
【ヨーロッパ近世史】
岩井 淳(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480076379/
○この本を一言で表すと?
近世のヨーロッパを横断的に複数の視点で検証した本
○よかったところ、気になったところ
・「物語 ○○の歴史」シリーズなどで、ヨーロッパのいろんな国の歴史に触れてきたつもりでしたが、この本では国家の枠組みを超えた領域や、逆に一部に限定された地域などを採り上げてその特徴が説明されていて、いろいろ新たな知見が得られたように思えました。
・宗教、経済、帝国、戦争の4つの視点を切り口としてヨーロッパ近世を分析していましたが、それぞれ特徴が顕著だなと思いました。
・ヨーロッパ大陸の国家と、オランダ・イギリスを別の部で分けていましたが、確かにそれぞれ特徴的だなと思えました。
著者がイギリス史の専門家なので書き分けやすかったのもあるかもしれませんが。
・宗教の視点で、ヨーロッパ全体を通しての宗教改革の影響の大きさがよく伝わってきました。
解釈の違いからそこまで大きな話になっていったのは、印刷技術の発達もあって伝達しやすくなっていったからでしょうか。
キリスト教初期の三位一体を巡る争いでもお互いに相手を滅ぼすレベルで争っていたように思いますが、宗教者だけでなく全ての人が巻き込まれていくのはすごいなと思いました。
同時代の日本の仏教でも宗論で争って負けた方が相手を殺すようなことはあったようですが、規模が違うなと思いました。
・経済の視点で、国を超えた流通で物価騰貴などもあったということでしたが、それ以上にスペインが南米の銀を有していても破綻していき、フランスも財政を立て直せなかった一方で、オランダ・イギリスが財政軍事国家を志向することで財政が向上していったことなどが印象的でした。
宗教の違いで、新教徒やユダヤ人を受け入れたところが発展したことなど、複数の要素が絡んで経済につながってもいるなと思いました。
・帝国の視点で、大航海時代で植民地獲得の方向に向かったものの、産業革命と三角貿易で植民地経営を安定させたイギリス以外は獲得した植民地が重荷になっているところが印象的でした。
・戦争の視点で、この時期の戦争の多さと規模はなかなかすごいなと思いました。
宗教が絡んだり、経済的な要因が絡んだり、植民地の争いが絡んだり、戦争の多さが経済破綻につながってフランスではフランス革命につながったり、戦争が様々な原因や結果になっているなと思いました。
・それほど大きく扱われていなかったかもしれませんが、国家の枠を超えた人的交流の効果が大きいなと思いました。
オランダの流れを汲んでイギリスが財政軍事国家化に成功したり、啓蒙思想家の様々な場所での活動があったり、人を介した知識・ノウハウの移動が大きな変化につながっていることも大きそうだと思いました。
○つっこみどころ
・「複合国家」という概念は説明に便利だとは思いますが、完全な国民国家・単一国家でない限りは複合国家だと説明できそうで、幅広すぎてその特徴がぼやけていたように思いました。
読み返した時に序章でアメリカも複合国家としてあったのでやはりそこまで含まれる概念になるなと思いました。