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【恐怖の地政学 ―地図と地形でわかる戦争・紛争の構図】レポート

【恐怖の地政学 ―地図と地形でわかる戦争・紛争の構図】
ティム・マーシャル (著), 甲斐 理恵子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4865810765/

○この本を一言で表すと?

 地形が国際政治に与える影響について分析された本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・自分が初めて地政学に触れたのが「100年予測」で、かなり衝撃的で後半はSF的な展開になっていて面白かったですが、この本は過去、現在、未来を地政学で示すというコンセプトでしたが未来は控えめで、落ち着いた内容の本だなと思いました。

第一章 中国―自然の巨大要塞と十四億の巨大不安

・中国は地形として山に囲まれた立地にあること、その内側にあるチベットや新疆ウイグル地区の独立を中国が認めるはずがないことなどが述べられていました。

第二章 ロシア―果てしない大地と凍り続ける港

・ロシアの政治の中心であるモスクワが平原に囲まれていることから国境を遠ざけたい、という意識については司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」などでも描かれていたことで、国際的な共通認識なのかなと思いました。

・ウラル山脈から東側の地域についてはそれほど触れられていませんでしたが、ロシアにとって他者には譲れないものの、重要度が高いのは西側のヨーロッパに接している地域なのかなと思いました。

第三章 日本と朝鮮半島―侵略されたことのない国と虚勢を張る弱虫

・北朝鮮を「虚勢を張る弱虫」の演技をしている、という遠回しな表現で述べているのが印象的でした。

・北緯三十八度線の北朝鮮と韓国の国境は、現地を知らない者が区切ったものだったことなども述べられていました。

・日本についてはざっと接する国との関係が紹介されているだけでした。

第四章 アメリカ―地形によって運命づけられた史上最強の国

・アメリカはその立地が圧倒的によく、シェールオイルの採掘が更に独立した強さを強めることが書かれていました。

第五章 西ヨーロッパ―位置と地形に恵まれた楽園を脅かすほころび

・ヨーロッパはその立地上からフランスとドイツが競合すること、ポーランドが東西の通り道になっていることなどが書かれていました。

・川が合流していないことから明確に交流エリアが区分けされるという考え方は興味深いなと思いました。

第六章 アフリカ―天然資源と人為的国境線に苦しめられる人類の生誕地

・アフリカが人為的な国境線で民族が対立して紛争が頻発すること、資源を外国や自国のごく一部の者に搾取されていることなどが述べられていました。

・南アフリカでは蚊が飛ばないという地形上の利点があったというのは初めて知り、なるほどと思いました。

第七章 中東―引かれたばかりの脆い国境線と血にまみれた道のり

・中東ではイギリスやフランス主導の国境線が民族や宗派と一致していないことから混乱が大きいこと、イランが中東の国家の中でも有利な立地を占めていることなどが述べられていました。

第八章 インドとパキスタン―三千キロにおよぶ国境線と永遠に続く敵意

・インドとパキスタンの間での必然的な争いや、カシミール地方の国境がインダス川の水源に関わる重要事項であること、中国も関わって更に重要度が増していることが述べられていました。

・インドとパキスタンが中国との関係からインド洋でも競合関係にあることも述べられていました。

第九章 ラテンアメリカ―北アメリカと対照的な地形の不運

・ラテンアメリカの他の大陸から遠いという立地が不利だと述べられていました。

・ブラジルは国土の開発に不利な立地で、アルゼンチンは有利な立地というのは、言語圏等の視点から見れば意見が変わってきそうだなとも思いました。

第十章 北極海―新たな戦場となるか、強欲に打ち勝てるのか

・北極海が通行可能になり、資源を発掘可能になることでまたルールが変わりそうだということが述べられていました。

・参入可能なアメリカがロシア等に比べてそれほど意欲的ではないということが印象的でした。

○つっこみどころ

・原題が「Prisoners of Geography」で「地理に囚われた人々」というところでしょうか。
邦題はかなり無理があるかなと思いました。
本文でも「恐怖の地政学」が使われているところを見つけましたが、これも無理やりでしょうか。

・翻訳ミスなのか原文のミスなのか、誤った内容がちょくちょくありました。

・出版されてから3年強で、書かれていた見解がかなり外れているように思いました。
地形だけで考察する限界があるのかなと思いました。

・掲載されている地図で本文の内容をフォローし切れていませんでした。
細かいエリアごとの地図があればよかったなと思いました。

・アジア圏の考察が少なく、雑だったなと思いました。
アフリカについては詳細が書かれていたので、著者のイギリスという立地での立ち位置が分かるなと思いました。

・各章のページ数が少なく、各地域の考察が浅いのが残念だなと思いました。

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