【ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち】
レジー (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4087212335/
○この本を一言で表すと?
簡単に教養を摂取できる「ファスト教養」を取り巻く環境について説明した本
○よかったところ、気になったところ
・「ファスト教養」という言葉はこの本の著者の造語らしいですが、「ファストフード」「ファスト映画」などの言葉から内容をイメージしやすいうまい言葉だと思いました。
・ビジネスのため、それも内容の活用ではなく周りに合わせるために教養を摂取する必要がある世の中になっていて、「ファスト教養」のコンテンツのニーズが高まっているというのは、背景も含めてあまり自分の身近な話ではなく、新鮮に思いました。
第一章 ファスト教養とは?―「人生」ではなく「財布」を豊かにする
・教養の定義自体が明確なものではなく、「ファスト教養」のようにビジネス・金儲けに直結して教養を捉えることも昔からあったというのはなるほどと思いました。
ただ、それでも「ファスト教養」が特異に思えるのは、その摂取の仕方が大きく異なり、その目的が露骨すぎるからでしょうか。
金儲け目的でも時間をかけて得た教養は人生において様々な応用が利きそうですが、「ファスト教養」の手法で得た教養はそのまま利用することすら難しいように思いました。
第二章 不安な時代のファスト教養
・「ファスト教養」のコンテンツの内容について、典型例である「中田敦彦のYouTube大学」の中身を詳細に説明していて、「ファスト教養」についての感覚がよく分かるように思いました。
第三章 自己責任論の台頭が教養を変えた
・著者自身の経験と、同世代で活躍したホリエモン・勝間和代・橋下徹などの言動の紹介で、自己責任論の隆盛から「ファスト教養」が求められるまでの経緯がよくわかったように思いました。
第四章 「成長」を信仰するビジネスパーソン
・読書会で会った人へのインタビューの内容が紹介され、どういった人たちがどういった環境に置かれ、「ファスト教養」を必要しているかがよくわかったように思えました。
第五章 文化を侵食するファスト教養
・「花束みたいな恋をした」という映画の内容を通して、「ファスト教養」の価値観に染まっていく若者の姿が提示されていて、典型例としてわかりやすいなと思いました。
・「教養」が書籍名に入っている書籍が羅列されていましたが、ポップ・カルチャーまで教養のカテゴリーに入れていることがよく分かる例だなと思いました。
有名人・スポーツ選手などのインフルエンサーを成功例として、それにあやかろうとする人たちの話は、昔からよく聞く話だなと思いました。
第六章 ファスト教養を解毒する
・最初に参考文献に目を通して、「イシューからはじめよ」が載っていて、この本も「ファスト教養」のコンテンツになるのかとドキッとしました。
問題の発見・本質追求・解決の本として、自分としては同系統の本で最高峰の本だと思っていましたが、第六章で「ファスト教養」に対する処方箋として紹介されていてホッとしました。
○つっこみどころ
・「ファスト教養」について、前半ではYouTubeのコンテンツのような短時間で教養を摂取することかと思いましたが、後半では教養と銘打って様々なジャンルの知識を売り出すことを指していました。ファスト教養の定義自体がぶれているように思えました。
・第六章で「自己啓発より知識」をファスト教養への処方箋のように書いていましたが、第二章で紹介しているファスト教養のコンテンツは知識の簡易習得を目的にしているものがほとんどですし、ファスト教養と自己啓発に因果関係がないとまでは言いませんが、それほどの相関関係はないのではと思いました。
・第六章は「ファスト教養を解毒する」というタイトルでしたが、内容がふわっとしていてあまり解毒していないように思えました。
解決策を提示しないと話を締められないとして無理にひねり出そうとしたからでしょうか。