【猫の世界史】
キャサリン・M・ロジャーズ (著), 渡辺 智 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4767824419/
○この本を一言で表すと?
イラスト多めの猫の位置づけの歴史の本
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・世界の様々な場所で猫がどういった扱いを受けていたか、どう見られていたかを豊富なイラストとともに説明されていました。
・近年に至るまで、猫に対する人間の対応は厳しく、犬等の分かりやすく人間の役に立つ動物に比べてひどい扱いを受けていた時代が長かったのだなと思いました。
1章 ヤマネコからイエネコへ
・ネコ科の動物の進化、猫の生態について最初に触れられていました。
・ネコ科の動物は食肉目でもかなり肉食に特化していて、獲物の脊髄を刺して仕留める能力を持ち、骨ごと砕くイヌ科とは異なること、狩りに強い身体構造を持っていることなどが書かれていました。
・古代エジプトやギリシャでは猫が有益かつ愛される動物として扱われていたようです。
・ゾロアスター教では猫は邪悪なものだが有益ではあるものとして、イスラム教では偽善や裏切りの象徴として、ヒンドゥー教では不浄な唾液を体につけるものとして嫌悪されていたそうです。
・中国、日本、タイなどでは猫が大事なものとして扱われていたそうです。
・西洋ではあまり経済的価値のない動物として、苛めの対象になっていて、イベントで人形に詰め込んで燃やしたり、祝日の前夜祭に燃やして幸運のお守りにしたりという扱いで、その理由としてキリスト教会が動物には自由意志がなく、社会の一員としてはみなさず、神に世の支配権を与えられた人間が動物をどう扱っても構わないという考えがあったそうです。
今では動物愛護は西洋社会の方が熱心に思えますが、宗教の教義が変われば極端に振れるのは他の事柄についても思い当たるなと思いました。
2章 災いをもたらす猫、幸運を呼ぶ猫
・猫が魔女信仰と結び付けられたり、邪悪な力を持つものとされたり、猫の振る舞いを見て気味が悪いと思う人が特に中世の西洋では多かったそうです。
同じ振る舞いを見ても、それをどう感じるかは時代背景や共通認識で大きく異なってくるのだなと思いました。
・19世紀のロマン主義になってからは猫が好意をもって扱われたり、小説でも人間に近いものとして扱われたりしたようです。
「長靴をはいた猫」を始めとして、猫が恩返しをする動物として様々な物語が生み出されていったのは、大きく流れが変わっているなと思いました。
3章 ペットとしての猫
・有名人の中でも猫愛好家だった人たちが取り上げられていました。
・猫がひどく扱われていた16、17世紀の時期でも、思想家のモンテーニュや政治家のリシュリュー枢機卿などは猫を愛した人として有名だそうです。
・19世紀以降は猫が美化されて描かれるようになり、まさに「猫可愛がり」され始めたそうです。
・犬の血統書が作られ始めてから猫の血統書も作られ始め、キャットショーなども開催され始め、様々な掛け合わせで自然ではありえない姿の猫が生み出されるようになったそうです。
4章 女性は猫、あるいは猫は女性
・昔から男性を犬、女性を猫として捉えられていて、英語では雌犬(bitch)、雄猫(tomcat)と別の単語があるほどだそうです。
・絵画でも猫を一緒に描くことで女性らしさを強調したりされていたようです。猫を通して女性のあり方を描いたり、女性を批判したりもされていたようです。
5章 猫には、猫なりの権利がある
・19世紀以降は猫を人間より上の面があるという捉え方や、猫を羨ましがる人、人間と猫を平等に見る考えを持つ人なども現れたそうです。
6章 矛盾こそ魅力
・猫は人間と生物として似ているところがあるため実験動物として使われていたそうですが、猫がペットとして身近になったことで動物愛護の観点でかなり減少傾向にあるそうです。
・アメリカでは20世紀までは猫のペットとしての総数は犬を下回っていたものの、2003年には犬を上回るほどペットとして不動の位置にあるそうです。
・映画では猫が当初から登場して、登場人物を強調する役割を果たしていたそうです。
・人間の身近にいながら遠い存在である猫が、だからこそ人間にとって魅力のあるもの、という著者の意見で締められていました。
○つっこみどころ
・原題が「CAT」である本を「猫の世界史」という邦題にしたようですが、世界史と関係ないとは言えないもののあまり繋がりはなく、あくまで猫自体が人間にどう扱われてきたかの歴史なので「猫の歴史」「猫と人」くらいの邦題の方が内容どおりではと思いました。
このタイトルだから購入したので、狙い通りと言えば狙い通りかもしれませんが。