
【司馬遼太郎の時代 歴史と大衆教養主義】
福間 良明 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121027205/
○この本を一言で表すと?
司馬遼太郎氏の伝記と、司馬作品とその時代受容に関する本
○よかったところ、気になったところ
・司馬遼太郎氏の来歴について幼少期から述べられていて興味深かったです。
二流、傍流の育ち、学歴、職歴だったことと、その中での読書に塗れた育ちの話など、初めて知ることも多く、面白かったです。
・時代背景と司馬作品の相互関係が一つの主題とされていました。
教養主義とその後継としての歴史ブームがあり、その歴史ブームの時代に司馬作品の中期以降の「余談」の多い文章がマッチしたこと、文庫という形式の持ち運び安く読みやすい媒体と、サラリーマンの通勤がマッチしたことなど、流行の背景も述べられていました。
・大河ドラマの原作になったことも流行のきっかけの一つだと思っていましたが、司馬作品原作の大河ドラマの視聴率はイマイチで、直接的には司馬作品の売れ行きにそれほど影響はなかったことは意外でした。
後に文庫本の時代になって大河ドラマの原作だったということも売りの一つになったとは書かれていましたが。
・明治という時代を美化しているという批判があることは知っていましたが、明治時代の明るい点だけでなく暗い点も司馬作品には書かれていて、美化一辺倒ではなかったと思います。
ただ、読後の印象は明治時代の明るさが強かったので、批判する側の気持ちもわかりますが。
・司馬作品を読んで、「歴史に学んで人生・ビジネスに活かす」という潮流は、司馬遼太郎氏の意図するところとは違っていて、司馬作品の内容もそういった文章ばかりではない、というのは、自分でも読んでどちらの立場もよく分かるなと思いました。
自分も司馬作品を読んで「現代にも通ずるところがある」と人生・ビジネスの教訓を得ようとしたことがあります。
今思えば恥ずかしい限りですが。
ただ、そうでない箇所も読み飛ばしたわけではないんですが、読後に頭に残るのはどうしてもそういった「素晴らしい人物・素晴らしい行動」ばかりであったように記憶しています。
・司馬作品の「余談」は自分もかなり好きで、司馬作品を読んだだけで「歴史通」になった気になっていた頃もあり、歴史家からの批判はわかるような気もします。
・司馬作品が時代精神に適合していたから流行したというのであれば、その時代が変わってゆく現代・未来では古典としてしか読まれなくなっていくのかなと思いました。