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【まるごとわかる中東経済】レポート

【まるごとわかる中東経済】
日本経済新聞社 (著, 編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532353483/

ドバイ

石油資源のない小さな寒村から中東最大の企業集積地に
元々は地理的な条件を活かした中継貿易の交易都市
1970年代から2つの重要な意思決定を下す。
・港建設と自由貿易地区創設
 ⇒外資100%の現地法人設立、法人税・所得税の免除、利益の全額送金容認
・エミレーツ航空の設立
 ⇒積極的な拡大路線⇒ドバイを経由することによりホテルや集客施設を設立⇒ドバイ自体を観光地に

スーダン

紛争が絶えない国家⇒但し、中東投資家からすると魅力的な投資対象
世界のクレーン建機の3割が集まるのがドバイ。その次くらいに建機が多い・・・らしい。
米国の経済制裁が現地企業にとって競合が減る好機に。

中東各国のモデルは二極化:
・経済成長の追及に特化した「ドバイ・モデル」
・経済制裁を覚悟しながらアメリカやイスラエルに立ち向かう「イラン・モデル」
⇒「ドバイ・モデル」を目指す国家が大半
☆中東では紛争激化と経済成長は共存できる!

オイルマネーの行方

米同時テロ後に聖地へ流れ込み、建設ラッシュへ⇒中東域内で還流

エジプト(2009年1月時点)

改革三銃士(モヘディン投資相、ラシード通商産業相、ガリ財務相)⇒投資家に聞き取り、十四項目の障害が浮上⇒改善例)許認可が三ヵ月かかっていた状態からワンストップ体制にして72時間以内に完了できるように

日本から輸出可能な品目

高品質農産物(メロン、リンゴ、イチゴ)、寿司(チェーン店が現地水産物から作るノウハウを形成)、百円均一ショップ(中流階級の創出による一般消費財のニーズ)⇒大型建設の受注以外にもある

産業の多角化

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと住友化学が合弁会社ペトロラービグを設立し、1兆円以上の予算をかけて石油精製と化学工場を稼働⇒現在、計画よりは遅れているが稼働してる。
投資会社の投資先は金融業界、製造業界。
欧米以外では中国がトップ営業で日本より優位を築いている。

原油

原油が投機商品になってしまっている。また、石油精製能力が需要に対して数%しか上回っていない状態なので(2009年1月時点)、余剰能力が少なく、またなにかあれば石油価格が上昇すると考えられる。
イスラエルが有する地中海の海中パイプラインが利用できれば運送コストが改善される。(今はスエズ運河経由なのでその利用可能な能力が物流のボトルネック)⇒イスラエルがこれまで関係なかった原油運送の主要経由地になるかも。

産油国の原油依存

産油国は原油価格を低く見積もることで国家収入の変動リスクをヘッジしている。先高感も根強くあるので原油価格急落後も社会不安には直結しない。

政府系(ソブリン)ファンド

2008年半ばには中東産油国や中国、ロシアなど世界に約40組織で保有資産はヘッジファンドを上回る規模に。
きっかけは中東産油国の政府系ファンドが世界の金融機関に投資したから。⇒さらにサブプライム問題に端を発した金融危機で世界の金融機関から支援を求められた。
今後、世界は多極化し、その一極に政府系ファンドがくると考えられている。
「使い切れない」資金を国の発展に投資

イギリス

オイルマネーを呼び込むための工夫・・・イスラム法の解釈に反しない制度を整備。手数料が高いため、うまみの大きな商品に。⇒イスラム教徒に向けた魅力ある受け皿を用意
証券購入の経由地となっているため、中東の富の伸びとロンドンの取引高がリンク

産油国のお金の使い方

王族の徹底した慈善事業の投資⇒但し、分配方法は秘密会合で(超不透明)
オイルマネーは「神からの贈り物」という国民感情⇒一部の政治指導者の手腕に委ねられている。

イスラム教

5つの義務

 ・信仰告白:アラーが唯一神であることと、ムハンマドが神の使徒であることを唱える

 ・礼拝:未明、正午、午後、夕方、夜の5回メッカに向かって祈る

 ・喜捨:寄付行為。金持ちの義務

 ・断食:太陰暦の聖なる月「ラマダン」の1ヶ月間の日の出から日没まで飲酒や喫煙、性行為を禁じる

 ・巡礼:聖地メッカに礼拝に行くこと。五行の中で唯一経済的余裕がある人は行うべき、という注釈付き

断食月は日没後普段よりにぎやかになる(断食月に太る人もいる)
イスラム教はアラブ商人の間で広がった宗教であるため、経済活動については実は好意的

イスラム教の経済への影響

中進国が多く、それぞれが先進国経由で取引しているので経済的な結びつきは強くない。
ただ、イスラム教国で連合を組んで、その中で存在感を出していくという戦略が採られる可能性がある。
トルコ・・・EU一辺倒から中東との関係強化に方針転換(2009年1月時点)
マレーシア・・・ルックイースト政策で成功した姿勢を中東諸国が見習う動きがある。
米投資銀行が提唱した「ネクスト11」のうち7ヶ国はイスラム圏
イスラム圏では人口が増加しているため、将来は世界人口の3分の1がイスラム教徒になる。

イスラム金融

宗教的な縛りがあるが、実は仕組みはあまり変わらない。選ぶかどうかは「好みの問題」
教義的なタブーに関連する企業やプロジェクトへの投資は避けている。
⇒事業内容が吟味されてから投資されるため、「理想の金融業」とされることも
⇒宗教や政治主導でなく、イスラム教徒間で自発的に始まっている

非イスラム教企業の中東ビジネス

中東最大の通信事業会社「オラスコム」はキリスト教コプト教徒
中東の企業はトップに権力が集中するため、意思決定が速い(日本は遅いと評判)

紛争と経済

対立構造

イスラエルVSイラン、イスラエルVSアラブ諸国、イスラム過激派VS穏健派、シーア派VSスンニ派、アラブ諸国同士の主導権争い、、、

イスラエル

アラブ諸国間の分裂狙いから団結狙いに方針変更⇒非アラブのイランに対抗

政策として理想より現実が重要

事態が流動的

武装組織の存在感

イラン、シリアの援助。福祉などにも力を入れて、住民の支持を得ている。
⇒穏健派と過激派の対立
⇒スンニ派とシーア派の対立にもつながる
⇒穏健派はイスラエルと組む利益

穏健派内でも主導権争い

アラブ内部の紛争が増え、地域問題に取り組むことへの無力感
⇒自国の利益追求へ

アメリカ

重要な対外政策はNSC(国家安全保障会議)で決まるが、イスラエル問題だけは副大統領の専権事項(2009年1月)
⇒ユダヤマネーはもっとも大きな献金元
対立していても人と人の交流では意外に友好的だったりする。
紛争地域や対象を限定する力・方向性が働くため、経済発展が灰と化すリスクは低い。

中東の観光資源

中東では夜型の生活が一般的⇒サウジアラビアの商業都市ジッダのラッシュアワーのピークは午前0時
外国からの観光客数の伸び率は他の地域と比べても大きい(2007年は13.4%)

ドバイ

金とダイヤモンドが集まる街。歴史的遺産は全くないが、観光客数はエジプトに迫る。

イスラエル

韓国のキリスト教徒を呼び込む。戦略的に顧客獲得を目指す。

エジプト

キャメル・ダイビング(砂漠をラクダで越えて紅海でダイビング)
観光産業は裾野が広く雇用機会が増えるため、各国で力を入れている。

砂漠地帯の水資源

ドバイ

水需要を支えるのは淡水化した海水

サウジアラビア

首都リヤドのライフラインは淡水を送るパイプラインと大型車。また国土が広いため約230ヶ所でダムがある。

湾岸の淡水化には日本企業が参画(淡水化には大量の電気が必要⇒発電所と造水を併設)
湾岸産油国では水の供給能力を二倍に増やす必要⇒トータルの市場規模は700億ドル以上

水の争奪戦

聖地ヨルダン川もドブ川に。河川の上流の国が下流の国に比べて圧倒的優位

イスラエル

パレスチナ地域の地下水の92%をイスラエルで利用。現地では8%のみ利用
呪われた村(人口が常に一定の村)
⇒農業指導により人口増加、発展

中東の農業

乾燥地域では水分が飛んで中身が濃縮され独特の甘みを持つ(エジプト産イチゴが一箱千円に)
空気が乾燥していて害虫が少ないため農薬をほとんど必要としない⇒安全かつ高品質に
農業は観光業と異なり、テロ等が発生しても安定的な経済成長に寄与する。
最新技術で砂漠を農地に(エジプトの最南端トシュカ地域にて)
 イスラエル企業ネタフィムが開発した灌漑技術「ドリップ・イリゲーション」は植物の根元に一滴一滴水を染み込ませる、効率的に水を利用する技術。
 日本の技術・・・レーザーを使って測量して平らにする。

石油に代わる新エネルギー

UAEの首都アブダビ

新エネルギーを開発する「マスダール計画」

ドバイ

石炭などから水素を取り出して水素発電を計画中

アルジェリア

天然ガス産出で世界5指に入るが、太陽光発電に注力。原発は技術不足で困難。

サウジアラビア

「石油の王国」から「エネルギーの王国」へ。原発の導入。

 中東諸国の電力需要は毎年一割程度伸びている⇒商売物の石油・ガスにできるだけ手を付けない方向に
 2007年のOPECサミットでは三つの原則の一つで環境配慮を掲げる。

メイド・イン・イスラエル

イスラエル

テバ(世界一位のジェネリック医薬品企業)、イスカル(超硬工具世界二位)⇒国内市場が小さいため積極的に海外に進出。ダイヤモンドがイスラエルの輸出高の3分の1を占める。軍のハイテク技術でベンチャー起業。フランスが注目するイスラエルワインの潜在力

環境問題への対策

カタール・・・排出権取引の模索
サウジアラビア・・・政府が環境教育に注力
UAE・・・アブダビに究極の環境モデル都市(マスダールシティ)⇒ゼロ・カーボン都市
エコツアー・・・ヨルダン、エジプト
クウェート・・・中東諸国の中では先進的。人工干潟で浄化実験。
タンカーが原油を積み込むときに排ガスを石油に吸着させる技術・・・中東から500隻のタンカーが見学
 中東諸国は完全な車社会で国民一人あたりのCO2排出量は多い⇒ただし、変化も速い。

中東の教育

 労働人口の大幅な増加により失業率も増加⇒テロ組織の構成員は失業した若者が大部分
 カタール・・・エデュケーション・シティ(米国の有名大学のキャンパスが軒を並べ、中東各国から学生が集まる)
 エジプト・・・日本・エジプト科学技術大学を2010年に開校
 サウジアラビア・・・KAUST(アブドラ国王科学技術大学)を設立

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