【地形と日本人 私たちはどこに暮らしてきたか】
金田 章裕 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532264383/
○この本を一言で表すと?
歴史地理学の空間と時間の観点で日本の景観について説明した本
○よかったところ、気になったところ
・地形が不動のものではなくて、自然や人の手による変遷を経て今の姿になっていること、どのようなプロセスで今の日本の地理になっているのか等が具体例とともに述べられていました。
第1章 歴史地理学は「空間と時間の学問」
・歴史は時間の学問で地理は空間の学問であるとしたカントの定義に対して、空間に対する時間の経過の違いなどから相互に関係しているという考え方から歴史地理学がその架け橋で原点であると述べられていました。
人間は時間と空間を同時に消費する、という考え方とその観点から調査データを集めて分析する時間地理学についても述べられていました。
・景観について、人が関与していない自然景観と人が関与している文化景観があり、それぞれ時間を経て現在の姿に至っていること、様々な要素同士が関連して変化していることについて述べられていました。
第2章 河川がつくった平野の地形
・河川がどのように地形を作っていくのか、様々なパターンや上流・下流の位置での違いなどについて述べられていました。
河川自体もその流れで削られ続けて流れが変わったりして自然のプロセスを経て今の姿になっていることなどについても述べられていました。
・河川沿いの立地は洪水等のリスクがあって人が住むには不向きだと考えられている時代が続き、築堤技術が進んで洪水等のリスクが低くなるとそれまでに利用されていない広大な土地としてスーパーマーケットや向上などの大規模施設が建てられるようになっていったそうです。
第3章 堤防を築くと水害が起こる
・9世紀には既に日本でも堤防が作られていたこと、受け流す形の霞堤から水を通さずに堤内と堤外を区分する連続堤があり、連続堤は破堤により大きな水害に繋がる可能性があること、破堤した場合の対応策も定められてきたことなどが述べられていました。
第4章 海辺・湖辺・山裾は動く
・海辺や湖辺は時代によって陸化したり沈水したりして変化していることが過去の地図との比較で分かっていることが琵琶湖や日本海の事例で説明されていました。
川の氾濫や地すべり等でも地形が変わってきたことについても説明されていました。
第5章 崖の効用、縁辺の利点
・崖や谷が城の城壁や堀の一部として利用されてきたこと、景勝地として愛でる目的で人が集まってきたことなどが述べられていました。
第6章 人がつくった土地
・干拓地、埋立地、造成等の地形の変化や池の造成や治水工事など、人の手によって作られてきた土地について説明されていました。
第7章 地名は変わりゆく
・地名が変化してきたものであること、名付け方のルールや園圃整備、区画整理等によっても変わってきたことなどが事例とともに説明されていました。
第8章 なぜそれはそこにあるのか?―立地と環境へのまなざし
・地理を生物学的環境、自然によるものだけでなく歴史的環境や社会的環境を含めて見る考え方など、地理学でも様々な考え方があることが述べられていました。
○つっこみどころ
・帯に「歴史地理学が教える大災害時代の必須知識!」と書かれていましたが、災害に関してこの本で得られる知見はハザードマップ等で得られる程度で、必須知識というほどその方向の説明はなかったように思いました。