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【唐】レポート

【唐 東ユーラシアの大帝国】
森部 豊 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121027426/

○この本を一言で表すと?

 唐を中国王朝としてだけでなく、東ユーラシアの勢力として捉えて唐の近隣の情勢も含めて述べた通史の本

○よかったところ、気になったところ

・唐の成り立ちから滅亡までの通史の本として、王朝内の動きや王朝外との関係の移り変わり、王朝自体の変化などが大枠でつかめるようになる本でした。

・唐については、日本が遣唐使を派遣して文化や政策などを吸収していったことや、「貞観政要」などの帝王学の文書なども書かれたことなどもあって、洗練された中国王朝というイメージ・固定観念を持っていましたが、漢民族以外の遊牧民族由来の王朝だったことや、近隣との勢力争いで拡大縮小を繰り返していたことなど、現在の中国の範囲ではなく東ユーラシアとしての位置づけで見るとまた異なった見方ができるのだなと思いました。

・ところどころでルビが読みがなではなく意訳になっているのが新鮮で面白かったです。
「用度を節える(ひつようけいひをほどほどにおさえる)」「凶賊無頼(アウトロー)」など。

・現代中国では弾圧の対象としてよくニュースになっているウイグルやチベットが、唐の時代には強大な勢力として登場しているのは興味深いなと思いました。
科学技術などの前提が異なると同じ地理関係でも関係性が大きく変わってくるのだなと思いました。

・中国唯一の女帝である武則天の話は、名前だけは様々な本で出てきていたので知っていましたが、かなり深掘りされていて興味深いなと思いました。
武則天が王朝を乗っ取る話は史記に記されている漢の呂后に似ているなと思いましたし、妖僧薛懐義との話は孝謙天皇と道鏡の話と似ているなとも思いました。

・「安史の乱」が唐の変化の画期だったというのは自分はあまり知りませんでしたが、安禄山の動きと当時の皇帝の動きを見ると相当の混乱ぶりだなと思いました。
安禄山が体重200キロ前後だったことと、その体重で片足で立ってくるくる回るソグディアンダンスを得意としていたというのは面白い話だなと思いますが、無理があるのではとも思いました。
「少林サッカー」という映画のメイキングでかなり太ましい男性が軽功で飛び回るシーンを極太のワイヤーで釣って撮影していましたが、同じようなトリックでそういうイメージを仕込んだのかなと想像しました。

・唐王朝の後半では宦官の権力が強くなり、皇帝も脅かされるような勢力になっていました。秦漢時代でも宦官が権力を持っていたり、歴史は繰り返されるのだなと思いました。
ただ、秦漢時代は文官としての権力でしたが唐代の宦官は武力も持っているのが印象的でした。
明の大航海を主導した鄭和などもそうですが、宦官自身が強いというのは秦漢時代との差異を感じて興味深いなと思いました。

○つっこみどころ

・勢力の移り変わりがメインで、文化史や経済史に関わる記述が薄いことが残念でした。
日本では江戸時代でも「唐様」というように後々でも中国由来のものは唐のイメージで語られていることの理由などは分からなかったなと思いました。
また、日本では宋銭が重視されていて唐の貨幣についてはあまり重視されていなかったようですが、唐でも両税法として銭と現物の両方で課税されていたそうで、唐の貨幣流通もそれなりに重要そうですがそこにはあまり触れられていませんでした。
勢力の移り変わりだけで300ページ以上の本になっているのでそれ以上盛り込めなかったのかなとも思いますが。

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