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【もういちど読む山川世界現代史】レポート

【もういちど読む山川世界現代史】
木谷 勤 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4634640686/

○この本を一言で表すと?

 悲観的な取り上げ方をした世界現代史の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・「近代世界システム論」をベースとして、19世紀後半から20世紀の終わりまで書かれていました。世界史という広大な範囲の概観というよりは、トピックを摘まみながら書かれている印象でした。

・「近代世界システム論」の「中心」「半周辺」「周辺」で国家を区分する考え方が最後まで貫かれていましたが、端的で一面的ではあるものの、それなりに分かりやすい見方を与えてくれたように思いました。

第1章 帝国主義時代の開幕

・帝国主義でも「先進」と「後進」があり、それぞれの動きの違いが興味深いなと思いました。
植民地の拡大が進み、人口増加と人口移動が顕著で、特にヨーロッパからアメリカへの移住の人数がすごいなと思いました。

第2章 植民地での従属と抵抗

・植民地で起こった抵抗運動が地域ごとに述べられていました。
一切抵抗なく植民地となったところはなく、どこでも抵抗運動は起きていたような書かれ方がされていました。
インドは植民地経営として黒字だったようですが、それ以外は大体赤字だったと聞いたことがありますが、この抵抗運動などもその原因の一つかなと思いました。

第3章 第一次世界大戦の激動

・第一次世界大戦前の社会主義の興隆について章の半分のページを割いて書かれていました。
戦争そのものはさらっと結果だけが書かれていた印象です。この戦争で勢力図が大きく変わり、「中心」と「半周辺」の入れ替わりや力関係が大きく変わっているということが興味深いなと思いました。

第4章 ロシア革命とヴェルサイユ体制

・ロシア革命とドイツでの社会主義運動について書かれていました。
ロシア革命の動きは一般的な書かれ方でしたが、ドイツでも社会主義運動が一時期活性化したものの、内部での意見の相違が大きく、実を結ばなかったというのは、大きな主張でまとまれなかった時の現代の政党政治と似ているなと思いました。

第5章 民族解放闘争の新展開

・中国での運動についてメインで書かれていました。
中国で運動をまとめ切れなかったとはいえ、孫文の存在はやはり大きく、また孫文以後は蒋介石と毛沢東の闘争に変わったことが大きな流れだなと確認できました。

・切り取られる一方だったトルコをまとめたケマル・アタチュルクは、この時代の「半周辺」「周辺」の立ち回りとしてはかなり秀逸だったのではと思えました。

・コラムでガンディーが国民会議派で主体的に率いなかったことを批判していて、珍しい論調だなと思いました。

第6章 危機の20年

・戦間期は平和な時代だったと語られることも多いように思いますが、この本では危機としてのみクローズアップしていました。
イタリアではファシスタ党が1922年にはローマ進軍で政権を奪取していたのは、かなり早く、その後の動きを先取りしていたのだなと思いました。

第7章 第二次世界大戦での破壊と苦悩

・第二次世界大戦の戦争の内容にはさらっと触れているだけなのが印象的でした。
むしろ戦後の被害の集計や、経済・政治への影響に焦点があたっている印象でした。

第8章 戦後世界の展開

・戦後すぐに冷戦が始まったという内容と、中国で共産党が勝利したことの影響がクローズアップされていたように思いました。
中国で共産党が勝利していなければ、朝鮮戦争が起こっていたのかも分からず、日本の占領政策も大きく変わっていたのかもしれないなと思いました。

第9章 現代世界の多極構造

・戦後のアメリカを「パクス・アメリカーナ」と表現しつつ、あまりアメリカの一強だったということには触れず、社会主義国側の動きがメインで書かれていました。第三世界での飢餓や紛争などもクローズアップされていました。

第10章 冷戦の終結とグローバリゼーション

・ソ連崩壊とアメリカ「帝国」崩壊を同列で述べ、格差社会が進んでいることへの警鐘で終えていました。

○つっこみどころ

・世界史全体となると膨大なボリュームになるので、この本のボリュームに収めるなら概観に触れるにとどめるか、トピックを摘まんで紹介するかのどちらかになると思いますが、この本では後者で、かなり偏った選択がされていて世界史の全体像がつかめない本だなと思いました。

・最初から最後まで、悲観的な出来事をかなり拡大解釈して書かれている印象を受けました。
教科書的に教訓としてそのようにしているのかもしれませんが、過度に悲観的な内容が確定的に書かれていて違和感が強かったです。
特に日本については悲観度が過剰で、著者の反省を促す意思が溢れすぎているように思えました。

・左、右のどちらに対しても批判的に書いているようで、左の内容についてはかなり手加減して書かれていて、結果としてかなり左寄りに思想が偏った著者の手による本だという印象を受けました。
「ブルジョア」「プロレタリア」などの単語も頻出していた印象です。規模の異なること、例えばソ連崩壊とアメリカ一強時代の終焉を同レベルで述べていたり、かなりの偏りが見られたように思います。

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