【ヨーロッパ史における戦争】
マイケル ハワード (著), 奥村 房夫 (翻訳), 奥村 大作 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4122053188/
○この本を一言で表すと?
ヨーロッパ史の戦争をその属性で分類して述べた本
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・若干時系列が前後しながらも、戦争の属性が変遷して近現代に至っていくプロセスが書かれていてよかったです。
第1章 封建騎士の戦争
・槍や弓、投石器や大砲などの武器の変遷を中心に書かれていて、その武器の特性から身分制度が生まれていったことも含めて興味深い視点だなと思いました。
・弩より長弓の方が射程が長く、連発可能で長弓が弩に取って代わったというのは、弩の方が構造が複雑で高度な武器だと思っていたので意外でした。
第2章 傭兵の戦争
・傭兵が常備軍より好まれるのはスペシャリストしてより、維持コストが安いからだったというのは、現代日本で言うと正社員より季節労働者・派遣労働者の方がコストが安くつくと考えることと似たようなものかなと思いました。
・コスト重視の考え方は必要な戦争から権益のための戦争に意味づけがシフトしていったからかなと思いました。
第3章 商人の戦争
・交易が国家の関心の中心になった時代に、その交易を守る戦争、他国の交易を妨害する戦争などにシフトしていき、国家公認の私掠船が流行したというのは、当時の背景で利益を追求するとそうなっていくのだろうなと思いました。
第4章 専門家の戦争
・戦争を専門とする軍隊を常時確保できるようになってから、拠点構築などの戦術等も考案され、洗練されていく時代になっていったというのは、流れ的に当然ありそうだなと思いました。
ただの個人の集合体よりも専門の兵士が規律に従って戦術を実現する方が確かに強そうです。
第5章 革命の戦争
・フランス革命により国民戦争が可能になったことを示したナポレオンは周りの国家にとってかなりの脅威だったのだろうなと思いました。
フランス対それ以外、という構図になっても人口比では比べものにならないくらい少ないフランスが連合軍に匹敵するほどの兵力を運用でき、また戦術的にも部隊運用が完成していったのは、そういった戦略・戦術を使えなかったフランス以外の国家にとって脅威だっただろうなと思いました。
第6章 民族の戦争
・国民国家としてヨーロッパ各国が変わっていく中で民族対立が戦争の原因となっていったことは、現代においても状況は似たようなものだなと思いました。
第7章 技術者の戦争
・革新的な兵器が生まれていくに従って、戦争に関わる人口比などよりもその革新的な兵器を自分たちのものにできるかどうかが戦争の決定要因になっていくことは、現代においても同じような状況だと思いました。
ただ、テロ等の非対称戦争においては必ずしも技術が決定要因になっていないようにも思いました。
エピローグ―ヨーロッパ時代の終焉
・第二次世界大戦以後、ヨーロッパが世界の趨勢の中心にはならなくなったというのは、ある程度当たっているなと思いました。
○つっこみどころ
・ページ数・内容の割に税抜き価格で1,048円というのは見合わないなと思いました。
ほとんど旧版をそのまま載せており、翻訳コストもそれほどかかっていないように思います。
・最後の解説がかなり長く、著者のマイケル・ハワード氏の他の著者のことを知ることができたのはよかったですが、著者が同性愛者だったことなどまで書かれていて笑いました。