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【物語 ポーランドの歴史 – 東欧の「大国」の苦難と再生】レポート

【物語 ポーランドの歴史 – 東欧の「大国」の苦難と再生】
渡辺 克義 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121024451/

○この本を一言で表すと?

 近現代をかなり重点的に取り上げたポーランド通史の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・ポーランドが「大国」だったことは、ポーランドの周辺の国の歴史によく出てきていましたが、どういった流れで「大国」になり、亡国になっていったのか、苦難のほうが長いような気がしますが、アップダウンがあって興味深い歴史だなと思いました。

・ポーランドの国名は「平地の国」という意味で、地政学的に重要な位置にありながら、国境を山などの自然に守られていないことから攻められやすいという話が他の本で載っていましたが、現在に至るまで「安全な国境」を持てない国は大変だなと思いました。

・絵画が昔から発展していたからか、前半で人物や戦争などの絵が載せられていて、当時の雰囲気が伝わってきたように思いました。

・全体的に、絵画や詩、映画などポーランド人が作り上げてきた芸術に触れている箇所が多かったです。

・各章末のコラムの内容が充実していて面白かったです。

序章 王国の黎明期

・タタール、ドイツ騎士団などの脅威に晒されながら国力を高めていった歴史の概略が書かれていました。

第一章 中世の大国

・マグナト(大貴族)とシュラフタ(中小貴族)で考え方も文化も異なり、シュラフタ民主政と呼ばれるようにシュラフタで構成された下院の意見を重視していた時代があったというのは興味深いなと思いました。

・プロイセン、トルコ、コサック、スウェーデンなどから攻められつつも撃退を続けた時代があったというのもすごいなと思いました。

第二章 王政の終焉と国家消滅

・周辺国の圧力に耐えられなくなり、ロシアに首都を囲まれたりして第一次ポーランド分割があり、その後の第二、第三の分割で国家が消滅したというのは、平地の国で複数の強国と国境を接する国の限界があったのかなと思いました。

・アメリカの独立戦争に参加して活躍したコシチュシュコなどが蜂起しても、大局が決まってしまっていた状態ではどうにもならなかったのだろうなと思いました。

第三章 列強の支配と祖国解放運動

・支配された状態で何度も蜂起したり、政党を立ち上げて活動しては捕らえられたりという活動が続けられ、対ナポレオン戦争や第一次世界大戦を経てようやく独立できたというのはなかなか過酷な歴史だなと思いました。

・同じような状況にあった国と比べると独立まで意外と早かったイメージもありますが、国民の教育レベルや国家への帰属意識、ポーランド人というアイデンティティが他国にもある程度みとめられていたことなど、様々な要因があるのかもしれないなと思いました。

第四章 両大戦間期

・独立後にソ連からの侵攻があったり、ドイツからの外交圧力があったり、国内では独裁政権が樹立されたり、ヨーロッパでは平和だったと言われる両対戦間期でもポーランドは大変な状況だったのだなと思いました。

第五章 ナチス・ドイツの侵攻と大戦勃発

・ドイツのポーランド侵攻から第二次世界大戦中にポーランドであった出来事が詳しく書かれていました。

・ポーランド政府がワルシャワを離れた後でもワルシャワ市長として残り、活動して処刑されたスタジンスキの生き様はすごいなと思いました。

・ドイツとソ連に分割統治され、ユダヤ人を収容する絶滅収容所などが建設されるなど、虐殺の場とされ、カティンの森ではポーランド将校3,000人がソ連に虐殺され、その中でも蜂起やドイツ高官の暗殺などの抵抗を示すなど、大戦開始から受難が続いている中での反抗もすごいなと思いました。

第六章 ソ連による解放と大戦終結

・ポーランドの抵抗勢力の中でも労働党・共産主義勢力の影響が大きくなり、亡命政府の発言力が次第に弱まってヤルタ会談以降はソ連に反対する者が弾圧されていくなど、ソ連の影響下に入っていく様子は、地政学的な位置づけもあり、当時の国際情勢では仕方なかったのかなと思いました。

・ポーランド人間諜からソ連の参戦を知った小野寺信がそのことを日本に伝えたことは知っていましたが、人は受け入れたいことだけを受け入れる、という典型的なパターンだなと思いました。
ソ連の協力を得て独立しようとしていたポーランド人のメンタリティも似たようなものだったのかもとも思いました。

第七章 社会主義政権時代

・ドイツの迫害からユダヤ人を守っていたポーランド人の話もあれば、ユダヤ人を虐待するポーランド人の話もあり、戦後は後者の色が強くなり、ユダヤ人がポーランドから出国する話が書かれていました。
国家が消滅しても途絶えないほどナショナリズムが強ければ、それは排外的な感情にも繋がるのかなと思いました。

・ソ連の影響力をうまく活用していたゴウムカの政権獲得とその凋落、スターリン主義が抑圧だけでなく好意的にも受け止められていたこと、ゴウムカの再帰と長期政権化、ゴウムカから政権を継いだギェレクの借金政策とその失敗など、戦後の枠組みの中で善人ではなくてもリーダーシップのある人物が国家を率いていたことが国家にとってよいことがあるのかなと思えました。
もちろん良いことばかりではないでしょうが。

・イタリア人以外の枢機卿がローマ教皇になったのが455年ぶり、という位置づけでポーランド人教皇ヨハネパウロ2世が選ばれたのは興味深いなと思いました。

第八章 民主化運動と東欧改革

・ソ連への抵抗勢力としての自主労働組織「連帯」については他の本でもでてきて知っていましたが、その蜂起が起きそうになった時に当時の代表ヤルゼルスキが戒厳令を敷くことでソ連の介入を避けることができた等、意図的だったかどうかはわからないですが、ソ連がアフガニスタンに侵攻した2年後だったこともあり、軍事介入は確かにありえてギリギリの先だったのかなとも思いました。

・「連帯」一強時代になっても「連帯」の中で分裂してワレサとマゾヴィエツキが対立するなど、権力が絡むとひと山越えるとまた別の山が現れる状況で大変だなと思いました。

終章 ポーランドはどこへ向かうのか

・ワレサ以降の政権の流れとヨーロッパの中でのポーランドの位置づけが書かれていました。

・若年労働人口くらいしか有利な点が書かれていなかったのが気になりましたが、自分でもポーランドは鉱山資源くらいしか思いつかず、それも今ではあまり栄えていないのかなと思うと、産業基盤自体が課題なのかなとも思えました。

○つっこみどころ

・著者が編著者として関わった「ポーランドを知るための60章」で著者以外の人が担当した章の内容が、前半でかなり引用されているのに参考文献に入っていなかったのが気になりました。
読み較べてみるとそのままとも思える記述もあったのでどうかと思いました。
また、内容を省略して転記しているために1ページあたりの人名の数が多くなっているところがあり、かなり読みづらくなっていました。

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