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【ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣】レポート

【ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣】
牧田 幸裕 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492502130/

○この本を一言で表すと?

 ラーメン二郎を事例とした経営学・・・というよりも二郎ラブの本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・二郎系ラーメンは結構好きですが、まだラーメン二郎には行ったことがなく、いつか行こうと思っていましたが、その思いが倍以上に強化されました。

・この本を通して一つのテーマ「ラーメン二郎・二郎系ラーメン」を本一冊に広げることができるというなかなか珍しい事例を見せてもらった気がします。

PART1 ラーメン業界はハンバーガー業界、牛丼業界と何が違うのか?―業界環境を分析する

・競争変数の多寡、スケールメリットの有無の軸で考えるアドバンテージ・マトリクス(特化型企業、規模型企業、分散型企業、手詰まり型企業)は初めて知りました。
考え方・コンセプトはイマイチですが、誰かに説明するときには重宝しそうな図だと思いました。
業界トップ3の占めるシェアの割合が大きく異なることは知っていましたが、規模が有効かどうかの区別がとてもつきやすいなと思いました。

PART2 二郎に行列しているのは誰なのか?―セグメンテーションとターゲッティング

・ポーターの競争戦略上でラーメン業界は差別化の方向が有効というのは自明な気がします。
コストリーダーシップを狙って一杯180円をウリに店舗を拡大したびっくりラーメンは結構あっさりと沈んでしまったように思います。
立ち食いソバが流行っていることと比べて、ラーメン屋というカテゴリーから抜け出せなかったのが敗因でしょうか。

・ラーメン二郎がターゲットを狭く深く掘り下げる顧客深耕戦略だというのはわかる気がします。

PART3 なぜ二郎は二郎という食べ物なのか?―ポジショニング

・「どこが一番うまいラーメン屋か?」と聞かれた時に答えるのが難しいというのは、ラーメンの多様性を確かに表している気がします。
著者の語りは加熱しすぎている気がしますが、それでも二郎系ラーメンにはなぜか他のラーメンとは異なるカテゴリーに含めてしまうというのは間違っていないと思います。

PART4 なぜ二郎はボリュームたっぷりでこってりなのか?―コア・バリュー

・特徴をこれでもかと打ち出すこと、客に妥協しないことの重要性は、ラーメン二郎と結びつけるのは強引ですが、大事な考え方だと思いました。
ラーメン二郎がとことんまで尖った製品(大ボリューム・超こってり)というのは確かにそうだなと思いました。

PART5 駅から20分を超える立地でも、なぜ大行列なのか?―チャネルとオペレーション

・立地産業と言われる飲食店でありながら、二郎系ラーメンの人を吸引する仕組みはすごいなと思います。
店内のオペレーションに客が関わっていくスタイルも確かに自分が関与することで快くなるという面があり、意図的だったかどうかはともかく居心地の良さにも貢献しているように思います。

PART6 宣伝なしで、なぜオープン初日から大行列なのか?―プロモーション

・ネット時代、双方向コミュニケーションの時代になって、必要なのは「つっこまれ力」だと電通と博報堂のSNSを専門にした人の対談で書かれていて、二郎系ラーメンはまさにその「つっこまれ力」を持った商品だと思いました。

・希少性をウリにすることが有効だとは知っていましたが、ラーメン二郎の新店で各店舗のオールスターというのは確かに元々あるリソースを有効活用した希少性の出し方だなと思いました。

PART7 なぜ二郎は急成長しても、山田総帥の経営哲学がきちんと受け継がれるのか?―組織設計と組織文化

・組織文化が深く浸透してそれが受け継がれていく仕組み、組織が大きくなっても浸透される仕組みとして徒弟制度のようなラーメン二郎の制度は有効そうだなと思いました。
他事業に展開するのは難しそうですが、何かのヒントにはなりそうです。

PART8 なぜジロリアンは、身も心も二郎に魅了されるのか?―消費者行動の進化

・顧客を富裕層・ミドル層・貧困層というように区切るより、こだわるモノ・こだわらないモノと区切る二極化の考え方は、何にでも通用するわけではないと思いますが、なるほどと思いました。
お金を持っていなくても出すところには出す、お金を持っていても出さないところには出さないというのは当然の話だなと思います。
貧困国と言われるところでも家電などのニーズがあることもこの話に繋がりそうです。

・長期関与・一時関与の軸と感情関与・認知関与の軸の2軸で考える消費者関与のフレームワークはなかなか興味深いなと思いました。
例として書かれているジロリアンの二郎に対する関与と幼稚園児のスーパー戦隊に対する関与のポジショニングはイマイチ実態に合っているとは思えませんでしたが。

PART9 時代の進化とともに、二郎はどう変わっていくのだろうか?―時代の変化を読み取るフレームワーク

・自分が進まず、時代が進めば相対的には遅れていくというのは自分の成長というテーマで考えたことがあります。
流行にまどわされない、メインストリーム以外にも商機を見いだす考え方も確かに重要だと思いました。

○つっこみどころ

・経営学の考え方をうまくラーメン二郎に結びつけているようにも思えましたが、二郎愛が強すぎて、経営学の素養がある人にとっては目新しいことが何一つなく、経営学の素養がない人にとってはラーメン二郎に関する知識しか頭に入らないような、誰にとっても得るものはない本になっていました。
著者の他の本は得るものが多い本だったので残念です。

・ジローだけに26にしたかったのか、26の視点のレベル感にバラツキがあり、無理にひねり出した感があります。

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