• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【高校野球の経済学】レポート

【高校野球の経済学】
中島 隆信 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4492314806/

○この本を一言で表すと?

 高校野球の仕組みを分析した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・高校野球が他の高校スポーツに比べてなぜ毎年よくテレビで放送され、ニュースでも取り上げられるのか、不思議に思っていましたが、歴史や仕組みを知ることである程度理解できたように思いました。

・「男子高校生の10人に1人が野球部」という帯で強く興味付けられて購入しましたが、本では直接触れられていないものの、この利害関係者の多さも根強い人気コンテンツとして続く理由の1つかなと思いました。

第1章 野球は”非効率”なスポーツ

・ほとんどの選手が動かないこと、時間が無制限であること、負傷する可能性が高く危険であること、他のスポーツより投・走・打・守と異なる種類の動作が多く練習時間が多く必要なこと、審判の裁量に左右されること、道具に金がかかることなど、様々な「非効率」について触れられていました。
その非効率さによる不確実性と観客にとってのストーリーのわかりやすさでドラマが起きやすく、注目されやすいというのは面白い見方だなと思いました。
あと、この「非効率」があるからプロがある国がサッカーなどよりも少なく、先進国に固まっているのかと思いました。

第2章 高校野球は”重要無形文化財”

・高校野球は「教育」の一環である、ということがそのあり方に大きく影響を与えているのだとわかりました。
教育だから学校間格差を減らすために登録選手を18人に限定する、教育だから入部を拒絶することを許さない、教育だからシゴキが認められる、教育だから「高校生らしさ」が重要視される、など不思議に思っていた縛りが「教育」ということを軸に集約されているのだなと思いました。
高校野球でパレードとか聞いたことないなと思っていましたが、それも「教育」だから商業性を徹底的に排除しているからというのは初めて知りました。

・徹底した無報酬主義でもあり、常駐の事務員等以外は理事も含めて全て無報酬のボランティアだというのも初めて知りました。
高校野球はプロ野球に比べてテレビ放映の延長等がなく、スケジュール通りに進むイメージが有りましたが、試合時間を2時間に収めることが原則というのは初めて知りました。

・野球が日本で始まった当初、「野球害毒論」という考えがかなり広まっていて、昭和に入ってから他のもっと心身鍛錬のできる活動に転換すべしという論調になり、そういった批判に耐えるために野球独特の精神性がアピールされるようになったというのは興味深いなと思いました。

・戦前の学生野球の歴史で、早慶戦で互いに過剰に熱が入り、勉学を捨てても応援するという空気になって中止になり、その後早慶戦が19年間開かれなかったというエピソードが面白かったです。

第3章 “聖地”甲子園の謎

・甲子園が日本で初めての本格的な球場で、アメリカの球場を参考にし、夏の大会に合わせて4ヶ月半で作り上げたと言うのは初めて知りました。

・商業性の排除の徹底から、ユニフォームの色の指定や企業広告の排除など細かく定められていることが書かれていて、改めてそういえばそうだなと気づきました。

・1試合2時間の原則を守るため、選手や応援団の入れ替えの作業フローが細かく定められ、特に応援団について到着時間の指定や入場の順番などが厳密に定められているというのは初めて知りました。
入口と出口を別にして流れを滞らせない、ボランティアが選手の荷物の片付けを手助けする、時間を守るため試合後のエール交換を禁止する、1回戦終了後に審判団や高野連の役員が運営の反省会をするなど、細部にわたって定められ、これまで毎回漏れなく実施されているのはすごい運営力だなと思いました。

・不祥事に対して高野連が過剰なまでに厳しい対処をするのも、「高校生らしさ」を守るためというのは、ある意味一貫しているなと思いました。

第4章 陰の主役・審判

・野球では審判の裁量が大きいが、高校野球ではさらに大きくなること、野球そのものだけでなく「高校生らしさ」や「時間内に収めることを阻害する行為」も審判する立場であること、審判もボランティアであるために人数不足が常に問題であり、高齢でも辞められない場合があり、試合に大きく影響していることなど、高校野球の審判に関する特殊事情がまとめられていました。

第5章 沖縄の高校野球に学ぶ

・沖縄が日本に復帰する前の甲子園参加等の歴史と、沖縄県民独特の「なんくるないさー」精神による勝負弱さ、それを改善して強豪校にした監督の話が書かれていました。

第6章 高校野球の将来

・「野球留学」に関する考察、高野連の取組みと合わせて、高野連以外の選択肢(プロ野球の育成コース:芦屋BC、東北楽天LSなど)も紹介されていました。それでもやはり高校野球を避けた選択肢は困難ということも伝わってきました。

○つっこみどころ

・この本の著者の著作はどれもそうですが、「経済学的手法で分析」していると記載があるものの、どこがその経済学的手法なのかこの本でもわかりませんでした。単なる分析としか思えませんでした。