【西洋美術史入門】
池上 英洋 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480688765/
○この本を一言で表すと?
西洋美術史という分野の説明と、考え方について触れた入門向けの本
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・美術史という分野について、その名称から思い浮かぶ美術の歴史と単純に考えていましたが、その美術が生まれた要因、背景や意味するもの等、かなり深く考えることのできる分野だと知れてよかったです。
・美術品の見方、視点などがわかりやすくかかれていたので、そういった方面に疎い自分でも美術鑑賞を楽しめるようになりそうだと思いました。
第一章 美術史へようこそ
・識字率が現代のように高くなったのは最近の話で、文字を読める人はごく一部だった時代が長かったこと、その読めない人たちには文章より絵画の方がよく伝えられたこと、という話が書かれていました。
・今ではインターネット等の媒体で知る情報を、当時の人たちは絵画を見て知った、というのは興味深いなと思いました。
また、絵に対する共通認識を探ることが「絵を読む」ということに繋がるそうですが、その分野である「図象学(イコノグラフィー)」も面白そうだと思いました。
「ダヴィンチ・コード」等の小説ではこの図象学で事件を読み解く内容になっていたのを思い出しました。
・絵を読むためのスキルとそのトレーニング方法が2つ書かれていて、これらが美術だけでなく、日常生活にも活かせるスキルと書かれていましたが、その通りだと思えました。
・スケッチ・スキルを鍛える方法として一枚の絵を30秒程度で特徴を捉えてスケッチし、メモ書きするということが紹介されていました。
また絵をデータの集合体として扱い、データ化するディスクリプション・スキルを鍛える方法として、二人一組になって、片方が一つの絵を見てそれを文章に記述し、もう片方がその文章をもとに再現する、ということが紹介されていました。
第二章 絵を“読む”
・記号を記号として認識するためのイメージ、イメージが象徴するシンボル、シンボルを組み合わせたアレゴリー(寓意画)、アトリビュート(固体認識のための属性を示す要素)、イコノロジー(図象解釈学)などについて書かれていました。
・イコノロジーにはある図像の成立過程とその背景をみる前段階におけるイコノロジーと、ある図像を選択した社会的・精神的背景をみる後段階におけるイコノロジーがあるそうです。
第三章 社会と美術
・美術品はその作成される背景があり、ニーズがあったから作成されたものであること、芸術家に依頼できる力のあるものの要請で作成されていること、という視点は、現代だと趣味で書く人もいるという観点から意外と見逃しがちかもしれないなと思いました。
・聖書等に書かれているシーンの絵画でも、作成される時代によって書かれ方が違うのは、その当時ごとのニーズが違うから、というのは面白いなと思いました。
第四章 美術の諸相
・創る者と買うものがいること、パトロンの存在、パトロンの移り変わり、画材のコストと耐久性などの経済原理と、技法やジャンル等の話など、様々な見方・視点があるのだなと思いました。
第五章 美術の歩み
・古代から現代までの時代ごとの美術品とその背景が説明されていました。時代背景や新たに生まれた思想・技法が繁栄されてきた西洋美術の歴史は面白いなと思いました。