは、仕事と日常の境目の曖昧さを感じました。

土佐源氏

・橋の下で乞食をして暮らす盲目の人の人生語りで、そういった人の一人一人にいろいろな人生があり、「人に歴史あり」という言葉を思い起こさせました。
ばくろうの仕事をしながらいろいろな女性と関係を持ち、そんな中でも盲目になって三十年経っても妻が付き添い続けていてそれに感謝しているという話は、当人以外も含めて人生いろいろだなと思いました。
若干作り話くさい話だなと思いましたが、この話を世に出した時にそう指摘されて著者が怒ったという話が解説に書かれていて面白かったです。

土佐寺川夜話

・「人が通るから道ができる」ということが土佐の寺川の獣道と伊予の飢饉で苦しんで助けを求めてきて交流が始まってできた道を通して再確認できました。

梶田富五郎翁

・身寄りのない子供を「メシモライ」として船に乗せる習慣と、その環境で育った子供が成長して自分の生活を立てていくことが梶田富五郎翁の話を通して知ることができました。
人一人生きていくだけでも大変な状態で、こういった習慣が存在したのは興味深いなと思いました。

・港を開こうとするときに、岩を少しずつ運んで何年もかけて行って、ついには完成するというのは気長だなと思いましたが、こういった長期的な工事を協力しながら完遂できたこと自体が興味深いなと思いました。

私の祖父

・著者に大きな影響を与えたという著者の祖父の人生は、世に名を成したわけではない一個人でも誠実な人格者として存在していたのだということがわかってよかったです。
剣術に強くてもそれを見せびらかさず、老いてもずっと働き続け、日常の中で大事なことはしっかり覚え、周りにも教えていったという姿に感動を覚えました。

世間師(一)、世間師(二)

・「世間師」と呼ばれる奔放な人二人の人生が書かれていて、行き当たりばったりでひたすら旅してまわったり、その旅の中で得た経験や知識で何かをやってうまくやったり、形は違えど今でもこういった人たちはいるなと思いました。

文字をもつ伝承者(一)、文字をもつ伝承者(二)

・最後の話は、これまでの話と違って、著者が尊敬する同分野の先人の話でした。
自分が得た知識や経験を自分の為だけでなく地域の人のために使い、それぞれの地域で過ごしながらも他の地域の研究者とも交流を持つ、知識人で実践人でもある人の話が書かれていてすごい人たちだなと思いました。

○つっこみどころ、わかりにくかったところ

・書き方や内容が統一されておらず、何を伝えたい本なのかが半分ほど読んでもなかなか分かりませんでした。
後半に差し掛かってようやく感じ取れてきたような気がしました。

・いきなり本編が始まるので、どういった本なのかを掴みにくかった面があると思いました。
まえがきを置いて全体像を示していればだいぶ違ったのではないかと思います。