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【大停滞】レポート

【大停滞】
タイラー・コーエン (著), 若田部 昌澄 (その他), 池村 千秋 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4757122802/

○この本をひと言でまとめると。

 今の大停滞の原因をシンプルに示し、ざっくりとした解決策を示した本

○よかった点・考えた点

・過去の産業革命等と異なり、インターネット等によるイノベーションが雇用創出効果が小さいという話は、この本以降の本でもよく出てくる話で、この本が参考文献になっていることも多く、重要な考え方が示されているなと思いました。

日本語版への序文

・日本を大停滞の先輩としてうまく対応していることに注目しているという視点は面白いなと思いました。
高齢化社会の先輩でもあり、後追いで来た日本が色々な面(それもあまりよくない面)で最先端になってマネができなくなって政治が混乱していますが、それでも破綻していないというのはすごいことなのかなと思いました。

ハードカバー版序文

・まず電子書籍だけで出版して、話題になって後から紙の書籍でも出版したというのは面白いと思いました。
あと、「キンドルにサイン」が冗談じゃなくて電子サインでできる仕組みは面白いアイデアだなと思いました。若干ありがたみがないなとは思いますが。

第1章  「容易に収穫できる果実」は食べつくされた

・経済成長の要因「容易に収穫できる果実」を「無償の土地」「イノベーション」「未教育の賢い子どもたち」として、またイノベーションの主な対象が公共財から私的財(公共性の低い財)に移行したことが現在の大停滞に繋がっているという結論はなかなか深いなと思いました。

第2章  経済の生産性はみかけほど向上していない

・実際の生産性と見かけの生産性のギャップの要因として政府部門、医療部門、教育部門を挙げ、これらは価値を数値化することが難しいことから生み出した価値ではなく支出の額でGDP等に表されているというのはなるほどと思いました。

第3章  インターネットはなにを変えたのか?

・インターネットは確かに大きなイノベーションであるが、雇用創出効果が小さく、収益を生みだしにくいと書かれていますが、確かにそうだと思いました。
私自身も最初はインターネットを活用したビジネスを少数精鋭のメンバーで起業しようと考えていて、いろいろアイデアを考えてみても収益を得るところを考えるのが一番大変だなと感じました。

第5章  深刻な金融危機を招いた「真犯人」

・金融危機等で過ちを犯した原因を「私たちは、自分たちを実際以上に豊かだと誤解していた」ことだとしているのは面白いなと思いました。
過剰な自信から過剰な消費・投資に向かい、それが限界となった破綻したというのはイメージしやすいなと思います。
この心理や行動に焦点を当てた視点は行動経済学の視点にあたるのでしょうか。

○つっこみどころ

・何度も出てくるエコノミストのマイケル・マンデルをサンデルの誤字かと思っていました。

・ポール・クルーグマン、ヌリエル・ルービニ、ジェフリー・サックス等の錚々たるメンバーが重要な視点と歴史的認識を欠いているとしているのは大胆だなと思いました。(P.71,72,88,89)

・大停滞の解決策が「科学者の社会的地位を高めよ」というのは、「容易に収穫できる果実」を新たに生み出すためのイノベーションに必要だからとはいえ、ざっくりし過ぎな結論だと思いました。( 第6章  出口はどこにあるのか? )

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